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長剣の男たちとの連携は思いの外うまく機能した。
先頭を俺が担当し、続いて筋肉男、ローブの女、しんがりを長剣の男が務めた。
黒犬の気配を察知したら俺と筋肉が先制攻撃を仕掛け、傷を負った獣を長剣とローブが仕留める。
四人で役割を分けているだけあって各自の負担が少ない。
気配探知から先制、回避、トドメまで一人でこなすのに比べたら簡単すぎて同じ穴に潜っているとは思えない。
「ハハッ、すごいな! ナイフ、やはり君とパーティを組んだのは正解だったよ」
長剣の男は屈託なく笑った。本心だろう。
事実、俺が気配を察知し、先制攻撃を仕掛けることで有利に黒犬との戦闘を始められる。
筋肉男もほとんど怪我をしていない。ローブの女が唱える呪文の回数も抑えられている。
このままいけば第2階層に到達するのもあっという間だろう。
「ガキのくせに、と侮っていたが腕前はウワサ通りみたいだな」
「これで私たちも第2階層に到達できそうね」
筋肉男もローブの女も俺を賞賛する言葉を並べた。
「油断は隙を生むぜ」
俺が忠告するように言うと、
「その油断を掻き消してくれるのが君の力量じゃないか」
長剣の男が俺の肩に手を置いた。
皮甲に覆われた手には血の跡が黒ずんでこびり付いている。
その手から逃れるように身をひねった。
「さっさといくぞ」
「愛想がないのもウワサ通りみたいだな」
穴の奥へ向かう俺のあとを筋肉男がついてくる。
他人と馴れ合うつもりはない。
ましてやこんな連中とはなおさら願い下げだ。
俺は三人を置き去りにする心持ちで穴の奥へ向かった。




