新しい任務
戦勝会も終わり、これからはルドベキア王国として本格的に活動しなければならない。
リリウムさまは女王として貴族達をまとめ、都市を結ぶ街道整備や、王国としての仕組み作りなど精力的に活動していた。
そんな中、あたし達はリリウムさまの執務室に集められ、あたし達の新しい任務を指示された。
それは、貴族たちを補佐する任を解かれリリウムさまの家臣として活動する事だった。ただ、チカムとキカム、ヒカムはゴデチアさまの補佐(監視?)だけは継続され、チカムはあからさまにイヤな顔をしていた。
あたし達の新しい主な活動内容は、街道整備作業者を魔獣や野盗などから守る警備や、魔石などを運搬する際の護衛、廃コロニーや森などで隠れている人々を都市に案内する事だった。
リリウムさまから新しい任務を伝えられると、ゲンゲは神妙な面持ちでリリウムさまに頭を下げる。
「リリウム女王、お願いがあります」
「どうしましたか?」
「オレはギルドで若い冒険者を育てたいと考えています。どうかオレがギルドで働く事を許可して頂きたいのです」
ゲンゲは真剣な顔でリリウムを見つめる。
「ギルドですか…」
「現状のギルドはジギタリス帝国の襲撃以降、あまり機能しておりません。以前なら住人達は魔石を運ぶ際、冒険者を雇い魔獣の襲撃に備えていましたが、今はその冒険者が極端に少ないのです。これから都市を結ぶ街道工事が盛んに行われますので、工事をする人々を守る冒険者を集め、育てる必要があるのです」
「なるほど、しかしゲンゲ。それは貴方がしなければならない事でしょうか?すでにギルドには職員がいます。彼らに任せ、ゲンゲにしか出来ない事があるのではないですか?」
「リリウム女王、オレは片腕をなくしもう戦う事もできません。オレに出来る事は後進を育てる事なのです。それに、コーナスやアナナス、クレオメはオレの指示なんか必要としない素晴らしい冒険者達です。オレはオレが出来る事でルドベキア王国の力になりたい」
「わかりました。確かに今のギルドは以前に比べると弱くなりました。有能な冒険者も少なく、住人達も安心して依頼もできない状態で、魔石の運搬時には魔獣に襲われケガをする者もいます。ではゲンゲ、あなたは全ギルド長として、住人達が安心して暮らせるようにギルドを立て直す事を命じます」
「あ…ありがとうございます!」
ゲンゲは片膝をつき頭を下げる。
「ゲンゲ、首都のギルドを中心に各都市にあるギルドをまとめ、冒険者の確保と、レベルの底上げ、そして有能な指導者を育てるのです。あなたならできますよね?」
リリウムさまはニコッと笑う。
「もちろんです。お任せ下さい」
ゲンゲは不敵な笑みを浮かべていた。
「あ、そうそう」
リリウムは手をパンと叩き、わたし達を見る。
「みなさんにお渡ししていた指輪ですが、これからはリーダーが持つようにしましょう。コーナス、アナナス、クレオメ、チカム、ルビア、そしてゲンゲ。こちらはマルスとわたしが持つ事にします。貴方達はわたしの下臣です。どこにいても連絡が取れるようにして、何かあれば連絡して下さいね」
ふふふとリリウムさまは笑っていた。
「え?あたしですか?」
あたしのリーダーはコーナスなんだけど?
「はい、ルビアさんにはマルス達のように、わたしの直属の部下になってもらいます」
「え?それではあたしは竜の牙から外れるのですか?」
それはちょっとイヤだな…
あたしの帰る場所は竜の牙なのに…
少し凹む
「いいえ、普段はルビアさんは竜の牙メンバーとして活動して下さい。もし万が一、何かが起こった場合、わたしから特命で指示をさせて貰います」
「はい、わかりました」
あたしは片膝をつき頭を下げた。
「リリウムさまぁ、シオンは?シオンはルビアさまにずっと付いてなきゃいけないのですぅ」
シオンがクネクネしながら、口を尖らせている。
「もちろん、シオンさんはルビアさんと一緒に行動して下さい。あなた達は離れてはいけないのでしょう?」
「あぃー。シオンはルビアさまから離れません、離れてはいけないのですぅ」
うひひひ とシオンは笑っていた。
(え?リリウムさま、シオンがあたしの異世界転生のサポーターって知ってるの?)
あたしは少しドキっとしてリリウムさまを見る。
「家族はバラバラになってはダメなんですのね?わたしには家族と呼べる人はいないので、よくわかりませんが… まぁ、わたしにとってはマルスやティモル、フォセラみたいな存在が、ルビアさんにはシオンさんなんですよね?昔から友はみんなそう言ってました」
リリウムさまは、すこしドヤ顔であたしを見る。
「え… あ、そ…そうなんです。あたしとシオンは家族みたいなものなのです」
はは、はははと笑ってごまかす。
「やっぱり!そうだと思ってました!」
リリウムさまはパンと手を叩いて、満面の笑みを浮かべていた。
「あは…あははは…」
(あぁ、もしかして、また女王にウソついたかも…)
あたしは1人、凹んでいた。




