ルドベキア王国の第一歩
あたし達はリリウムのコロニー『ルドベキア王国』に帰ってきた。とは言っても、見た目は何もかわっていないのだけど…
あたしは門番さんに軽く挨拶してから、グニーをリリウムの屋敷に案内する。
リリウムの屋敷に着くと、屋敷の隣に新しい建物が建っていた。
建物は2階建で屋敷を旅館と表すなら、新しい建物は見た目が控えめだが、体育館くらい大きなペンションって感じだった。
新しい建物の前には武装した屈強なオニの男が2人立っており、こちらに気がつくと片膝をつき頭を下げる。
「グニーさま、ようこそおいで下さいました。ルビアさまもご無事でなによりです」
「うむ。リリウムさまはこちらか?」
グニーは短く問う。
「はっ。入口に案内の者を待たせております。どうぞお入り下さい」
男達は頭を下げたまま答えていた。
グニーはそのまま建物に入って行くので、あたし達も後ろをついて行くように建物に入っていった。
入口を潜ると広いロビーがあり、休憩用のソファーや小さなテーブルがいくつか置かれていた。
ロビーの中央には執事のマルスが姿勢良く立っており、グニーを出迎えていた。
「ようこそグニーさま。私は当家で執事をしておりますマルスと申します。この度はルドベキア王国までお越し頂きありがとうございました。この建物は皆様と話し合いをする為に建てたものでございます。一階が大広間、2階にみなさまのお部屋を用意しております。お疲れでしょうから少しお部屋でお寛ぎ下さい」
マルスは丁寧にお辞儀をして、建物について説明した。
「あぁ、構わない。まずはリリウムさまにご挨拶させてくれ。部屋には荷物だけ置かせてくれればいい」
グニーはそう言うと、移動用に纏められた荷物を親指で指して見せた。
「はっ、承知致しました。では、お部屋にご案内致します。ルビアさま、おかえりなさいませ。この奥に控え室があります。みなさんそこに居ますので、どうぞそちらへ」
マルスはグニーの荷物を持ち、グニーと従者を部屋に案内した。
あたし達はロビーを抜け、少し奥へ進むと札に『大広間』と書かれた立派な扉と、その横に『控え室』と札に書かれた普通の扉があった。
「ここかな?」
あたしは『控え室』と書かれた扉をノックして、コソっと中を覗く。
部屋は少し広めの会議室のようになっており、端にテーブルが置いてあり飲み物やお菓子が置かれていた。
部屋にはゲンゲやコーナスなど、主と交渉に向かったメンバーが思い思いに寛いていた。
「あ、ルビアちゃん、シオンちゃん!」
扉から覗くあたしとシオンを見つけて、ミモザが赤い髪を揺らしながら嬉しそうに小走りでやって来た。
「ミモザさん!!」
あたしは部屋に入りミモザに抱きつく。
「ルビアちゃん、シオンちゃんおかえりなさい。ケガはしてない?大丈夫?」
相変わらずミモザはかあさまのように、あたし達を心配してくれている。
「はい。なんとかグニーさまをご案内できました」
あたしは少し得意気に報告する。
「…また、ルビアさま暴れたんですよぉ」
シオンはミモザに耳打ちしている。
「あ!暴れてなんかないもん!ちょっとグニーさまと戦っただけだもん!」
あたしが顔を真っ赤にして大声で否定すると
「また暴れたのか。グニーも大変だったな…」
と、ゲンゲやコーナス達が集まってきて笑う。
「ち、違うし!!」
控え室は一気に和やかな雰囲気になり、みんな笑っていた。
みんなの顔を見ると、誰もが達成感で満足そうな表情をしていた。が、セロシアだけは疲れ切った顔をしていた。
「ミモザさん、セロシアさんどうしたんですか?」
あたしはミモザにコソッと聞く。
「あ… セロシアさん、大変だったみたい。帰ってきた時は倒れそうなくらいグッタリしていたわ」
「ええ…? セロシアさんは、クラーキアさまと交渉しに行ったんですよね?クラーキアさまって、そんなに大変な人だったんですか?」
「ううん。クラーキアさまじゃなくて、クレアさんみたい…」
ミモザは少し困ったように笑う。
「クレアさん?あれ?クレアさんとデニアさんは?」
部屋を見回しても2人の姿はなかった。
「あー… もうすぐ分かるわ」
「え?」
あたしとシオンはキョトンとしていると、控え室の扉がノックされティモルが現れた。
「みなさま、もうすぐ会議が始まります。大広間へご移動ください」
あたし達は緊張感に包まれ、神妙な面持ちで大広間へ移動を開始した。
ついに始まる。
インクローチャー…、いやジギタリス帝国へのあたし達の反撃が始まるのだ。
これはその為の一歩なのだ。
あたしは手を握りしめ、少し緊張しながら大広間に入って行った。




