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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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行動開始

「みなさん、お互いに知っている情報を共有しておきましょう」

リリウムはそう言うと、マルスに紙とペンを用意させた。


「みなさんの持っている情報は、リーダーであるゲンゲが把握しているのですか?」


「はい、各パーティが集めた情報はオレが把握しています。まとめて報告します」

ゲンゲが報告した情報は以下のようなものだった。


・ヤツらを侵略者との意味で『インローチャー』と呼んでいる

・インクローチャーは空の黒い穴を通って異世界から来ている

・インクローチャーは個体では弱いが、集団で行動する事で魔界の強者達を打ち滅ぼしてきた

・インクローチャーの武器は『アサルトライフル』と『ベレッタ』、『ナイフ』が基本である

・インクローチャーの元の世界では深刻なエネルギー不足のため、新しいエネルギーとして魔石を集めている


ゲンゲが報告した情報はマルスによって、紙に簡潔にまとめられていた。


リリウムは真剣な表情で、ゲンゲの報告を聞き終わると、少し考えて話しだした。

「なるほど、わたしが知っている情報とほぼ同じですね。少しだけ追加させてもらいます」


「彼らはジャーマンダー皇帝が治るジギタリス帝国から来た異世界者です。そして、魔界には第二皇子のロベッジが最高責任者として来ているようですが、わたしは見たことがありません」

リリウムは机の上に広げた地図の大きな丸印を指差しながら説明する。


「第二皇子ってことは、第一皇子や第三皇子とかいるのですか?」

第二皇子ってことは、最低でも第一皇子はいるわけよね。なんか子供の頃に読んだ少女漫画の世界みたい…

あたしはぼんやりと現実逃避をしていた。


「わかりません。わたしは総督としか話しをした事がないのです。総督の話す内容や、話の端々に皇帝や第二皇子の名前が出てきた程度なのです」

リリウムは頭を軽くフルフルと横に振りながら教えてくれた。


「リリウムさま、スゴいです!そんな会話するだけで相手の情報を抜き出す事ができるのですね!」

リリウムは本当に頭がいいのだなと、あたしは感心してしまった。


「え?いや、そんな… 大した事ではないです…」

リリウムは恥ずかしそうに小さくなってしまった。リリウムがヴァンパイアじゃなけれは、きっと耳まで赤くなってるだろうな…

ほんと、リリウムさまってかわいい。



「では、リリウム女王。まずは手筈通り周辺のコロニーの主に使者を出します。主達には、一度ここに来てもらう…で良かったですね?」

ゲンゲはリリウムの方を向き確認した。


「あ、はい!主の皆さんはここに集まって頂き、全員で話し合い、納得してルドベキア王国の一員になって頂きたいと思います」


7つのコロニーに向かう担当は、次のようになった。

アナナスが情報収集に行ったコロニーにはクレアとデニス、セロシア。

クレオメが情報収集に行ったコロニーは、チカム、キカム、ヒカム。

この2つのコロニーにはすでに情報収集で接触しているので比較的、交渉しやすいとゲンゲは判断していた。

残り5つのコロニーには、

コーナス、ミモザ、アキレアの3人パーティ。

クレオメ、コリウスの2人パーティ。

ルビア、シオンの2人パーティ。

アナナス1人。

ゲンゲ1人。

に分担して説得に当たることになった。

マルスは各パーティに親書を1つずつ渡していく。


「では、ルドベキア王国を除いた周辺コロニーは7つ。オレたちはルドベキア王国の使者として、主達を説得しここに集まって貰う。よいな!」

ゲンゲは全員に檄を飛ばす。


「あの…、ゲンゲはん、ちょっとだけええかな?」

クレオメは申し訳なさそうに、小さく手を上げる。


「なんだ?」


「もしもやで。もしも、主が言う事聞かんかったら、殺してそのコロニーを奪えばええ?」


「それは最後の手段だとリリウム女王は仰った。まずは説得だが、最悪の場合は力でねじ伏せろ。ただし、なるべく殺すな。生かして連れてこい」


「わかった。なるべく……やな」

クレオメは一瞬、邪悪な顔になるがすぐにいつものヘラヘラした表情に戻った。


これだ…

魔界の人は簡単に殺すとか言うし、本当に殺してしまう…

あたしは、クレオメの中に魔界の闇を見ていた。


同じようにリリウムも、それを見逃していなかった。


「クレオメ、コーナス、アナナス、ゲンゲ。あなた達は魔界の強者として有名な方々です。今から向かうコロニーの主達も、それを理解しています。親書を読んで頂ければ恐らくは誰も反抗せずに、みなさんに従うと思います。ですから、わたしの友を殺さないようにお願いします。この魔界の者は皆、わたしの友なのですから…」

リリウムは手を胸の前で合わせ、少し涙を浮かべていた。


「あ… リリウム女王さま。わかってるて、オレらは使者や。誰かを殺しに行くんやないって」

あはははと、クレオメは笑いながら部屋を出て行った。


「さぁ、シオン!あたし達も行こうか!」

「あぃー」


あたし達は親書を持ち、コロニーの主の元へ向かうため部屋を出て行った。



全員が出発し、部屋にはリリウムと執事のマルスだけが残っていた。

リリウムは窓から、ルビア達がコロニーに向かう後ろ姿を見つめていた。


「リリウムさま、遂に始まりましたね」

「そうね。やっと… やっと、わたしの夢の世界が始まるわ…」


窓には、歪んだ笑みを浮かべるリリウムが映し出されていた…

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