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のんびりな日常


やだなぁ。

そんな事を思いながら、僕はえっちらおっちらと、グランドを走っていた。

他の同級生は、遥か先を走っている。


そう。

僕、シュウは一番ドベを今、えっちらおっちらと走っているのだ。

学校の授業の一つ。

体力作りのためという名目でひたすらトラックを走らされる持久走。

神血の人にとっては、まったく意味の無い授業なのだが。

差別は良くないとかいう、訳の分からない理由で、全員参加となっている。


そんな中。周回遅れになっている僕は半分あきらめていた。もう、最高戦闘力を持つ二人はゴールしていたりする。


隣で走っているのは、まったく息切れすらしていないミホ。

「先に行っていいのに」

僕はそう言うのだが。

「好きで隣にいるんだから、いいでしょ」

そんな事を言われてしまっては、何も言い返せないじゃないか。


「戦闘力9~! がんばれ~」

そんな応援が聞こえて来る。


隣で、ミホが

「魔力燃焼すればいいのに」

なんて呟いていたりもする。


魔力燃焼したりするのも面倒だから、やりたいとも思わない。


だから、魔力のブーストなしで、ただひたすらえっちらおっちらと走っている。

身長も、150しかない僕じゃぁ、そんなに早くは走れないし、本来の身体能力は全く高くない。


結局、最下位で僕はゴールしたのだった。



「本当に身体能力は低いよね」

机に伏せてぐったりしている僕に、追い打ちをかけてくるユウキ。


「いや、本気を出してないだけだから」

僕の小さなプライドで、そう言い返してみるも、虚しさすら感じてしまう。


笑ってそんな僕を見ている彼。

その反対側の机で、ミホはなぜかニコニコと笑っていた。




ぐったりしている彼を見て、思わず笑みがこぼれてしまう。

昨日も、ケイトさんに昔の彼の映像を見せてもらった。


6歳くらいのシュウ君が、素直に魔力を全開にさせて。

持っていた武器が爆発し。

とんでもない被害が出ている映像。


自動機構兵器が大量に置いてある場所を駆け回り、おいかけっこをしている映像。

追いかけているのは、現役B級支配者のはずなのに、シュウ君にまったく追いつく事が出来ていなかった。


最後は、全員が地面に倒れ込んで。

シュウ君だけが笑っていた。


その映像はどれもとんでもない事だ。

最後は、20人の兵士対、シュウ君が追いかけっこをして、逃げ切っていたりした。

そりゃ、自動機構兵器の肩まで飛び上がってしまったら、誰も追いつけないよね。

だから、シュウ君が、今言っている、

「本気を出していないだけだから」

が負け惜しみじゃなくて、本気なのは知っている。


けど、言えない。

軍規に引っかかるから、絶対に言えないけど。

声を大きくして言いたくなる。

私の相方。

私の彼氏は、こんなに凄い人なんだと。


ケイトさんは、その映像を見ながら、ため息しか出さない。

その理由は。

「これを見たらね、私たちが一生懸命訓練しているのが、馬鹿らしくなるのよ」

ただ、その一言に尽きるらしかった。




「で、この前のテスト、どうだったんだ?」

ユウキが笑いながら話しかけて来る。

「んー。まあまあかな」

適当に返事をしておく僕。


ユウキは、ふっと、ミホに視線を移すと。

「すごかったよ。ほぼ全教科、80点以上。なんでってくらい答えが合ってた」

「マジか。最後の、(オートモーターの基本原理構造の中で、一番重要な部分は何か?)てのも分かったのか?」

ユウキがびっくりしているが。

「あれ、ひっかけだよ。駆動魔力石って言いたいけど、答えは、ローダーだから。支配者も、機械の一部って、考え方。僕は嫌いだけどね」

その答えに、ただひたすらびっくりしているユウキ。


ミホまでびっくりしていたが。

「駆動魔力石がなくなったら、コンタクターと、ローダーの魔力だけで、動かせるんだよ。僕らなら」

小さく呟いた僕のその声を聞きとったミホは、ただただ唖然としていた。



「はあ。また、適当に、間違えたでしょ」

回答用紙を持ったケイトさんはため息を吐く。

いつも通り連れて来られた研究所で僕は怒られていた。


「こんな初歩の初歩で、あなたが、間違える訳ないでしょ?何歳から軍の機密中の機密である、オートモーターの構造から、この国と、兵器の歴史、魔力装填式と魔力循環式を習ってると思ってるの?」


うん。

両親は僕が3歳くらいの時に死んでしまっているから、多分、5歳くらいから。

でも、それって、大学でも教えてくれないくらい、ヤバイ知識なんだけど。

「で、ミホさん。頑張ったのはわかるけど、70点平均は、シュウの相方としては、落第点です。居残り決定ね」


その言葉を聞いて、本当の意味で泣きそうな顔をしてこっちを見るミホ。

大丈夫。

付き合うから。


「家に帰ったら、二人で、いちゃいちゃしてきちんと勉強ができなくなる可能性もあるから、ここに毎日来なさい」

そう言って渡されたパンフレットに書かれていたのは、軍部が経営している予備校。


結局、僕も予備校に行き。ミホの勉強の手伝いをする羽目になったのだった。

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