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俺が一匹を仕留めるのとほぼ同時に、長剣が攻撃を受け止めた赤犬の首がぼとりと落ちた。
筋肉男の大上段からの斧の一撃が首と胴体を真っ二つにした。
俺には真似できないパワープレイは見事だが隙も大きい。
当然、筋肉男の背後から赤犬が飛びかかる。
だが、その赤犬の頭部に火球が炸裂し、間一髪、危機を逃れた。ローブの女の詠唱が間に合ったようだ。
すかさず俺は走り出し、体勢を崩した赤犬の喉元を幾重にも切り刻んだ。
だらだらと血を垂れ流して絶命する赤犬を尻目に、額の汗を拭った。
残る赤犬は二匹。
息の上がっていた髭面と男たちはその場にへたりこんでいる。
三人の顔にはまだ余裕があった。
俺は長剣の男に耳打ちした。
「体力が限界に近い。お前たちで残りを片付けてくれ」
長剣の男はちらりと俺に目を向けた。
まとわりつくような視線が鬱陶しい。
「息が整ったら加勢してくれ」
俺は肩で息をしながら頷いた。