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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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ジギタリス帝国都市への道

あたしはリリウム女王さまとジギタリス帝国に行く事になり旅の準備をしていた。リリウム女王に頂いた指輪をつけると、先にグニーと出発したシオンがさっそくメッセージを送ってきた。


「ルビアさまぁ、聞こえますかぁ?」

シオンの声が頭の中に直接聞こえる。


「あ、シオン。聞こえるよ。この指輪スゴいねぇ」

「ルビアさま、ジギタリス帝国で暴れたらダメですからねぇ」

「あ、暴れないし!あたし、そんなに暴れてないし!!」

「ルビアさま、考える前に暴れるから…」

「ちょ!それを言うなら『考える前に行動する』でしょ?」

「行動がルビアさまの場合は暴れてますからぁ」

シオンはぷくくと笑っている。

「そ、そんな事ないし!それに、今回はリリウムさまのお供だし、大丈夫だよ!」

「まぁ、さすがにそれで暴れたらビックリですけどねぇ。あ、グニーさまが呼んでます。また、連絡しますねぇ」

プツっと音がしてシオンの声が消えた。


(これ、完全に携帯よね…)

あたしはしばらく指輪を眺めていた。


「さ、あたしも頑張らなきゃ!」

あたしは両手で頬をパチンと叩き、ジギタリス帝国との交渉を成功させようと気合いを入れ直すと準備を進めた。



マルスは屋敷の前に馬車を呼び、リリウムの荷物を積み込んでいた。

馬車は白を基調として、ところどころ金の縁取りをした豪華な二頭引きだった。


「おお、立派な馬車ですね!」

あたしがマルスに声をかける。あたしに気がついたマルスは作業の手を止めて丁寧にお辞儀をしてくれた。

「ルビアさま、この度はリリウムさまをよろしくお願いします」


「あ、こ、こちらこそよろしくお願いします」

あたしは慌ててお辞儀をする。


「ルビアさまのお荷物も積みますので、こちらに置いて下さい」

「は、はい。すいません。お忙しいのに手を止めさせちゃって…」

「いえいえ、お気になさらないで下さい」

マルスはニコっと微笑むと、あたしの荷物も馬車に積み込み旅の準備が終わった。


「それではリリウムさまにお声をかけて参ります。ルビアさまはしばらくお待ち下さい」

マルスは軽く頭を下げると屋敷に、リリウムを呼びに行った。


しばらくしてリリウムが屋敷から出てくる。

リリウムは薄い緑のワンピースに、つばの幅が広い帽子(いわゆる女優帽だ)を被っていた。手には日傘を持ち、これからどこかのリゾートに行くセレブのようだった。


対してあたしは、いつものようにかあさまのチェインメイルの上から布の服(地味なやつ)を着ている。


(うーん、あたしリリウムさまの隣に立てないかも…)


少し凹んでいると、リリウムから服を渡された。

服を広げてみると、黒を基調とした立派なワンピースの礼服だった。


「リリウム女王さま、これは?」

「ルビアさん、移動中はどんな格好でもいいですが、ジギタリス帝国に入る時は、そちらに着替えて下さいね。あと、『女王』は公式の場だけでいいですよ。普段は今まで通り呼んで下さい」

「はい、リリウムさま」

リリウムは、ふふふと笑っていた。



ルドベキア王国からジギタリス帝国の都市までは歩いて3日くらい。馬車なら1日半程度で到着できるだろう。

あたし達が乗り込むと、馬車はジギタリス帝国都市に向けて出発した。

屋敷の前では執事のマルス、メイドのティモルとフォセラが深々と頭を下げて馬車を見送っていた。


馬車の中は多少の振動はあるものの、快適に過ごすことができた。


「リリウムさま、ジギタリス帝国はどのような場所なのですか?」

以前、リリウムは何度も帝国に足を運び総督と話しをしたと言っていた。あたしは初めて入る都市の情報を少しでも知っておく事で、何か起きた時にどう対応するか考えておこうと思ったのだ。


「ルビアさんは、初めてでしたね」

リリウムはルビアを見て微笑む。


「はい。あたしは当初、ジギタリス帝国の都市に潜入する予定で、どうやって潜入するか考えていただけで、都市の情報は潜入してから調べるつもりでした。それがまさか正面から入る事になるなんて…」

あたしは、はははと軽く笑う。


「そうでしたね。初めて聞いた時は、なんて無茶する気なんでしょって思いましたよ」

リリウムは思い出し笑いをしていた。


「あたし、考えるより行動派なので…」

さっきシオンに言われた事を、自分でも言ってしまう。


「ふふふ。さて、ジギタリス帝国の都市ですが、基本的は住人はいません。都市に居るのは兵士ばかりです。前にも言いましたが、最高責任者として第二皇子のロベッジさまがいます。その下に総督がいて、各部隊の隊長、隊長の下に兵隊達がいます。わたしが話していたのはアニス総督という方です。キチンと話せばちゃんと話しを聞いてくる方です」


「今回は、そのアニス総督と交渉されるのですか?」


「そうね。出来ればロベッジさまとお話しできればいいのですが、難しいでしょうね」


「そうですよね。皇子さまとお話しするなんて現実的ではありませんね…」


「まずはアニス総督とお話しをして、アニス総督からロベッジさまに伝えて頂くという流れになるでしょうね」


「なかなか難しそうですね…」

あたしは、すでに胃が痛くなってきていた…


「そうそう、難しそうと言えばアニス総督の部下にイノンドと言う男がいるの。見た目もそうだけど性格もヘビみたいに陰湿で、わたしは心の中でヘビヤローって呼んでるわ」

リリウムはふふふと笑う。


「へ…ヘビヤローですか」

あたしはリリウムさまからこんな言葉が出てくるなんて想像もできず固まってしまった。


「ふふふ、内緒よ」

リリウムは人差し指を唇に当てて、いたずらっぽく笑っていた。


「はい、内緒ですね」

あたしも、つられて笑う。


「あー、あのヘビヤロー、帝国に帰ってたらいいのになぁ。わたし、あの人は苦手だわ」

リリウムは右手を頬に当て、悩ましげにため息をついていた。


「リリウムさま、それフラグって言うんですよ」


「ええぇ、やだなぁ」

リリウムは、宿題を前にした子供のような顔をしていた。


「ふふふ、そんなお顔もされるのですね」

あたし達は、しばし楽しい時間を過ごしていた。

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