プロローグ
ギリギリなのかな?アウトなのかな?18禁扱いになったらごめんなさい。 運営さんに任せます。
学園ものです。日常ばかりになると思います。
「この子が選ばれているなんて、どうして・・・」
「400年出ていなかったんだぞ。どうして、俺達の子供なんだ」
「どうにもならないの?」
さめざめと泣く女性。
「生まれてしまった以上、選ばれし者は、しかるべき契約をさせないと、生きる事すら出来ない。いや。世界を破壊させてしまう可能性すらある」
「どうして、、、私たちの子供なの・・・」
「戦争を終わらせろ。。という事なのか」
「でも、私たちの子供じゃないくてもいいじゃない」
「そうだな。今は、この子が幸せに生きて行ける事を願うだけだ」
泣き顔が見える。
「どうしてよ・・・」
女性は、いや、お母さんは、いつまでも泣いていた。
「また、あの夢か」
ふと僕は目を覚ました。
時々、両親の夢を見るけど、決まって何か二人してぼそぼそと話をした後、お母さんが泣いているところで目がさめてしまう。
「おはよう。お父さん。お母さん」
体を起こした後、ベッドの横に置いてある、二人の写真に向かって、朝の挨拶をする。
ふたりは軍の人間だった。というか、戦争が続いているこの国で軍関係者じゃない人のほうが少ないのだけど。
で、両親は、すごく立派な人達だったらしい。
その功績は凄まじいものだったらしい。軍がこの家を用意してくれるほどに。
家賃も、光熱費も軍の物だから、タダだし、なにより、朝と夕にお弁当まで届く。
家の中で不具合があれば、軍に言えばすぐに直してくれる。
まったく不便さを感じないくらい一人暮らしを満喫できていた。
「んー--」
僕は大きく伸びをして、時計を見る。
時計は、10時をとうに過ぎていた。
「うん。遅刻だね」
いつも通り。
今更焦ってもどうにもならない。
僕は、顔を洗うために洗面台に行く。
洗面台に飾ってあるのは、お父さんが乗っていたという、機械人形の模型。
子供用のおもちゃなんだけど、いつか、君も乗るんだと言われて軍の幹部が置いていった物だ。
自動機構兵器と呼ばれている、2足歩行のロボットの模型だ。
自動機構兵器は、軍の中でもエリートしか乗れない。
しかも、ランク付けされており、Aランクから、Eランクまである。
父さんの自動機構兵器は、Aランクだ。
自動機構兵器は二人で操縦する。パイロットを、支配者、そしてそのサポートをする人間は接続者と呼ばれる。
もちろん、お父さんは、模型のAランク自動機構兵器の支配者で、お母さんは、接続者だった。
「っつ」
ぼーっとそんな事を考えていたからか。
気が付いたら、右手の指先を切っていた。血が滲む。
何処かに当たったみたいだけど。
しかしみるみるうちに、傷がふさがって行くのが見えた。
僕の中には、生体ナノマシンが血液に乗って移動している。
その生態ナノマシンが一瞬で傷を回復させてくれる。
だから、多少の怪我も気にせずに暮らしていけるのだ。
病気までは治してはくれないけど、怪我は傷一つ残る事は無い。
ひとしきり顔を洗った後。
鏡の中の自分を見つめる。
黒髪と、黒目で、特にカッコいいわけでもない顔がぼーっとした目でこっちを見つめていた。
「学校、行きたくないなぁ。けど、サボり過ぎたら、軍から怒られるだろうしなぁ。この家を没収されても困るしなぁ。仕方ないかなぁ。はぁ。行ってきます」
制服を着て、カバンを掴み、家を出る。
平屋ではあるが、それなりに広い一軒家。
表札には、守機修とだけ記載されていた。
「えー、これは、もう知っているだろうが、この世界には2種類の人種がいる。神血と呼ばれる人間と、生血と呼ばれる人間だ。神血と呼ばれる人間は、生体ナノマシンが9割以上のため、体を自由に作る事が出来る。生体ナノマシンで全て作られている以上、身長も、容姿も思いのままだが、両親から受け継いだ、遺伝的な要素が消える事はなく、結局は両親の特徴を受け継いだ生物学的な姿に落ち着いてしまう。だから、神血が突然、一万年の美少女、美青年になる事は無い。あと、神血の人間は、整形すら意味が無いから、間違えても手術をしようなどと思わない事だ。
まぁ、それはさておき、神血の中でも特に優秀な者は、接続者となる事が出来るわけだが、前に教えた通り、神血は姿を変える事が出来る。その特徴を使い、支配者のスーツとなるわけだが、スーツとなる前に、接続者は最初に決めた支配者の永遠の配偶者となる事が多い。ナゼだか分かるか?」
やばっ。
休み時間に入ろうと思っていたのだが、今日は数時間ぶっ通しの生理倫理の授業だった。
「接続者は、スーツ化している間、支配者にずっと密着する事になる。生体ナノマシンといえ、体温も体の臭いもそのまま残っているわけだ。半日以上ずっと裸で抱き合っていると考えてもらえばいい」
先生、その発言は、少しひっかかると思うが。
小さい頃にも聞いたが、何人かの女の子は赤くなってたぞ。
こっそりと、先生の目を盗んで、教室の中に入る。
「生体ナノマシンのおかげで、人の体と、スーツという二つの姿になれるのが、接続者の特殊能力だ。そして、神血は接続者となれる事を切望される。
