打ち上げ。
「だから、反対なのです」
「最高位の生徒と、Aクラスではあるが、中くらいの生徒との契約ですか」
「一年ですよ!やはり、あの子たちが原因でしょう!」
「いちゃいちゃして、目障りです」
「先生、もしかして、私怨が入ってませんか?」
そんな会議があったかどうか。
とりあえず、ホームルームが突然開かれる事になった。
「学生の間は、妊娠などの騒動は起こさないで欲しい!避妊用の道具を配るので、契約してしまった者は絶対に使う事!」
学校で、倫理の授業と一緒に、まさか性教育まで受ける事になるとは思わなかった。
「これって、ぼくたちのせい、、だよね。どうみても」
ユウキは、ため息を吐きながら、僕の机に寄りかかっている。
その横には、キラキラした顔で、アカリがユウキを見ている。
今日も今日で、絶賛溶けてる僕は、小さくうなづくだけだ。
ミホが起こすのが早すぎるんだよ。
「あの時間に起こさないと、すぐ二度寝するんだから。がまんしてる方なの」
ミホはそんな事を言っていたけど。
「おー。今日は、夫婦喧嘩はないのか?」
クラスメイトの一人が話しかけて来る。
そっちを見ると、にやにやした顔で、ミホを見ていた。
「シュウ君は、ミホ君に、もっと感謝した方がいいとおもうんだけどね」
ユウキの言葉に、心持ち胸を張るミホ。
「ユウキ。この前のクラス大会の優勝を祝って、みんなで騒がないかって話が出てるんだけど」
クラスメイトは、ユウキを見て、笑う。
「ああ。いいね。やろうか」
笑って返すユウキ。
ちらっと、ユウキがこっちを見る。
クラス大会以降、さらにユウキ達が一緒にいるようになり、最近では、二人と一緒に帰ったりする事が増えていて。
そのために、俺達二人の懐具合がバレてしまっていたのだ。
ミホが悪いんだよ。
ちょっと高めのステーキなんか、学校帰りに買うから。
しかも、自分のカードで。
「だって、シュウ君が一番頑張ったのに、何もないんじゃ、私が嫌だもの」
ミホは、小さい声で反論する。
そんな事を言われてしまえば、嬉しさもあり、何も言えなくなる。
二人で、顔を合わせてぼそぼそ言っているだけなのに。
「本当に、君たちは仲がいいね」
ユウキに、笑われてしまうのだった。
学校帰り。
4人で歩いていると、後ろから誰か近づいてくるのが分かる。
気配を完全に消している。
敵かと思って制服の裾を広げる。
男が僕の後ろに付いて。
僕が、腰の剣に手をかけた時。
「准尉。報告があります。一時停戦中のバルカン帝国から侵入あり。准尉の安全は最優先となります。あまり羽目を外されないようにとの事です」
男はそれだけすれ違い様に言うと、立ち去って行く。
僕が通り過ぎた男を目で追いかけようとするも、もう建物のどこかに隠れたのか。
分からなくなっていた。
「ねぇ」
ミオが僕の手を握る。
「うん。軍の諜報部だね」
僕はミホに小さい声で返す。
「どうする?」
「行かない方がいいのかな」
僕たちは、どんどん歩いて行く、ユウキとアカリの後ろ姿を見ながら、顔を見合わせていた。
「おらおら~!」
「炭酸一気いけぇ!」
いろいろ悩んだけど。結局、僕たちも打ち上げに参加していた。
貸し切りにしてもらった小さい飲食店だ。
皆から、1000くらい回収しているらしいけど。
僕と、ミホは、こっそりと多めに出している。
だって、これが原因で、クラスから浮いたりしたらヤダし。
そんな事を思っていると。
「ねぇ、シュウ君。ミホとはどこまでいったの?」
なんて、女子のクラスメイトから声をかけられてしまう。
みれば、ミホは、他の女子生徒に囲まれて、尋問されていた。
「お酒は入ってないよね」
歌っている人もいるし。
もうめちゃくちゃだ。
「クラス大会で、すっごくカッコいい姿を見たって、お姉ちゃんが言ってたんだ。本当?」
からまれている女子生徒との距離がさらに近くなる。
「い、いや、見間違いじゃない?ほら、僕、最低辺だし」
なんとか口から出たのはそんな言葉だけ。
けど、それ以上、近づかないで欲しい。
離れていても分かる。
ミホの機嫌がすこぶる悪い。
「えー。本当に?ミホだけじゃ物足りなくなったら、私でも付き合うよ?」
本当に、お酒入ってないの?
その子と、僕の体がくっつきそうなほど近づいた時。
ガタッ!とミホが立ち上がる。
びっくりしている皆をよそに、なんと僕の膝の上に座ってしまう。
クラスメイト全員から、黄色い声が飛び交う。
「ごめんごめん。ミホ。怒らないでよ」
そんな事を言いながら謝りだす、クラスメイト。
しかしミホはむすっとしたまま、目の前のお菓子をつまみ始める。
僕の膝の上で。
あー。かなり機嫌悪い。
仕方なく、ミホの体に手を回して、支えてやる。
何度かミホが僕の口にお菓子を入れる。
「くそ。最底辺のくせに」
「あーんとか、この状況でやる事じゃねぇ」
「なんか、怒ってるミホ。可愛い」
「私も彼氏欲しくなるー!」
「俺と付き合うか?」
「冗談!」
いろいろな会話が一気に弾み出す。
恨みも、嫉妬も、微笑みも、全部まざった会話を聞きながら、ミホに手を回して支えてやると少しだけ彼女の機嫌はよくなるのだった。
「派手にやりましたね」
クラス大会の記録を知ったケイトさんは、研究所の中で頭を抱える。
「あの子は、自分が目立つと危ない人間だと言う自覚がないのかしら」
報告書と題されたレポートを、空中に浮かんだモニターで見ながらため息を吐く。
がちゃりと部屋に入ってきた金髪の男性は、そんなケイトさんを見ると笑う。
「欲求不満っすか?」
その一言に、近くに置いてあった、コップが飛んでいったのは言うまでも無かった。




