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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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協定の締結

「アニスさま、わたし達の為にそこまでお怒りになられ感謝します」

リリウムは静かに感謝の意を示した。


「リリウム女王のお怒りはもっともの事です。わたしがリリウム女王の立場なら同じ事をしております」

アニスは神妙な面持ちで、少し俯く。



「さて、リリウム女王。これからルドベキア王国とジギタリス帝国の代表として、今後の話しをしたいと思いますがよろしいでしょうか?」

ロベッジは背筋を伸ばし、問いかけてきた。


「はい、その為にわたしはここに来ました」

リリウムもキレイな姿勢で答える。



「リリウム女王、お互いの内情はもう分かっておりますので、面倒な駆け引きは止めましょう。我がジギタリス帝国が求めるものは、『魔石の安定供給』です。ご存知のように本国では深刻なエネルギー不足となり、一定量の魔石を継続して入手する必要があるのです」

ロベッジは真剣な顔でリリウムを見る。


「はい、存じております。わたし達はその為に魔石を集めてきました。しかし、今、魔界の住民達は疲弊し規定量の魔石を集める事が困難になりつつあります」


「それで今回、ここにおいで下さったのですね?」


「その通りです。わたしの目的は魔界の住人達… わたしの友を守りたい。そして、ジギタリスの人々も守りたい。その方法のご提案に参ったのです」

リリウムは手の平を合わせて、血のような赤い目をルビーのように輝かせている。


「リリウム女王、ぜひその提案をお聞かせ下さい」

ロベッジも身を乗り出して話しを聞いていた。


「まず、ジギタリス帝国はエネルギー不足のため魔石が必要です。しかし、ジギタリスの方々は魔石と普通の石の見分けができません。ですので、魔界の住人達しか魔石を採掘し集める事ができません」


「その通りです…」


「現在、各コロニーの人々は魔石を集めここに運び込んでいますが、どうしても採掘量にムラが出ますので魔石が規定量に足りない事があるのです」


「なるほど…」


「そこでわたし達はルドベキア王国を建国し、お互いに協力する事で魔石の採掘量を確保しようと考えました」


「おお、それは素晴らしいことです」


「ありがとうございます。その為、これまで各コロニーから個別で納品していた魔石を、ルドベキア王国として一括して納品させて頂きたいのです」

リリウムはロベッジの反応を見る。


「我らは魔石を納品して頂けるのなら、何の問題もありません」

ロベッジはにこやかに答える。


「魔石の納品量の問題については、一括納品する事でクリアできます。しかし、肝心の魔石を採掘する『人』が疲弊している問題があるのです。人が疲弊し倒れてしまうと魔石の採掘が出来なくなり、ジギタリス帝国への納品も出来なくなってしまいます。それはジギタリス帝国とルドベキア王国が共に倒れてしまうと言う結果になるのです」


「うむ、わたしもそれを危惧していたのだ。各コロニーの主へ何度も降伏を勧めるのだが、魔界の主達は戦う事をやめようとはしなかった。結果、たくさんの魔界の人々を殺しかなかったのだ…」

アニスは鎮痛な面持ちになる。


「アニスさま、わたしはソレを魔界がもたらした災害だと考えています。わたし達は今回たくさんの人やモノを失いました。しかし、それ以上に学んだ事もたくさんありました。だから、生き残ったわたし達は新しい魔界を作り、誰もが幸せに『生きる』事ができるように努力しなければならないのです」

リリウムの言葉に熱が入りだす。


「そこでロベッジ皇子にお願いがあるのです」

リリウムはロベッジに向き直り、まっすぐに見つめる。


「お聞きします」


「以前、アニスさまからジギタリス帝国は魔石の取引きをしたいと交渉に来たとお聞きしました」


「はい、その通りです。我らの目的は初めから変わっていません」


「その取引きをルドベキア王国として頂けないでしょうか?」


「それはどういった理由なのかお聞きしても?」


「はい、先程も申しましたように魔界の人々は疲弊しております。それは、現在の魔石採掘は『強制』であり住民達に利益が無いのです。各コロニーの主たちも住民達に対価を払う事が出来るほど裕福ではありません。そこで、魔石の取引きをする事で住民達に対価を支払い、魔石の採掘を『強制』ではなく『生きる手段』にするのです。そうすれば、住人達は生きるために魔石の採掘をするようになり、金や物がまわり経済が活発になるのです。経済が活発になれば住人達はより活発になり、魔石の採掘も安定して継続できるのです」

リリウムは一気に話し、ロベッジの反応を見ていた。


「……なるほど。リリウム女王のおっしゃる通りだと思います。魔界の人々が活発になれば魔石採掘も安定し、本国の民も安心して暮らしていける。まさにジギタリス帝国の人々もリリウム女王に守られるわけですね」

ロベッジはそう言うと、ニコッと笑った。



「あ、いや、その… すいません…」

リリウムは急に照れて頭を掻いていた。


「わかりました。それでは取引きの詳細は改めて協議しましょう。今後ともよろしくお願いします」

ロベッジは立ち上がり、リリウムに握手を求め手を伸ばす。


「はい、こちらこそよろしくお願いします」

リリウムも立ち上がり、ロベッジと握手を交わした。


こうして、ルドベキア王国とジギタリス帝国の魔石に関する取引きの協定が結ばれた。


協定を結んだわたし達は、足取り軽くルドベキア王国へと帰っていった。

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