だが、接続者になれなくても、普通に生活する事も出来るぞ。子供を作る事も、産む事も出来る。また、病気をする事もなく、手足を無くしても、いずれ生えて来るという、不死のような一面も持ち合わせている」
血を流す事が無い神血の者と、生血の者が子供を作った場合、二つの血のどちらが生まれるのか、確率は半分だ。 半分は、血が流れない神血として。半分は血が流れる生血として生まれる。もちろん、神血同士、生血同士でも、子供は作れるが、神血の両親から、生血が生まれる事はない」
そっと椅子に座る。 つもりだった。
「で、シュウ、言い訳は考えて来たのか?」
突然声をかけられ、椅子に座る直前で、止まってしまう。
「今日の授業は、遅刻するなと言ったはずだが?軍のコネで、このクラスに入れた戦闘力最低の人間でも、今日の授業は、絶対に知っておいて貰いたかったのだがな。このクラスの優秀な他の生徒と付き合ったり、ありえんとは思うが、接続者として結婚されてしまっては、国に対する大逆罪になるのだからな」
先生に見つけられていたらしい。
クスクスと他の生徒から笑われる。
僕がひそかに好意を持っている、セミロングの黒髪が綺麗な少女。ミホも笑っていた。
綺麗な黒髪で、目はくりっとしていて、鼻も口も小さい可愛いという感じの子だ。
胸は、あまり大きくないのだが。
彼女は、神血と呼ばれる、生体ナノマシンが9割を超えている女の子だ。
僕が恥ずかしさのあまり小さくなっていると。
「戦闘力9だものな」
どこからか、そんな声も聞こえて来る。
その声に少しへこんでしまう。
12歳になると、体の能力や、才能を調べるため身体能力を調べる機械にかけられるのだが。
僕の能力は9!だったのだ。
小さい頃から力は強くなかったし、走るのも早くはなかったけど、そんなに低いとは思わなかった。
その後、いろいろあって、僕の戦闘力の結果は間違いだった事は判明してはいるのだが。
これは、とある機関と、僕との間だけに交わされた機密となってしまい、誰にも言えない事になっている。
「蟻にも勝てないんじゃね」
とその時には皆に笑われたのに。
軍の指示で勝手に、進学時にA級の特級クラスを決定されてしまっていた。
軍のコネで押し込まれた、お荷物。
クラス全員とは言わないが、ほとんどの同級生と、先生にそんな風に思われてしまったのだった。
そう僕は、A級の自動機構兵器を扱う支配者と、接続者を育成するクラスに放り込まれてしまったのだ。
戦闘力の測定が間違っていた事もだけど、もっと秘密にしなければいけないのは、アレの事だった。 皆には言えるはずもない。
自分専用の自動機構兵器をすでに持っているなんて。
だからと言って、親の自動機構兵器を受け継いだなどそんな事でもない。
俺の親が乗っていた自動機構兵器は、乗れる人がいないため、軍の一級倉庫に保管されているらしい。
でも、何故か、僕は物心がついた時から自分専用の自動機構兵器を持っていたのだ。
両親が契約したと言っていたが、本来、契約までして乗る、自動機構兵器なんて聞いた事もない。
そして、とある秘密の組織が言うには、僕の持っている自動機構兵器はとんでもない性能の可能性があると言うのだ。
らしいと言うのは、自分の自動機構兵器に僕はまだ乗った事がないからだった。
自動機構兵器に乗るには、ほぼ絶対に、接続者が必要になる。
でも、残念ながら、僕には生まれてこの方、接続者になってくれる彼女も、婚約者もいない。だから、僕は自分の自動機構兵器に一回も乗った事がない。
宝の持ち腐れとは、この事を言うのだろう。
「聞いているのか!守機」
先生に怒鳴られ、肩をすくめる。
「まぁいい。守機は、後で職員室に来るように。いいな」
それだけ言うと、先生は、再び教科書に目を落とす。
「接続者の役目は、支配者と自動機構兵器を文字通り繋ぐ事だ。接続者がスーツとならない限り、自動機構兵器が動く事は無い。つまり、自分の恋人と一緒でなければ、動かない。それが、自動機構兵器だ。二人の子供のような物と言う者もいるが、これ以上は、別の授業、機構工学の分野になるため、これ以上は説明しない。次に、生血についての説明に入るぞ」
先生は、教室を歩き始める。
「生血の人間は、神血と違い、血が流れている。だからこそ、出血多量にて死ぬ可能性がある。
そこが、神血と大きく違うところである。また、病気になったりと神血よりも体は弱いと言える。神血は、手足が無くなっても数日経てば、再び生えて来るが、生血の人間は生える事はない。神血の人間の手足を義手とする事もあるが、手足を付け替えた場合、自動機構兵器の操縦に問題が起き始める。よって、両手、両足が無くなったら軍を引退するしかなくなる。それゆえに、接続者のスーツの力が、さらに重要となる。接続者の力を使い、ちぎれそうになっている傷をすぐに治してもらうなど、治療をすぐに行う必要がある。多くの生血が生体ナノマシンを保持しているとはいえ、神血のように万能ではない。神血の傷の回復力には到底かなわない。そのためにも、支配者は、絶対に接続者を着る事を必要とされる」
先生の講義はまだ続いている。
俺はなんとなく窓の外を見る。
空は今日も赤みを帯びていた。
読んでいただき、本当にありがとうございます。
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