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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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ルドベキア王国の戦い方

「まず、みなさんにお聞きします。今、わたし達が抱えている問題とはなんでしょうか?」

リリウムは主達をぐるりと見て問いかけた。


主達は思い思いにしゃべりだす。

「やはり、ジギタリス帝国に支配されていることでしょうか?」

「いや、いつ殺されてもおかしくない状況であることだ」

「ヤツらに勝てないこと?」

「オレたちが弱い事が問題だ」



リリウムは主達が一通り発言したのを見てから口を開いた。

「みなさんが仰った事、すべてに共通する事があるのです」


「共通すること…?」

主達はリリウムの言葉を待つ。


「わたし達、魔界に住む者はジギタリス帝国に『生かされている』ことです」


「生かされている事?どう言う意味だ?」

グニーは腕を組みリリウムに質問する。


「本来、わたし達は『生きる』ため生きるのです。それは皆が自由で、心から笑い、時に戦い、そして尊厳ある死を迎える。それが『生きる』なのです」

リリウムは拳を握り、訴えるように話す。


「しかし、今はどうでしょう?ジギタリス帝国に従い魔石を集め、数が足りないと殺される。抵抗すればコロニー全体が皆殺しとなる。そんな状況で『生きる』事は出来ていますか?悔しいですが、わたし達はジギタリス帝国に『生かされている』のです」

リリウムは唇を噛み悔しさを堪えている。


「その通りだ。オレたちは『生きる』為に生まれ、そして誇りある死を迎えるのだ」

グニーはテーブルに拳を叩きつける。


「しかし先程も話しましたが、例えわたしの使者達と主さま達が力を合わせも、武力ではジギタリス帝国には勝てないでしょう。それほどまでにジギタリス帝国の技術力と統率された武力は強いのです」

リリウムはそこまて一気に話すと、水を口に含み喉を潤す。


大広間は水を打ったように静まり返っていた。


「さて、わたし達は魔界の者全員が『生きる』為に、この問題を解決しなければなりません。その方法は『武力』以外でジギタリス帝国と戦い勝つことなのです」

リリウムは不敵な笑みを浮かべて主達を見る。


「武力以外で戦うとは?」

クラーキアが思わず声を出してしまい、慌てて口を手で塞ぐ。


「クラーキア、構わぬぞ。(わたくし)は其方の発言を許す」

クレアはクラーキアをチラッと見て、それだけ言うとリリウムの方に向き直る。


「はっ、ありがとうございます。リリウム女王さま、私はクラーキア、クレアお嬢さまの従者でございます。恐れながらご教示頂きたい。武力以外の戦いとは一体どのような戦いなのでしょうか?」


「はい、それを説明する前にわたし達の強みをお話しさせて頂きます。実は、ジギタリス帝国の者は魔石の見分けが出来ないのです」


「それは本当ですか?」

クラーキアや魔界の者にしてみれば、魔石は魔力を帯びているため一目瞭然で見間違う訳がないのだ。



「はい、当時わたしは何度もジギタリス帝国に足を運び、現状を少しでも良くしようと総督に掛け合っていました。ある日、魔石を積んだ荷台が崩れ地面にばら撒かれてしまったのです。わたし達は慌てて魔石を拾い集めましたが、ジギタリス兵達は一切手を出さなかったのです」

リリウムは皆が話しについて来ているか、表情を見て確認すると続きを話しだした。


「数日後、不審に思っていたわたしは、たまたまそこに居たジギタリス兵に聞いたのです。すると、兵は『我らは魔石と普通の石の見分けはつかない。魔石に普通の石が混ざるとマズイだろ?』と笑っていたのです」


「そうだったのか!そう言えば、わたしが主をしている頃、似たような事を聞いたような。たしか、ジギタリスには魔導が無いので、魔力を感知できないとか…?」

クラーキアは以前の記憶を呼び起こし話す。


「恐らくクラーキアさまの仰るとおり、ジギタリスの者達は魔力を感知できないのでしょう。過去の強者との戦いを聞いていると、そんな感じがありました」


「それで、その魔石を見分けられない事が、どうしてオレたちの強みとなるのだ?」

グニーは静かに問う。


「はい、それにお答えする前に皆さまはご存知でしょうか?ジギタリス帝国はなぜ魔石を集めるのか?そして、魔界を襲撃した理由を」


「確か、ジギタリス帝国は深刻なエネルギー不足だとか聞いたような?」

グニーは過去の記憶を引っ張り出すが、そこが限界だった。


「そうです。ジギタリス帝国は今、深刻なエネルギー不足なのです。そこで新たなエネルギーとして目をつけたのが魔石でした。実は、ジギタリス帝国は過去に魔界にやって来て、大きなコロニーに魔石の取り引きをしたいと使者を送り交渉に来ていたのです」


「ええ!?」

主達はみな驚き、立ち上がってしまう者までいた。


「そして、そのコロニーの主はジギタリス帝国の使者を殺害し言ったのです。『欲しいなら力で奪え』と」

リリウムは俯き、一息ついて続きを話し出す。


「これは、ジギタリス帝国の理不尽な襲撃ではなかったのです。魔界という世界が産んだ災害だったのです」


「そんな事があったとは…」

主たちは沈黙してしまう。


「さて、そこでわたし達の強みの話しです。ジギタリス帝国は魔石が必要ですが、見分けはできません。しかし、魔界に住む者なら誰もが容易に見分ける事ができます。つまり、わたし達が見分けないとジギタリス帝国は魔石を手に入れる事ができないのです」

リリウムはフンスと鼻から息を吐く。


「つまり?」

クラーキアはイマイチ理解が出来ずにいる。


「つまり、ルドベキア王国は正式にジギタリス帝国と魔石の取り引きをするのです。もちろん対等の立場で!そうする事で、わたし達はジギタリス帝国から利益を得る事ができます。利益とは金銭だけでなく、技術や知識などわたし達が持っていない物を得ることができるのです。そして魔界の住人達は、同じ魔石の採掘作業をしていても、それは『強制』ではなく生きるための『手段』になるのです」

リリウムは拳を握り熱弁する。


「そのために皆さまとルドベキア王国として意思を統一し、ジギタリス帝国と対等に話し合うのです。それこそがわたし達の『戦い』なのです」

リリウムは熱く、とても熱く語っていた。

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