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ミホの機体

「シュウ君!右側のやつを頼む!」

ユウキの機体が、走っていくのが見える。

「無茶するなぁ」

僕は、流れるように走っていくユウキの機体をみながら思わず呟く。


町の東側。

激戦区となっている場所は、すでに町の原型をとどめていない。

自動機構兵器に踏みつぶされ。

魔力弾に蹂躙されたその場所は廃墟と化している。


「相手は、ダルカン帝国の部隊」

ミホが小さく情報を伝えてくれる。


「あの後、本格的に侵攻して来たのか」

僕の呟きに、スーツ少ししめる事で返事を返してくるミホ。


「大丈夫?」

僕の言葉に、ミホは、小さく「うん」

と返してくる。


右側の山を僕の機体のライフルが打ち抜き。

敵の一部が一時的に避難していくのが分かる。


片膝をつき。

ライフルを構える僕の自動機構兵器は、完全に砲台と化していた。


「左側」

「うん」

魔力感知で察知した敵に向かってライフルの照準が()()()()


ミホの魔力は、僕と、自動機構兵器に流れている。

つまり。

実質、ミホが僕を操縦して、さらに、自動機構兵器を操縦するという、不思議な方法を取っているのだ。

ミホの全魔力を受け取りながら、少しだけ足りない分の魔力だけを補充するだけの僕。


左側からユウキの機体に近づいて来ていた、接近戦用の自動機構兵器は、僕の一撃で打ち抜かれ。

その場に倒れる。


「死んだ?」

ミホが聞いて来る。

「大丈夫」

ミホの情報の処理能力は、最低まで落ちている。

まぁ、僕と自動機構兵器の二つを操っているんだから、そりゃそうだけど。


あと、この状態での操縦に問題は一つ。

「シュウクン。アッタカイ」

「スキ。スキ」

「ア ヘンナコ ニ ミラレタラ ヤダナ」

「ヒト コロシタク ナイヨ」

「ワカラナク ナッタ ドウシヨ」

などと、目まぐるしく、ミホの感情と考えている事が魔力と一緒に流れ込んで来る事。


あったかい気持ちにはなるのだが。

感情をまるごとぶつけてくるから、時々僕自身が処理しきれなくなる。

ミホの気持ちが嬉しすぎて、気持ちが溢れて来る。

後で、オオカミになるのは、確定しそうだった。



「2年間、行方不明の間に、腕が落ちたのか?」

ユウキはそんな事を呟きながら、自動機構兵器を動かしていた。


右の敵をお願いしたのに、右側は牽制にもならないような場所に着弾。

かろうじて相手は逃げ出したが、その後、左側からすぐに敵が来るという、危険な場面もあった。


そっちは、なんとか頭を打ち抜いてくれたから、事なきを得たのだが。


ユウキが向かっているのは、明らかに敵の大将機と思われる灰色の自動機構兵器。

肩に、不思議なハンマーのマークがついている。


「あれが、部隊長機」

アカリが、呟く。

「一気にいくぞ」

「うん」

ユウキは、勢いそのままに、部隊長機に突っ込んで行く。


「ユウキが突っ込みすぎだ」

「分ってる!」

カイダと、ケイトの二人も焦っていた。


第2部隊は、2年で改変されて、遊撃隊。もしくは、小隊として編成されてしまった。

部隊の編制は、ユウキの機体と、シュウの機体。そして、自分の機体だけ。


3機あれば、小隊として使われてしまうあたり、今の戦力不足を露骨に示していた。

今まで第二部隊として編制されていた機体はすべて中央が吸い上げてしまい、今はバルカン帝国への反撃用の部隊として、編制されている。


いつ出発するのかは分からないが、そろそろだろうとケイトは、予測していた。


一機。

接近して来た緑の機体を切り捨てて、ユウキの機体へと走って行く。カイダ。

コクピットを切り抜いたから、相手は死んだだろう。


戦争だ。相手を無力化する事が最優先である。

「急がないと、ユウキが危ない」

ケイトに言われるまでもなく、急いで追いかけて行くカイダだった。



「なんで、砲台になってんだよ!」

ユウキは、相手の隊長機と切り結び。


右手を切り落とされながら叫ぶ。

口から出るのは、シュウへの愚痴ばかり。


クラス対抗の時は、あれほど素早く動いていたというのに。

今は全く動かず、砲台となっている白い機体にイライラする。


「ユウキ!左!」

アカリの声に、慌ててモニターを見る。

レバーを思いっきり引き、後ろに下がる。

相手の魔力剣が目の前を通り過ぎ。

ほっとした瞬間。


目の前の隊長機の頭が吹き飛んでいた。

「はぁ?」

理解が出来ず、思わず声が出るユウキ。



「ヒット!」

嬉しそうな声でミホが叫ぶ。

「無茶するのは、ミホもだろ?」

僕は、小さく呟くしかない。


ユウキが下がった一瞬。

ほんの少しだけ開いたスペースに魔力弾を撃ち込むとか、ミホの計算能力なら出来るけど、今は僕と自動機構兵器の二つを動かしている状態で、あまりリソースは無いはずなのに。


その証拠として、ミホの焦りの心の声はしっかり聞こえていたりするし。

「アタッテ ヨカッター」

「アカリ ニ オコラレタラ ヤダ」

「シュウ クン ニ オコラレル ノハ モット ヤダ」


その心の声にため息をつきながら、僕は「無茶はしちゃダメ」とミホに声をかけるのだった。


「好きにしろ」

投降した部隊長に、銃を突き付ける。ユウキ。


「何で動かなかった!」

その横で、カイダさんに詰め寄られていた僕は小さい声で反論する。


「昔、動かなかった機体ですよ。動けるわけないじゃないですか。また壊れたら嫌だし」

その反論に、僕はカイダさんに一発殴られていた。


「仲間が死ぬかも知れないんだ!キチンと動かせるようになれ!根性でやれ!」

無茶苦茶を言うカイダさん。

昔はこんな性格じゃなかったのに。

もっと、もっと緩かったのに。


精神論者のような軍人になってしまっているカイダさん。


こんな所でも、2年という長い間、地獄を見て来たのだろう。その証拠を突き付けられて、僕は心が痛むのだった。

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