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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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リリウムの夢物語と現実

(リリウム)

主たちと話し合いルドベキア王国として、ジギタリス帝国との交渉が決まってすぐの頃、わたしはアニス総督に親書を書いていた。



アニス総督はとても忙しい方だ。出来るだけ早く親書を送り、アニス総督のお時間を確保しなければ…

アニス総督は、わたしの話しをちゃんと聞いてくれる。そして、ちゃんと考えてくれる…

あのお方なら、きっと何とかしてくれる…


その為には、まずわたし達がバラバラではいけない。

ちゃんと同じ方を見て、考え、行動する事が大切なのだ。そうする事で、やっとジギタリス帝国と向き合い、お互いに良い関係を築く事ができる。わたしはそう信じている。


今、わたしの理想に向けた一歩である各コロニーの主たちとの話し合いが終わり、魔界に住む者たちと一緒に『生きる』事ができるようになった。

全てはルビアさんとシオンさんが、わたしのコロニーに立ち寄ってくれたおかげだ。

彼女達に出会わなければ、わたしはこの夢物語を夢のまま終わらせる事しか出来なかったと思う…



(今のところ、いい方向に向かって歩めている。でも、もしもの時を考えおかなければ…)

全てがうまくいくとは限らない。いや、ほとんどはうまくいかない。

だから、わたしは考えなければならない…


今まで話してきて分かる事は、アニス総督はひとつ上の目線で考え、行動するお方だ。だから、わたしの理想をまるごと受け入れなくても、ある程度考慮して考えてくれる。

問題はイノンドだ。イノンドはアニス総督の側近なのでいつも側についている。

彼はたぶんわたしがキライなのだろう。わたしの言葉は全て否定する。次善策のような案も出さず、徹底的に否定するのだ。

なぜあのような者がアニス総督の側近なのか理解できない…

と、ボヤいても仕方ないので考える。


(最悪のパターンは、交渉が決裂し武力衝突となること…)

わたしは目の前にいるジギタリス兵なら全滅させる自信はある。例えどんな攻撃を受けても『()()()()()()()()』のだから。

でも、遠く離れた友を守ることはできない。

万が一そんな状況になったら、各都市に連絡し即刻避難してもらおう。人さえ生きていれば、都市はもう一度作ることができる…

その為には、ゲンゲ達に()()()()を持たせて、いつでも連絡できる体制を整えておこう。


(あとはわたしが幽閉されるなどして、ルドベキア王国に帰れなくなること…)

うん。これは大丈夫。わたし達はもうバラバラではない。ゲンゲには万が一の場合は、グニー様を次期王としてたて仕えるように指示しておくことにしよう。


(よし、あとは何とかなるだろう!)

アニス総督なら、きっとわたしの話しを聞いてロベッジ皇子に伝えてくれる。

わたしの考えはルドベキア王国はもちろん、ジギタリス帝国にとってもいい話なのだから…

きっと、うまくいく…


「あ、アレを準備しなきゃ」

ふふふと笑いながら、リリウムはいそいそと()()を嬉しそうに準備していた。


その時のわたしには、明るい未来しか見えていなかった…



◇◇◇◇


「うむ、アニス元総督は体調を崩されて帝国に帰還しておられる。現在はわたしが総督である」

イノンドは誇らしげに言っていた。


(最悪だ… よりにもよってコイツが…)

一瞬わたしの目の前は真っ暗になった。しかしそんな事を言っている場合ではない。とにかくイノンド総督の機嫌を損ねないようにしなければ。


わたしは思ってもいない事を言い、イノンドを祝福した。そのおかげなのか、イノンドはわたしの話しを聞いてくれた。


(よかった、なんとか話しを聞いてくれた…)

しかし、それはまやかしだった。


「わからぬか?お前たちクソムシはただ魔石を持ってくればいいのだ。民が倒れる?倒れたら繁殖して増やせばよかろう。繁殖はクソムシが一番得意であろう?クソムシはクソムシらしく、地べたを這い魔石を持ってくればいいのだ」

イノンドは大声で、なんどもわたしの友を侮辱した。

その後の事はあまり覚えていない。


わたしは友と過ごすうちに、友の姿に憧れた。そして『わたしの力』を抑え込む事で友とよく似た姿になる事ができた。力を抑え込んだわたしは『ただ死なない』だけで何の力もない存在になってしまったが、わたしは後悔していなかった。むしろ、この力を持たない姿の方が気に入っていた。気に入っていたのに…


わたしは気がつけば『昔の姿』に戻っていた。

今まで抑え込んでいた力が体の底から吹き上がり、イノンドとその仲間達を殺す事に躊躇いを感じなくなっていた。


『イノンドを殺す』

それだけが頭の中を支配していた。

あんなに考えて、友と過ごす明るい未来を夢見ていたのに…


わたしは目の前のジギタリス兵を皆殺しにし、イノンドを追った。


しばらく廊下を進み、扉を開けるとマルス達が肉片と化していたが、気にも留めない。いや、気に留める必要がない。


扉を出ると目の前にはイノンドと無数のジギタリス兵がいた。


(いた…)

わたしはイノンドを殺す。

イノンドに汲みいるものも殺す。

イノンドを守るものも殺す。


わたしの金色の目はイノンドに関わる者、全てに呪いを放っていた…

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