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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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総督との対面

馬車は間もなくジギタリス帝国の都市に到着する。


あたしは馬車の中で、リリウムさまに頂いた黒い礼服のワンピースに着替える。礼服は体にピッタリ過ぎて、いつものようにチェインメイルを着ることができなかった。

(まぁ、今日は戦いに行くのではないからいいよね…)


仕方ないのでチェインメイルと自分の布の服(地味なやつ)は荷物の中に押し込んだ。


リリウムも薄い緑のワンピースから、白い礼服のワンピースに着替えると、身嗜みを整えていた。



馬車の窓から顔を出して前方を見ると、巨大な壁に囲まれたジギタリス帝国の都市が見えた。

壁はルドベキア王国の首都の壁より一回り大きく見える。


「ほぁー、さすがジギタリス帝国都市。大きいですねぇ」

あたしは初めて近くで見た都市の大きさに圧倒されてた。


「さぁ、ルビアさん。行きますよ」

リリウムは女王の顔になり、ジギタリス帝国都市を睨んでいた。


「はい!」

あたしも両頬を叩き気合いを入れる。


馬車はジギタリス帝国都市の門に着き、御者が門番と話している。

いくつか言葉を交わすと、門番は門を開き馬車を通してくれた。


「意外とすんなり入れてくれるのですね」

あたしは、もっと取り調べ的なことをされると思っていたのだ。


「はい、魔石の搬入やコロニーの主が挨拶に来るなどありますから」

「そうなんですねぇ」

「でも、簡単なのはここまでですよ。総督がいる建物には入れませんからね」

「え?それじゃ、どうやってアニス総督と話しをするのですか?」

「それはね、総督とお話しする専用の建物があるの。建物には謁見の間って言うのがあって、そこに総督が来てくれるのよ。今回、主さま達とお話しした大広間がある建物があったでしょ?この謁見の間の建物をマネして作ったのよ」

「そ!そうだったんですか!」

リリウムさまは、どんどん新しい事を取り入れる方なんだなぁと感心する…


そんな話しをしている間も馬車は都市の中央にある、謁見の間がある建物へ向かっていた。


窓からの景色は、集合住宅のような建物がたくさん建っており、どこかの社宅のような感じだった。

所々に広場があり、飛行船が係留されている。

飛行船がない広場では兵士達が軍事訓練をしており、物々しい雰囲気に包まれていた。



謁見の間がある建物に着くと、あたしとリリウムは馬車を降りる。


建物の入口にはアサルトライフルを装備した兵士が2人立っていた。


「わたしはリリウムです。本日、総督と会談をする為にやって参りました」

リリウムは兵士に声をかける。


「リリウムさま、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

兵士の1人があたし達を建物の中へと案内する。


「リリウムさま…?」

あたしがこのまま兵士について行っていいのか戸惑っていると


「ふふふ。事前に手紙を送っていたのですよ」

リリウムは微笑むと、兵士について建物に入って行く。あたしは慌ててリリウムについていった。



建物は二階建てで、玄関を入ると広めのロビーがありソファーや小さめのテーブルがいくつか置いてあった。

奥に廊下が続いおり、廊下の奥には『謁見の間』と書かれた立派な扉があった。


「リリウムさま、そのまんまマネしたんですね…」

「ふふふ、ここの二階には来客用の個室もあるのよ」

「そ…そこまでマネしたんですか」

わたし達は小声で話しながら、クスクスと笑っていた。入口から案内してくれている兵士は、聞こえいるのか、聞こえていないのか無反応だった。


「失礼します」

兵士は謁見の間の扉の前でノックして、中に声をかけてから扉を開く。

部屋は広く、一番奥は一段高くなっており立派な椅子が置いてある。

手前には4人の兵士が武装して立っており、まるで立派な椅子を守っているような感じだった。

部屋の奥にもうひとつ扉があり、そこから総督が入ってくるような作りになっていた。



「ここでしばらくお待ち下さい」

兵士はあたし達を部屋の中央、立派な椅子の数メートル手前まで案内すると一礼して部屋を出て行った。



しばらくすると、部屋の奥の扉が開き少し痩せた男が入ってきた。男は少し乱れた白髪に、細い目をしており陰湿そうな笑みを浮かべている。

リリウムは一瞬イヤな顔をするが、すぐに隠し女王の顔に戻ると軽く頭を下げて微笑む。

「これはイノンドさま。ご無沙汰しております」


あたしはイノンドをチラッと見た後は、頭を下げてリリウムの後ろに控えていた。

(あれが、ヘビヤローね。なるほど…)



「リリウム殿、此度はどのようなご用件でしょうか?」

「はい、この度はお願いがありまして参りました。アニス総督はいらっしゃいますか?」

「うむ、アニス()()()は体調を崩されて帝国に帰還しておられる。現在はわたしが総督である」

イノンドは自慢気に胸を張り、そう言うと立派な椅子に座った。


(うぁ、最悪なパターンじゃ?リリウムさまがフラグたてるから…)

あたしはチラっとリリウムを見ると、リリウムも(うわ、最悪…)と言いたげな顔を一瞬したが、すぐにニコニコしていた。


「そうでしたか!イノンド総督。ご昇進おめでとうございます。これからよろしくお願いします。そうと知っておればお祝いの品を準備していたのですが…」

リリウムは丁寧お辞儀をして、イノンドの昇進を祝う。


「リリウム殿、お気遣いありがとう。そんなお気になさらず。それよりリリウム殿、本日のご用件をお伺いしましょう」

イノンドが椅子の背にもたれ、ギシっと音が部屋に響く。


「はい、本日はご報告とお願いがあり参りました」

リリウムは一礼すると、イノンドを見て微笑んでいた。

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