それぞれの役目
「ルドベキア王国と共に、新しい魔界を作り上げていきたいと思います」
リリウムは血のように赤い目を輝かせて、主達に話し出した。
主達の忠誠を受け取ったリリウムは、さっそく今後の動きや組織について確認し慌ただしくしていた。
(リリウムさまって、普段は血のような赤い目なのに、こう言うときはルビーのようなキラキラした目になるのよねぇ)
あたしはぼんやりとリリウムの目を見ていた。
すると、不意にリリウムはあたしの方を振り向く。
「え?」
あたしが心の声が漏れた?とドキっとしていると
「ルビアさん、あなたの王国や都市の話しを皆さんにも話してもらえますか?」
リリウムはニコっと微笑む。
「え? あ、はい」
あたしは【かえで】がマンガで読んだ中世の世界をイメージしながら説明をした。
「なるほど、なかなか理にかなった構想だ。しかし、本当にルビアが考えたのか?オレにはとても信じられないのだが…」
グニーは不思議な物を見るような目であたしを見る。
「グニーさま、それはどういう意味ですか?」
「ん?そのままの意味だが?」
「「ふふふふ…」」
「はいはい、2人ともケンカしない!話しを進めますよ」
リリウムはあたし達を適当にあしらって話しを進め、ルドベキア王国の全体像が徐々に出来上がってきた。
まず、8つのコロニーをまとめルドベキア王国と名乗ることにした。
7人の主達は今後『貴族』と名乗りリリウム女王の臣下となった。コロニーは都市と名乗る事にし、都市の名前は混乱を避ける為に、現在と同じく主の名前とした。
例えばグニーのコロニーは、貴族グニーが統治する都市『グニーの都市』となるのだ。
リリウムのコロニーは首都と名前を変え、ルドベキア王国の中心都市とした。
コロニーを破壊され住む場所を無くした人達の受け入れ先として、各都市の周りに居住区を作り町と呼ぶことにする。町は、その町を作った都市の貴族が管理することとする。各貴族は積極的に放浪している人達を保護しする事を約束した。
なお、町の名前は自由に決めてよい事にした。
次に、現在舗装はされていないがコロニーの商人や冒険者が使用している『踏み固められた道』に石畳を引くことで、各都市を結ぶ街道とする事になった。この街道については、街道が結ぶ都市同士で協力して整備する事にした。
そして一番重要なジギタリス帝国との交渉は、女王リリウムのたっての希望で女王自ら行う事になった。
「それでは皆さま、ジギタリス帝国との交渉が終わるまでは、今まで通り魔石を納品する必要がありますが、わたし達はルドベキア王国の仲間です。お互いに協力し無事納品を続けて下さい。わたしは必ず交渉に勝ち、よい報告をさせてもらいます」
リリウムは自信に満ち溢れた顔で宣言した。
「リリウム女王さま、吉報をお待ちしております」
グニーは膝をつき頭を下げる。それに倣い6人の貴族たちも頭を下げていた。
「コーナス、クレオメ、アナナス。貴族の皆様の手助けや情報の共有をお願いします。ゲンゲは全体の指揮をお願いします。ミモザ達はゲンゲの指示に従い行動して下さい」
「はっ。承知致しました」
ゲンゲをはじめ、あたし達は片膝をつき頭を下げる。
ゲンゲは立ち上がり、あたし達に指示を出す。
「お前たちが交渉を担当した、主…いや貴族さまと共に行動しご助力をするのだ。オレが担当した貴族さまにはミモザとアキレアがついて行け。」
「あ、ゲンゲ。ルビアはわたしと共にジギタリス帝国に行ってもらいますので外して下さい」
「はっ。では、ルビアはリリウム女王と共に行動しろ。グニーさまにはシオンが付いて行く事とする」
「えー、シオンはルビアさまについて行きますぅ」
シオンがただをこねだした。
「あたいら、ゴデチアのとこイヤやなぁ」
チカムも文句を言い出す。
「シオン、チカム、命令だ。行け。」
全く聞く耳を持たないゲンゲにシオンとチカムが不機嫌な顔をする。
リリウムはそんな彼女達を見て、優しくなだめるように話し出した。
「シオンさん、ルビアさんに付いていたいのは分かります。ですが、ジギタリス帝国との交渉に向かう人数も重要なのです。多すぎると挑発的となり、少な過ぎると舐められてしまいます。ですので、シオンさんは今回はグニーさまと行動を共にしてルドベキア王国のために働いて下さい」
「あぅー… 早く交渉終わらせて下さいよぉ」
シオンはしぶしぶ了承する。
「チカムさん、キカムさん、ヒカムさん。ゴデチアさまのお手伝いが出来るのはあなた達だけです。あなた達ほどゴデチアさまの信頼を得て、少ない言葉で分かり合える者はここには居ないのです。ぜひ、わたしからもゴデチアさまのお手伝いをお願いします」
リリウムはニコっと笑い、チカム達の手を握る。
「……リリウム女王さま、あんた怖い人やな。ま、ええわ、ゴデチアがちゃんと仕事する様に見張ってたらええんやろ?おい、ゴデチア!チャキチャキ仕事せなお仕置きやからな!」
チカム達は腕を組みゴデチアを睨む。
「ひっ」
ゴデチアは青い顔をして、また小さくなっていた。
「チカムさん、せめて『ゴデチアさま』と呼びましょうね…」
リリウムは、ふふふと笑っていた。
「あ、そうそう!マルス!アレを持ってきて」
リリウムはポンと手を叩き、マルスを呼ぶ。
「こちらに…」
マルスは漆黒の高級そうなトレーに赤いふわふわの布を敷き、その上に8つの指輪を置いて持ってきた。
リリウムは指輪を取り、ゲンゲ達に1つずつ手渡していく。
「これは?」
見た目はなんの変哲もない、普通の指輪だった。
「その指輪には『メッセージ』の魔道が組み込まれています。その指輪を使えば、遠く離れた者同士も話しをる事ができるのです。また、指輪には固有の識別魔導も組み込んでいますので、話したい人とだけ話す事もできます。みなさんはその指輪でお互いを助け合い、貴族の皆さまの力になって下さい」
「ははぁ。ありがとうございます」
コーナス達は受け取った指輪をはめ、担当する貴族の元についた。
コーナス達を従えた貴族たちは住人達への説明と、与えられた仕事を行うため自分の都市へ帰って行った。




