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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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魔界のトップ会談

大広間に入ると、長机がロの字形に並べられていた。

まだ誰も来ておらず、机と椅子が並べられているだけだった。


「ついに始まるのですね…」

あたしは誰にともなくつぶやく。


「そうね…」

ミモザも何が思うところがあるようで感慨深く部屋を見ていた。


「さぁ、オレ達はこっちだ」

ゲンゲの誘導に従い、大広間の一番奥に並んでいる椅子の前に立ち、主たちが入って来るのを待つ。


一番最初に入って来たのはゴデチアだった。

ゴデチアはすでに汗をかき、何故か息が上がっているようだった。部屋の奥に立っているチカム達を見た途端、「あぅっ」と声を漏らし股間を押さえていた。


「…なにアレ?」

あたしは嫌悪感を隠せず顔に表してしまう。


「ルビアさまぁ、その顔、怖いですよぉ」

シオンにコソッと指摘され、慌てて表情を隠す。



少し離れた所にいるチカムはニヤニヤし、ヒカムは注射を打つようなゼスチャー、キカムはカニのように指をチョキチョキしている。


ゴデチアはますます汗をかき、小さくなって自分の席に着いた。


しばらくするとデニアとクラーキアを従えたクレアが入って来た。


「え?クレアさん?」

あたしはキョトンとしていると


「クレアさん、主になっちゃったの…」

ミモザが耳打ちしてきた。


「ええぇ!?」

思わず声が大きくなり、慌てて手で口を塞ぐ。


「元々、クラーキアさまはクレアさんとお知り合いだったそうで、今回のお話しをしに行った時にクラーキアさまが懇願されたそうよ」

「そうなんですか。それでセロシアさんはお疲れになっていたんですか?」

「あ、それは別。クラーキアさまの所に行くまでにいろいろあったみたい…」

「いろいろですか…」

あたしは以前アナナスさまがクレアさんに振り回されていたのを思い出し、セロシアさんの苦労が少し分かったような気がした。


その後は、グニーさまや他の主達が部屋に入ってくる。ゴデチアさま以外は、みんな従者を連れており席に着いた主達の背後に凛々しく立っていた。


主達が席に着いたのを見計らうかのように、ティモルとフォセラが冷たい飲み物を主達に配っていく。

ティモルがゴデチアに飲み物を渡す時、一瞬ゴデチアの顔がいやらしく崩れかけるが、チカムが咳払いした途端に真っ青になりまた小さくなってしまった。



「ゴデチアさまって、なんであんなにビクビクしてるの?」

あたしはミモザにコソッと聞いてみた。


「…ルビアちゃんは知らなくていい事よ」

ミモザはゴデチアを汚物を見るような目で見ていた。



主のみんなに飲み物が配り終わる頃、扉が開きリリウムと執事のマルスが入って来た。

リリウムはあたし達の前に立ち、集まった主達を見渡して微笑む。

「各コロニーの主さま、この度は我がルドベキア王国までご足労いただきありがとうございます。わたしがルドベキア王国、女王リリウムです。よろしくお願いします」


リリウムは微笑みながらも、威厳を保ったまま挨拶をしていた。


「リリウム女王さま!」

突然、ゴデチアが立ち上がり声を上げた。


「え?! は、はい!」

リリウムは思わず素が出てしまった。


「チッ」

チカムが舌打ちしてゴデチアを睨むと、「ヒっ」と小さく声を出して怯えるゴデチア。


「ん、コホン…」

リリウムは軽く咳払いして自分をリセットする。


「失礼しました。ゴデチアさま、なんでしょうか?」

リリウムは改めてゴデチアに問いかけた。


「は…はい、突然声を上げ申し訳ありませんでした。わたしゴデチアはリリウム女王さまの臣下として忠誠を誓います。いや、誓わせて下さい。お願いします」

ゴデチアは深々と頭を下げる。


「え?まだ、何もお話ししていませんが…?」

「いえ!大体の内容は頂いた親書と使者さまにお聞きして理解しております。わたしはリリウムさまのお考えに大変感動したのです」

ゴデチアは頭を下げたまま、大声でまくし立てる。


「あ… え…」

リリウムは予想外の事で戸惑っていると、マルスが「リリウムさま!」と、耳打ちしてリリウムを正気に戻す。


「ゴデチアさま、ありがとうございます。それでは、これからはルドベキア王国の一員として共に戦いましよう。よろしくお願いします」

リリウムはニコっと微笑むと、ゴデチアに席に座るように促した。


ゴデチアは大きな仕事をやり遂げたように、席に座ると深くため息を吐いた。



ゴデチアが席に座るのを確認して、リリウムは口を開く。

「こちらの使者からある程度の説明はあったかと思いますが、改めましてわたしからご説明させて戴きます」


グニーは小さく手を上げて発言の許可を取る。


「はい、グニーさま。なんでしょうか?」

「リリウム女王さま、先に確認させて頂きたい。ルドベキア王国の目的はジギタリス帝国から魔界を取り戻す事だと聞いているが間違いないか?」

「はい、その通りです」

「それは、ここに集まった全員でヤツらに攻撃する…と、言う意味か?」

「いいえ。皆さまもご存知のようにジギタリス帝国に武力で立ち向かっても敵わないでしょう。ヤツらは個体では弱いのですが、集団で行動する事で恐ろしい力を発揮します。また、ヤツらの技術力は高く、私たちでは敵わないでしょう。かつての魔界の強者達のように…」

リリウムは少し俯き、ジギタリス帝国の力を認める。


「ならば、どうやって戦うと言うのだ?」

グニーは静かに質問を続けた。


「はい、『戦い』とは『武力』だけではないのです。それを今からご説明させて頂きます」

リリウムは不敵な笑みを浮かべていた。

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