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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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コロニー主との交渉 〜ルビア3〜

1週間後、あたしは1()()でグニーの屋敷の前に来ていた。

グニーの屋敷を囲むように塀が建てられていた。塀の中は大きな庭園が広がり、庭園の奥に高級ホテルのように横に広がった5階建の建物があった。

屋敷の周りにはジギタリス帝国兵と同じように、アサルトライフルを装備した獣人や人種が、数名単位でまとまって警備にあたっていた。


「よし、行くかっ」

あたしが正面入口に立っている人種の警備兵近づくと、警備兵はアサルトライフルを構える。


「とまれ。何者だ?」

「あたしはルビア。グニーさまに招待状を送った者よ」

「お前が… 少しここで待て。グニーさまに確認してくる」

警備兵はアサルトライフルの銃口を下ろし、仲間の警備兵に確認しに行くように指示していた。


しばらく待つと仲間の警備兵が戻ったきた。

「こっちだ、ついてこい」

仲間の警備兵の先導であたしは庭園に入っていった。



◇◇◇◇


1週間前、あたしはあの焼肉屋に来ていた。

まだ、午前中であったため店は閉まっている。とりあえず裏手にある従業員用の出入口から声をかけると、女将さんが出てきた。


「なんだい?あんたらか。まだ店も開いてないんだ。帰っておくれ」

女将さんは不機嫌そうに言葉を投げかけてくる。


「あ、あの!少しだけお話しを聞きたいのですが…」

「あぁ?こっちには何も話しなんてないよ。グニーの所に帰んな」

「女将さん!あの、そのグニーさまの事で…」

「あぁ!!?」

女将さんの声が一際大きくなると、店の奥から静かに低い声が聞こえてきた。


「まぁ、まて。お嬢さん方、ここではグニーの話しはしない方がいいって言わなかったかい?」

店の主人だった。主人はタバコをふぃーと吐きながら店の奥から姿を現した。


「あ、ご主人。この前はありがとうございました。あの、あたしあれからいろいろ調べてみました。グニーさまは素晴らしい主だった事も知りました」

「あぁ、昔はな。あいつは変わっちまったんだ。あんたらももう、リリウムさまの所に帰りな」


「リリウムさま?」女将さんは話しについて来れず、キョトンとしている。


「あたし、このまま帰れません。いろいろ調べて思ったんです。本当はみなさんグニーさまを嫌ってないんじゃないか?って。みなさん本当は分かっているんだと思ったんです」

「分かってる?何をだい?」

「本当に嫌っているのはジギタリス帝国でしょ?でも、それを表すとジギタリス帝国兵がやって来てコロニーは皆殺しになる。だから、グニーさまを嫌う事で気持ちを誤魔化しているんでしょ?グニーさまも自分が嫌われる事で、みなさんをジギタリス帝国から守っているんですよね?」

あたしは、素晴らしい主で住人達の信頼も厚かったグニーさまが態度を一変した事に違和感を感じていた。


「………」

主人はタバコを一気に吸い、むはーっと煙を吐く。


「あの、ご主人はグニーさまと昔は仲が良かったんですよね?グニーさまとよく一緒にいたと聞きました」

「あぁ、昔の話しさ…」

「あ、あたし、みなさんとグニーさまに仲直りして欲しいのです」

「仲直り…って…」

「…実は、あたし達の本当の目的は、ジギタリス帝国から魔界を取り戻す事です。その為にグニーさまの力を、グニーさまのコロニーのみなさまの力を借りに来たのです」


「え?」

主人は咥えていたタバコをぽろっと落としてしまう。


「ほ…本気かい?」

女将さんは驚きのあまり、手が震えていた。


「はい。ですので、今のグニーさまではなく、昔のみんなに頼られているグニーさまに戻って頂く必要があるのです」


主人は新しいタバコに火をつけようとするが、手が震えてうまく点かない。あたしは指先に炎を灯し、タバコに火をつける。

「あぁ、ありがとう。ルビアさん、どうやってグニーを戻すつもりだい?」


「はい、そこでご主人と女将さんにお願いがあるのです」

あたしがお願いを説明すると…


「あ…あんた、無茶苦茶だな…。まあ、いいよ。やってやるよ」

主人は苦笑いしながら、あたしのお願いを承諾してくれた。



◇◇◇◇



あたしは警備兵に、庭園の奥にある闘技場に連れて来られた。

「そこの小屋で準備してこい」

警備兵の指差す方向に小さな小屋があった。中には机や椅子が置いてあった。

あたしはチェインメイルの上に布の服を着て、手にはとおさまのアイアンナックルを装備する。


「よしっ」

あたしは気合いを入れて小屋を出て闘技場に入る。


しばらく待つと、身長が2メートルほどの猫化の獣人が現れた。

「お前がルビアか。オレがグニーだ」

グニーは白髪で頭にネコ耳が付いており、ときおりピコピコと動く。鍛え上げられた身体から闘気が迸るような威圧感があるのに、ネコ耳のせいて少し可愛く見えてしまう。


「グニーさま、招待状お受け頂きありがとうございます。お願いがひとつあります」

「ほう、なんだ?」

「はい。あたしがグニーさまよりも強い事を住人達に知らしめる必要がありますので、住人達の観戦許可をお願いします」

「ほう、言いよるわい。もちろんだ。観戦を許可する」

「ありがとうございます」


しばらくすると警備兵に先導されて住人達が闘技場に集まってきた。


「これで満足か?思い残す事はないな?」

「はい、それではグニーさま。死んで下さい」

あたしは凶悪な笑みを浮かべ、アイアンナックルをガチンと鳴らした。

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