表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
89/148

アニスの策略

(アニス)


リリウム達が帰った後、応接室でロベッジとアニスは新しく入れ直したコーヒーを飲んでいた。


「アニス、助かった。あそこでイノンドを殴らなければリリウムの怒りは治らなかっただろう…」

ロベッジはコーヒーを飲み、一息つく。


「これからも魔石を納品させるには、リリウムは必要なコマですからな。ここで手放すわけにはいきますまい」

アニスは立ち上がると窓の方へ歩いて行く。


「そうだな、今の魔界をまとめているのはリリウムで間違いないだろう。魔石の採掘が我々には出来ないのなら、魔界の住人に頼る他ない。これまでのように力で抑えつけるのも限界になってきていたからな。タイミングよくリリウムが動いてくれて… 」

ロベッジは、ふと考える。


「そうか、これもアニス。お前が仕向けたことか」

ロベッジはアニスを見て、ニヤリと笑う。


「皇子、わたしはリリウムに情報を与えただけです。リリウムが自ら考え、行動を起こしたのです」

アニスは手を胸にあて、軽く頭を下げる。


「アニス、お前もタイミングよく古傷が悪化し、イノンドを次の総督に勧めてきた… すべてお前の思惑通りに運んだということだな」

ロベッジは、くくくっと笑う。


「イノンドは魔界の住人に対して歪な感情を持っていました。少し権力を与えてやれば、暴走するのは目に見えていましたからな。まぁ、リリウムが魔界を纏めるのが先か、イノンドが暴走するのが先か… そこは賭けでしたが、最終的にはリリウムは魔界をまとめ、我らと魔石の取引きをして欲しいと願い出る事は分かっていました。『取引き』という形を作ってしまえば魔石は継続的に供給されるでしょう」

アニスは窓の外を見ながら、自分の考えたストーリーを説明する。


「そうだな、今更、我らから『取引き』を提案する事はできない。もし、提案すれば我らの優位性を損なってしまうからな…」

ロベッジはアニスの横に並び、窓の外を見る。


「はい、どうしてもリリウムから『取引き』を提案させる必要があったのです」


「なるほど。イノンドはそれを知っていたのか?」

ロベッジはチラリとアニスをみる。


「いいえ、あいつは何も知りません。あいつはわたしの予想通りに動き、役に立ちました。もう使い道はありません。本国で余生を過ごせばいいでしょう」


「うむ。それはそうと、リリウムの悍ましさだ。アニスはアレを知っていたのか?わたしはあの金色の目を思い出しただけでも背筋が凍る気がするぞ」

ロベッジは自分の肩を抱き、身震いする。


「金色の目?リリウムの目は赤い色ですが?」

アニスは不思議そうにロベッジを見る。


「ん?アニスはあのリリウムを見ていないのか?背中からは黒く歪な翼、いや、翼と呼んでいいのかも判らないが…まぁ、黒い翼を広げ、翼を羽ばたかせると大きな鎌を持った骸骨が現れ、命を刈り取っていくのだ。それよりもあの金色の目だ。縦長の瞳孔をした金色の目に見られると命を吸い取られるような感覚に陥る…。わたしはあれ程、悍しい目を見た事がない…」

ロベッジは震える右手を、左手で押さえていた。


「いえ、わたしは先ほどまで見ていたリリウムしか見た事がありません」


「そうか、わたしは二度と見たくないな…」

ロベッジは落ち着こうとコーヒーを飲むが、表情はひきつっていた。



「それにしても、飛行船の係留所を見ました。まさか、リリウムがあれほどとは…」

アニスは焦土と化した係留所辺りを見てため息をつく。


「いや、あれはリリウムの隣に座っていたルビアとか言う小娘だ。お前も飛行船もろとも撃墜されるところだったんだぞ」

ロベッジは、はははと笑う。


「あの小娘が!?あの魔法… いや、魔界では魔導と言ったか。あの魔導の威力は、まさにリアリナのようですな…」


「そういえば、兵士達もリアリナがどうとか、マヴロがどうとか言っていたな…」


「はい、リアリナの魔導は、それは凄まじいモノでした。空から炎を纏った隕石を無数に降らし、一瞬で辺りを焦土と化し、逃げ出した飛行船は大木のように巨大な氷の槍で貫かれ撃墜されました。兵士達はしばらく金髪の女性を見るだけで怯えてしまう程でしたからな…」

アニスはリアリナを思い出すだけで、背中に嫌な汗を流してしまう。


「まさに、あの小娘がやっていた事と同じだな…」

ロベッジは口に手を当て、思い出していた。


「ただ、リアリナは最後には兵士達による一斉射撃で

死亡しました。小娘がリアリナと同じなら兵士達の射撃で討てたのでは?」


「うむ、それがムリだったのだ。部隊長が一斉射撃やナイフによる接近戦に持ち込み、数人の兵士が小娘にナイフを突き刺したのだが、小娘の傷は瞬く間に完治し、兵士達に突撃すると手当たり次第に兵士を殴り殺していたんだ…」


「…! それはマヴロと同じ戦い方ですな。以前、お話しした事を覚えていますか?マヴロとリアリナが協力して戦っていれば、我らは全滅していた…と」


「あぁ、もちろん覚えている」


「皇子、その小娘はまさにそれです。近接戦はマヴロのような圧倒的な強さ。遠距離戦ではリアリナのような凄まじい破壊力。それ程の破壊力を持つ個人であれば、まだ隠された力があるやもしれません」

アニスは強張り、もともと怖そうな顔が更に恐ろしい顔になっていた。


「うむ。リリウムはとんでもないカードを手に入れていたようだな…」

ロベッジは口に手を当て、魔界の空を睨んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