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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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コロニー主との交渉 〜セロシアの憂鬱2〜

オレは夢を見ているのだろうか?

なぜかクレアは主が座る椅子に座っている。

両脇にはデニアとクラーキアが、キリリっとした顔で凛々しく立っている。


…なぜ、こんな事に?



少し時間を戻す…



クレアはホールで突然叫んだ。

「クラーキア!(わたくし)だ!クレアだ!おらんのか?」


すると、屋敷の奥からドタドタとクラーキアと使用人らしき獣人達が現れた。


「クレアお嬢さま!!」

一際大きなイヌの獣人が叫ぶと、クレアに跪いた。

慌てて使用人たちも跪き、頭を下げる。


「おお、クラーキアか。元気にしていたか?」

クレアはふんっと鼻から息を吐き、クラーキアに言葉をかけていた。


「はい!クレアお嬢さま。お久しぶりです!」

クラーキアは、はっはっはっと息を吐きながらシッポを振っている。


オレはそれを見ながら、

あぁ、イヌだ… 間違いなくイヌだ…

もうすぐ腹を見せるんじゃないの?

とか、失礼な事を考えていた。


「クレアお嬢さま。今日はどのような御用でしょうか?」

クラーキアは膝跨いだままクレアを見上げている。


「うむ、クラーキア。其方は(わたくし)をここに立たせておくのか?」


「も!!申し訳ありません!お久しぶりにクレアお嬢さまにお会いできて浮かれておりました。すぐに部屋の用意を致します」

クラーキアは使用人のトップ、おそらく執事であろうイヌの獣人を叱り飛ばして部屋の用意をさせる。



用意された部屋は、クラーキアの執務室だった。

部屋の奥には黒檀であろう黒い木で作られた立派な机と、それに負けず立派な椅子が置いてある。


部屋の中央付近には来客用の机とソファーがあり、机にはお茶菓子が置いてあった。


「ささ、どうぞ。こんなソファーで申し訳ありませんが、どうぞお座り下さい」

クラーキアはヘコヘコしながらクレアに席を勧める。


「ふむ」

クレアはソファーの質をチラッと見て、まぁ、仕方ないの…とか言いながら座る。

当然のようにデニアはクレアの背後に立っている。


あいつら、おかしい。

オレは前から思ってたんだが、やっぱりあいつらは変だ。

ただの冒険者がなぜあんな偉そうなんだ?

デニアもクレアに忠実だし…

アレか?バカなのか?

それとも、どこかのお姫さま的なヤツと、騎士的なヤツか?


ぼんやり考えていると、オレは座るタイミングを逃してしまった…


しばらくするとイヌのメイドがお茶を持ってきた。

なぜかクレアだけ…


おかしいだろ?

オレは?オレもお客さんだよね?

あれ?違うのか?


「さて、クレアお嬢さま。本日はどのような御用でしょうか?」

クラーキアは、はっはっはっはっと息を吐きながら尻尾を振っている。


「うむ。デニア、アレを」

「はっ、クレアお嬢さま。こちらに」

デニアはリリウムの親書を胸元から取り出してクレアに渡す。


「クラーキア、まずはコレを読め」

クレアが机に親書を置くと、クラーキアはうやうやしく親書を受け取り中身を読んだ。



「なるほど。よく分かりました。」

クラーキアは丁寧に親書を机に置き、クレアを真剣に見つめる。


「クラーキアよ、リリウムと会い話しを聞くのだ。そして、ルドベキア王国の一員となるのだ」

クレアはふんっと鼻から息を吐く。


「クレアさま、少しだけよろしいでしょうか?」

クラーキアは少し思い詰めたような表情になる。


「どうした、クラーキア」

「はい、わたしはイヌの獣人です…」

「うむ、知っておるぞ」

「はい、わたしはクレアお嬢さまのお父上のお力により、コロニーの主となりましたが…。わたしは…イヌなのです…」

「わかっておると言っておろう。それがどうした?」

「はっ、申し訳ありません。わたしはイヌなので、1番より、2番目の方が落ち着くのです」

クラーキアは小さくなり、肩を震わせながらクレアを上目使いで弱々しく見ている。




あれ?

なんだ?この展開は?

オレは急な展開についていけず、ただ見守るしか出来なかった。



「ハッキリと申さぬか!お前は昔からそうじゃ!」

クレアがイライラしてきている…


「はっ!も!! 申し訳ありません!クレアお嬢さま

、折り合ってお願いがございます」

クラーキアは床に正座し、両手をついて頭を下げる。

いわゆる土下座だ。


「なんじゃ、申してみよ」

「はい、わたくしクラーキアには主は務まりません。わたしは誰かに仕える事が至上の喜びなのです。その仕える方がクレアお嬢さまでしたら、クラーキアは幸せであります。どうか、わたしの主人となって頂けないでしょうか?」


オレは腰が抜けるかと思うほど驚いた。

こいつ、なんかとんでもないこと言いたしたぞ!

クレアが主になるって事か?

そんな事したら、コロニーはどうなる?

わがままお姫さまが主って…

ええええ!?


オレが混乱している間にも話しは進んでいた。


「クラーキアよ、よくわかった。(わたくし)に全て任せよ。お前たちの充実した人生は、(わたくし)が保証してやろう」


「おおお!!ありがとうございます!さすが、クレアお嬢さま!これでコロニーの住人達も安心して暮らしていけます」

クラーキアはそう言うと、涙を流して喜んでいる。


「ところで、クラーキアよ」

クレアは睨むようにクラーキアを見る。


「は…はい!」

ビクッとしたクラーキアは仔犬のように小さく震えていた。


「其方、インクローチャーの悪口を言っただけで住人を捕縛しているのか?」


「イン…? え?」

「インクローチャーじゃ。其方らに魔石の採掘をさせているであろう?」

「あ! あ… はい…。ヤツらは魔石の量が少ないだけで皆殺しにやってくるそうです。ですから、絶対に逆らってはいけないのです。生きていけないので… 」

どんどん小さくなるクラーキア。


「バカ者!!」

クレアは立ち上がりクラーキアを叱責する。


「ひっ! も、申し訳ありません」

「其方は昔からそうじゃ。もっとシャキッとせんか!其方が守るべきは魔界の住民ぞ?」

「は、はい!申し訳ありません。しかしながら、わたしにはヤツらに対抗する力もなく、こうして降伏し命を延ばしている状況なのです…」

「うむ、(わたくし)に任せよ。ヤツらに力で敵わなくとも、戦う方法はある。まずは捕縛している住人達を解放するのじゃ」

クレアはふんっと鼻から息を吐いていた。


「は… ははぁ!!お前たち、早くあいつらを解放してこい!さっさと行かんか!!」

クラーキアは使用人達を住人の解放に向かわせると、クレアに平伏している。



オレはよく分からないが、クレア嬢はスゴい人なんだろう…

デニアにクラーキア…

コロニーの主になるようなヤツまでもが、クレアに忠実な僕となっている…

きっと、スゴい人なんだろう、クレアは…


オレには理解できないけどね……

まぁ、とりあえずミッションコンプリートって事でいいかな?

いいよね?

うん、いいって言って…



「セロシア、(わたくし)は少しコロニーを確認してから戻る。先にリリウムの下に戻っておれ」


「へいへい、そうさせて貰いますよ。クレア嬢…」

オレは一足先にルドベキア王国に戻り、この状況をリリウムに報告する事にしよう…

夢なら覚めないうちに…

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