コロニー主との交渉 〜ルビア4〜
あたしはアイアンナックルをガチンと鳴らすと、凶悪な笑みを浮かべてグニーを挑発する。
「ルビア、お前からの招待状だ。始め方はお前に任せてやるよ」
グニーは首をコキコキ鳴らしながら、ニヤリと笑っていた。
「ふふふ。ありがとうございます。あっさりと死なないで下さいよ?」
「ふっ、てめぇこそ」
「はぁっ!」
あたしは気合いを入れて『ギンっ』とグニーを睨む。
あたしを中心に強烈な威圧感が広がり、闘技場を囲む結界がビキビキと音を立てヒビが入る。
(よし、ここの闘技場も同じ作りみたい)
あたしは腰を屈め、一気に大地を蹴りグニーへ突進し腹へ一撃を入れる。が、グニーの腹筋に防がれてしまった。
「へぇ、鍛えてますね」
「ふっ、いいパンチじゃねぇか」
あたしが一歩下がり、ファイティングポーズをとると、グニーも同じくファイティングポーズをとった。
「うらあああぁぁああああ!!」
「しゃああああぁぁあああ!!」
あたしとグニーは足を止め、お互いに防御を無視してラッシュを繰り出す。
お互いの拳がぶつかり、闘技場に激しい打撃音が響く。
「ルビア、なかなかやるな」
グニーはニヤリと笑う。
「グニーさま、流石ですね。では、スピードを上げますよ」
あたしが更にラッシュのスピードを上げると、グニーもスピードを上げる。
お互いの拳圧で皮膚が裂け、血が飛び散りだした。
しかし、あたしの皮膚は裂けた端から完治していき、ほぼ無傷の状態だった。
「おいおいルビア、マジか!?」
「ふふふ、あたしオニなので治るの早いんです」
「いや、早すぎだろ?」
闘技場にガギン!!と音が響き、グニーの右拳とルビアの右拳がぶつかりラッシュは止まった。
お互いが後ろに飛び、2メートルほど空けて向かい合う。
グニーは傷を舐めて、獰猛な笑みを浮かべていた。
コロニーの住人達は呆気にとられ沈黙していたが、しばらくして大歓声をあげている。
「次、いきますよ?」
ルビアは両手を胸の前で叩いて、両腕を広げ呪文を唱える。
「アイシクル・ランス」
ルビアが広げた両腕の間に10本の氷の槍が現れ、グニーに向かって射出された。
「んな!おまえ魔導も使えるのか!」
グニーは大きく後ろに飛び間合いを空け、氷の槍を回避しようとするが左足に被弾してしまった。
「ぐっ」
グニーは左足の氷の槍を強引に引き抜き、投げ捨てる。
「まだまだいきますよ」
あたしは右手を上げ呪文を唱えた。
「アイス・ストーム!」
グニーは氷の嵐に巻き込まれ、無数の氷の礫を全身に浴びる。
「ぬぅぅぅ……がぁ!!」
グニーは氷の嵐から飛び出すと、片膝をついて肩で息をしていた。
「ふふふ、降参ですか?」
「んなわけあるかっ」
グニーは立ち上がると、深く息を吸い込む。
「ふぅぅぅ。てめぇ、最高だよ」
「ありがとうございます」
「だが、ここまでだ。獣化!」
グニーは勢いよく息を吐き全身に力を込めると、白い体毛に黒い虎柄、腕と足の筋肉が盛り上がり身体がひと回り大きくなった。
顔は人から獰猛な白い虎に近づき、凶悪な牙が生えてきた。
「ええ!グニーさまって白虎だったんですか!?」
厳つい身体なのにネコ耳が可愛いなんて思っててゴメンなさい!何となく心で謝ってみる。
獣化したグニーは傷がふさがり、さっき氷の槍で貫いた左足はなんともないように見えた。
「オレが本気で戦うなんて久しぶりだ。ルビア、誇っていいぞ」
グニーは牙を剥き出し、獰猛に笑うと腰を落とし力を溜める。
「ありがとうございます。でも、まだまだこれからですよ?」
あたしは『ふっ』と息を吐き、攻撃に備えた。
「いくぞっ!しゃぁ!オラァ!!」
グニーはルビアとの間合いを一瞬で詰め、闘気を纏った正拳突きを放つ。
「あ、やばっ!」
あたしは身体を捻って回避するが、グニーの正拳はあたしの左腕をかする。
『ボンっ!』
ルビアの左腕は吹き飛び、肩から大量の血を吹き出す。
「…っ!!」
あたしは右手で無くなった左腕を抑えて、少しでも血を止める。
「よく躱したな」
グニーはニヤリと笑う。
「ふっ!ふっ!ふっ…ふっ」
ルビアは短く息をして呼吸を整えると、「はぁ!」と左腕に気合いを込める。
ズシャ!
「う… うそだろ?」
ルビアの完治した左腕を見てグニーは唖然としている。
「はぁ、はぁ、痛かったぁ…」
あたしは完治した左腕をグルグルと回し、手をグーパーして感触を確かめる。
「うん、治った」
あたしはニコっと笑う。
「はぁ?なんだよそれ!?」
グニーは軽くパニックになっていた。観戦していた住人達にも動揺が広がっている。
「あー、あたし治るの早いんです。オニだから?」
あたしは、たはははと頭を掻きながら照れ笑いしていた。
「んなわけあるかー!!」
グニーは絶叫していた。




