凱旋
あたし達はルドベキア王国首都『リリウム』に帰ってきた。
首都に入る門には門番がいつものように立っていた。
「リリウム女王さま、おかえりなさいませ!」
門番は敬礼し出迎えてくれた。
「ただいま」
リリウムは微笑んで門番に手を振る。
馬車はそのまま門をくぐり、首都の大通りに入ると大通りの両脇には住人達が集まり歓声で出迎えてくれていた。
大通りの中央にはコーナスが立っていた。
「リリウム女王さま、この度は誠におめでとうございます。貴族さま達がお屋敷でお待ちです」
コーナスは丁寧にお辞儀をして、リリウムを出迎える。
「コーナス、ありがとう」
リリウムはお礼を言い、御者に屋敷に向かうように指示する。
コーナスは大通りの端に繋いでいた馬に乗り、馬車を護衛するようについて来ていた。
あたし達が屋敷に着くと、玄関には貴族達とゲンゲ達家臣が並んで待っていた。
馬車は玄関前に止まり、まずティモルとフォセラ、マルスが馬車を降りる。その後あたしが降り、最後にリリウムが馬車を降りた。
リリウムが馬車を降りると、貴族達は綺麗にタイミングを合わせて礼をしリリウムの帰還を祝っていた。
「みなさん、お出迎えありがとうございます」
リリウムは貴族達に声をかける。
馬車の中で笑っていたリリウムではなく、ここには『女王リリウム』が立っていた。
グニーが一歩前に出てくると、貴族達はリリウムを正面に見る。
「リリウム女王さま、この度はまことにおめでとうございます。我ら一同、心よりお祝い申し上げます」
グニーは挨拶すると、胸に手を当て深々と頭を下げた。
「ありがとう。全ては貴族の皆様、そしてゲンゲ達、皆さんのおかげです。まだまだやるべき事はありますが、まずは今回の『戦いの勝利』を祝いましょう」
「ははぁ!」
「では、リリウム女王さま。お疲れでしょうから少しお休みください」
グニーが声をかける。
「グニーさま、ありがとうございます。わたしは大丈夫です。まずは今回の報告をしますので、大広間に集まって下さい。わたしは着替えてから大広間に向かいます」
「承知致しました」
グニー達はリリウムが屋敷に入るのを見送ると、ゲンゲ達を連れて大広間に移動して行った。
あたしは着替える必要も無いので(着替えてもあまり代わり映えしない…)そのまま大広間に向かう。
大広間に入ると大きめのテーブルが等間隔に配置されており、一番奥にはリリウムが座る豪華な椅子が置いてあった。
「ゲンゲさま、少しだけ休憩してきます」
あたしはゲンゲに声をかけて控え室に入る。
「ええ!? なにこれ?」
控え室には所狭しとお酒や料理が置いてあった。
「これは貴族様達がリリウム女王の為に用意したものだ」
後ろから声が聞こえて振り向くと、コーナスとミモザ、アキレアが立っていた。
「みなさん!」
「ルビア、大変だったな」
コーナスは頭をポンポンと撫でる。
「あたしはもう子供じゃないですよ」
あたしは文句を言いながら、頭を差し出していた。
「ルビアちゃん、おかえりなさい」
ミモザはニコッと微笑む。
「ミモザさん、ただいま」
あぁ、あたし帰ってきたんだ。やっとみんなの元に帰ってきたんだな…
少しだけ涙が出そうになる…
「ルビアさまぁ!!」
シオンが廊下を走ってやってくると、飛びつくようにあたしに抱きつく。
「うわっ シオン危ないよ!」
あたしはなんとかシオンを抱きとめるが、バランスを崩して座り込んでしまった。
「ご無事でなによりですぅ」
シオンはグリグリとあたしの胸に顔を押しつけてくる。
「ふふふ、シオンちゃんはいつもルビアちゃんを心配してるね」
ミモザさんは笑いながらあたし達を見ている。
「あ、リリウムさまが到着するぞ」
コーナスが声をかけると、みんな大広間に入った。
大広間に入ってしばらくすると、赤いワンピースに着替えたリリウムが現れた。
リリウムは一番奥にある椅子の前に立ち、全員の顔を見ると、大広間はシンと静まり返る。
「みなさん、今日はルドベキア王国の記念すべき日となりました」
リリウムはニッコリと微笑み、言葉を続ける。
「わたし達は、ジギタリス帝国と交渉し魔石の取引きをする事になりました。今日からわたし達は『魔石を集める為に生かされる』のではなく、『生きる手段として魔石を集める』のです」
リリウムは少し間を開け、みんなの顔を見る。
「武力ではジギタリス帝国には勝てませんでした。しかし、わたし達は力を合わせジギタリス帝国から『魔石の取引き』を勝ち取ったのです!この度の戦いはわたし達の勝利なのです!!」
「うぉぉぉぉ!!」
大広間にいた貴族やその従者、ゲンゲ達は両手を上げて叫び『勝利』に酔いしれていた。
「リリウム女王さま、改めてお祝い申し上げます」
グニーはリリウムに頭を下げてお祝いすると、こちらを振り向き叫ぶ。
「まだこれから細かい事を決めなきゃいけないが… 今はこの勝利に酔いしれようぞ! さぁ!酒と料理を運んでくれ!ルドベキア王国の戦勝祝いだ!」
すると大広間のドアが開き、各都市から貴族について来たメイド達が料理や酒を運び込み、祝賀会が始まった。




