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師匠

「違う」

僕は、目の前で剣を振るのだが、その手をあっさり叩かれる。


戦闘力9の僕だけど。

魔力全開中の僕の速度をあっさり超えて来る目の前の男性は、僕を助けてくれた人だ。

「痛いよ、、アラキさん」

小さく呟くが。

ぐりぐりと、拳で頭を撫でられる。

はっきりって痛い。

「何度も言っているだろう。魔力を全開にするだけじゃ、壊れた蛇口。駄々洩れだ。細く、一気に放出する。拡散させたんじゃ、霧にもならん。収束させ、その場に停滞させる。この二つが魔力の基本的な使い方だ」


アラキさんは、僕を助けてくれた後。

ずっとこんな感じで僕にいろいろと教えてくれている。


正直、凄い人なんだろうと思う。

だって、僕が魔力全開で半日手合わせしても、まったく一回も当てる事が出来ないのだから。

僕が持っているのは、もらった自動機構兵器(オートモーター)用のブレードじゃなくて、アラキさんが持っていた練習用のブレードだ。


それを使えるようになる練習から始めたのだが。

思い出したくもないくらい、厳しかった。

「魔力を全開にしてどうする。魔力が1万あろうが、1000だろうが、紙を燃やすのに溶鉱炉を持って来る馬鹿はおらん!」

 そう言って、叩かれた。

「魔力を全開にするんじゃない!魔力は必要なだけ、必要な量を放出する!それが本来の使い方だ!」

怒鳴られる。

「魔力が多いからといって、力圧ししてどうする!自動機構兵器(オートモーター)も、その武器もしょせんはでかい人形と、そのおもちゃの飾りだ!力いっぱい引っ張れば壊れるし、詰め込みすぎても壊れるだけだぞ!」

投げ飛ばされる。


だけど、学校でも。

軍でも教えてくれなかった事をアラキさんは教えてくれた。

僕にとっては本当にありがたい事だった。


「魔力は、ナノマシンを活性化させるだけじゃない。凶悪な環境でも生き残るために、生きるために必要な力だ」

そう言って、魔力を使い、ナノマシンを自由に扱う方法を教えてもらった。

自分で体温を調節し、毒を体外に出す方法。傷を回復させたり、病気を早く治す方法。

自分で、自分の体内の傷を治す方法。


「魔力は、万能の力だ。だが、使い方を知らなければ、足があるのに、歩き方すら知らない子供と同じだ。飛ぶことも走る事も出来ん」

アラキさんはそう言っていた。


そんなアラキさんの特訓の成果か。

僕の魔力は今、計測器でも、800としか表示されない。

戦闘力は相変わらず、9のままだ。いや、正確には、9!だった。


「9の階乗とか、化け物か」

アラキさんが、その検査結果にため息すら忘れて呆れた声を上げていたのが忘れられない。


アラキさんが、軍の研究室で使っていた測定器よりはるかに高性能の測定器を持っていた事には驚いたけど。


とにかく、僕はアラキさんに、自分の魔力を押さえる方法と、魔力の使い方を教えてもらっていた。


それだけじゃないんだけどね。


「いやぁぁぁ。お願い、見逃して、シミさん!」

ちょっと思い出したくない事を思い出していると、そんな叫び声が聞こえて来る。


「ダメ。あなたがだらしないから、彼氏は死にかけたの。その事を自覚しなさい」

そんな声が聞こえて来る。


ふと見ると、ミホが崩されて糸状にされて、シミさんの周りをまわっている。

「これくらいの情報量で、根を上げないの」

「ムリ、無理、むり!頭が痛い!処理できない!」


ミホの声が必死だ。

「さらに行くわよ」

そんな事はお構いなしに、目を閉じるシミさん。

「いやぁぁぁぁ!死ぬぅぅぅぅぅうl!」

糸状のままで、叫ぶミホ。

僕たちは、二人の先生に、とことんまで鍛えられるのだった。





「死ぬかと思った。ううん。何回も死んじゃった」

部屋に帰るなり、ミホは僕の胸に顔をうずめる。

「何をしてたの?」

僕が聞いて見ると。

「無茶苦茶よ。敵との戦場の真っただ中にいるのに、一秒ごとに天気が変わる気象状態で、生き残れっていうんだもの」

その後で、小さく「シュウ君を」

と呟いたが分かる。

つまり、今僕たちがいるこの辺りの環境の中で、戦闘をしながら生き乗るシュミレーションをさせられていたみたいだ。

完全に震えているミホを僕はそっと抱きしめて上げる。

僕の中に入ってくるミホの感情は、恐怖。だけだった。




「相変わらず、いい天気ね」

さっきまで晴れていたのに、突然降り出した雨と、雷を見ながら笑う、白髪の女性。

さっきまでミホに大量の、頭が爆発するほどのデータを送り込んでいたシミだ。


「あの子はどうだ?」

アラキが声をかけると。

「いいわね。素質は十分。普通なら1万回は死ぬデータなのに、5000回で済んでたわ」

「良く気が狂わないもんだ」

アラキは小さくため息を吐く。

「あら。それを言ったら、あなたもでしょ?軍事国家ユダでも、魔力統制学なんて、大学でまだ研究中の話だったはずだけど?魔力の統制は精神に凄まじい負担をかける。気が狂うわよ」


二人は顔を見合わせ。

二人して笑う。

「お互いに」

「子供に教える事じゃないわよね」

二人はひとしきり、小さく笑うと。


「しかし、魔力10万と、魔力1万の子。ね」

「ほっとくわけには行かないだろう。誰もあの子たちを教える事は出来ない」

アラキは自分のグラスを見つめる。

「神機。乗るのなら、魔力暴走だけは止めなければ、世界が終わる」

「乗らないと言う、選択肢はないわよね」

「必要と感じれば、神機は勝手に支配者を乗せる。そう。勝手にな」

「どっちが支配者なのかしら」

その言葉に、笑うしかないアラキ。


子供達二人の部屋から、笑い声が聞こえて来る。

「あの二人は、【本物】だと思うわよ」

「だろうな。久しぶりに、【本物】に会った」


「明日あたり、避妊方法を教えとくべきかしら」

聞いては行けない声が聞こえ始めたのを感じて、真剣に考えるシミだった。


どちらかといえば、大人向けのガチの戦闘物なので、夜20時の更新に変えてみようと思います。

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