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手近な一匹に小型ナイフを投げつけた。
前脚の付け根に刺さったソレに悲鳴をあげることもなく、赤犬はこちらに向き直った。
強い。
第1階層の黒犬であれば今の一撃でひるんでいたはずだ。体躯はそのままに、体力が大幅に向上している。
これが第2階層の獣か。
赤犬が構える前に飛びかかる。
刺してはダメだ。ナイフを抜くまでに時間がかかりすぎる。刻むしかない。
右手のナイフで前脚を切りつけ、左手のナイフで首すじに裂傷を負わせる。
血は流れるものの効き目が薄い。
襲いくる剥き出しの犬歯をナイフの腹で受け流し、すれ違いざまに背中、横腹に亀裂を作ってやる。
男たちが錯乱していたのもわかる。第1階層の黒犬とはまるで別物だ。
赤犬の突進を二本のナイフで受け流しはするが衝撃で飛ばされた。
身をよじって着地し、体勢を立て直す前に切り込む。
肉にナイフを持っていかれないよう力を込めて切り刻む。上へ下へ切り刻む。徹底的に切り刻む。
失血でよろけた赤犬の喉元に思い切りナイフを突き立てる。引き抜く。
血しぶきが上がり、赤犬は二歩、三歩たたらを踏んでようやく倒れた。




