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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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ルドベキア王国 始動

「それでは、ゲンゲさま…」

リリウムが口を開こうとした時、ゲンゲは頭を下げたままそれを止めた。


「恐れながら、リリウム女王。わたしの事はゲンゲとお呼び下さい。わたし達は女王の下臣となりました。呼び捨て頂くようお願いします」


「あ、はい…。ん…。コホン…。ゲンゲ、みなさん、まずはわたしと共に生きてきた執事達を紹介します」

リリウムはそう言うと、手を叩き執事達を呼んだ。


しばらくすると、ドアがノックされ声が聞こえてきた。

「リリウムさま、マルスです」


「マルス、入りなさい」

リリウムが入室を許可すると、ゆっくりとドアが開き玄関で出迎えてくれた燕尾服を着た執事のマルスと、後ろにメイド服を着た女性が2人立っていた。


「リリウムさま、ティモルとフォセラを連れて参りました」

マルスは丁寧にお辞儀し、後ろでメイド2人もお辞儀していた。


「みなさん、彼らはわたしの眷属で、執事のマルスとメイドのティモルとフォセラです」

リリウムはマルス達の横に立つと、あたし達に向かいマルス達を紹介してくれた。


「みなさま、当家で執事をしておりますマルスです。どうぞ、よろしくお願いします」

金髪を短く刈りそろえ、黒い燕尾服を着た美青年はニコっと笑いお辞儀をする。


「わたしはティモル、このフォセラの姉です。よろしくお願いします」

ティモルは明るい茶色のセミロングの髪を首の後ろ辺りでまとめている。着ているメイド服は、黒を基調としたゴスロリ風で、酒場にいたステラリアのメイド服に少し似ていた。


「フォセラです。よろしくお願いします」

フォセラは真っ白な髪を肩口辺りで切り揃え、ティモルと同じメイド服を着ていた。

3人ともリリウムと同じく、猫化の動物のような縦長の瞳孔をした、血のように赤い目をしている。


3人が挨拶し終わるとリリウムが口を開く。

「この3人は私が生まれてから、ずっと一緒にいるのです。元々はわたしと同族だったのですが、わたしの血を与えて眷属になっても自我を失わなかった者なのです」


「わたし達はリリウムさまの眷属となる事で、我々の悲願であるデイウォーカーとなる事ができました。あの恐ろしい太陽を克服したのです!……あ、失礼しました」

マルスは力強く語った事に気がつき、深々を頭を下げて一歩下がる。


「みなさん、今日からこの屋敷にお住まい下さい。身の回りのことはマルス達にさせますので、みなさんは魔界統一に集中して下さい」

リリウムがそう言うと、マルス達は丁寧にお辞儀をした。


「リリウム女王。ありがとうございます」

ゲンゲが代表してお礼を述べる。こうして、あたし達はリリウム女王の屋敷で生活する事になった。



◇◇◇◇



翌日、屋敷に荷物を運び込んだあたし達は、さっそく広めの部屋に集まり、今後の活動の打ち合わせを行っていた。


ゲンゲは机の上に、以前ルビアが説明に使った地図を広げた。地図にはインクローチャーの都市を表した大きな丸印と、その周りに8つの丸印が書いてある。


「前にルビアが説明したが、この大きな丸印がインクローチャーの都市だ。その周りを囲むようにある丸印が魔石を運び込んでいるコロニー、つまりインクローチャーに降伏したコロニーだ。まずは、この降伏したコロニーの主達へ、リリウム女王のもとルドベキア王国の建国を宣言する。そして、ルドベキア王国の傘下に入ることを説得するのだ」

ゲンゲは全員の顔を見渡しながら説明する。


「ゲンゲはん、説得てどうやるん?」

クレオメが小さく手を上げて質問する。


「うむ、リリウム女王に親書を書いて頂いた。その親書を持って、ルドベキア王国の使者としてコーナスとアナナス、それにクレオメに行ってもらう」

ゲンゲはコーナス達に指示すると、マルスは用意された親書を待ってきた。


クレアが机をバンッと叩いて立ち上り叫ぶ。

「ゲンゲさま!(わたくし)も使者としてコロニーに行きますわ!(わたくし)の言う事を聞く主が1人おりますの」


「クレアお嬢さま、このデニス、お供させて頂きます」

いつもの様にデニスがクレアに頭を下げる。


「クレア、出来るのか?」

ゲンゲはジロリとクレアを見る。


(わたくし)に任せなさい」

クレアは、ふんっと鼻から息を吐く。


「待て待て待て待て待て!! クレア!お前分かってるのか?これはいつものクエストとは違うのだぞ?」

アナナスは大慌てでクレアを制止しようとする。


「うむ。今は人手が欲しい。必ず成功させるならクレア、お前に任せよう」

ゲンゲはクレアと握手をして、不敵な笑みを浮かべる。


「えっ!ちょ!ゲンゲさま?」

アナナスは軽くパニックに陥っているようだった。


「アナナス、パーティのメンバーを信じる。それもリーダーの役目だぞ」

ゲンゲはアナナスの肩を叩き、豪快に笑った。


「うう… 嫌な予感しかしない…」

ゲンゲはガックリと肩を落とし、セロシアのもとに歩いて行き、親指でクレアを指してつぶやくように言った。


「セロシア、頼む…」

「はぁ?ちょ!アナナスさん!?」

「もう、後戻りはできん…」

「マジですかーーーーー!!」


セロシアの悲痛な叫びが部屋に響いていた…



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