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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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リリウムの戦い方 後編

リリウムは少し沈黙した後、ゆっくりと話し出す。

「ゲンゲさま、まずは質問させてください。この戦いにおける『勝利』とは、どうお考えでしょうか?」


「『勝利』ですか…。先程お話ししたように、これまではインクローチャーを殲滅し、魔界を取り戻すこと…でしょうか? しかし、今はそれすら分からなくなっている…」

ゲンゲは俯き頭を横に振る。


「わたしの考える『勝利』とは、『生きる』ことです。『生かされる』ことではなく、『生きる』こと。この2つは似ているよですが、全く違うものなのです」


「と、言いますと?」


「はい正直言うと、今のわたし達は『生かされている』のです。コロニーの住人達を見て頂いたでしょうか?みんな笑っています。しかし、それは心から笑っているのではありません。いつ、わたし達は殺されるのか分からない、いつ殺されてもおかしくない、そんな状況で命を繋いでいるだけなのです」

リリウムは眉間にシワを寄せ、手を握り締める。


「うむ、それは魔界に住む全員が同じ状況であるな…」

ゲンゲも鎮痛な面持ちになる。


「わたしは降伏した後、何度もヤツらの都市へ行き、もっとも力を持つ者、総督と呼ばれる者へ、もう誰も殺さないで欲しいと懇願しました。その時、思いがけない話しを聞いたのです」


「思いがけない話しですか」

ゲンゲだけでなく、ここに居る全員がリリウムの話しの続きを待つ。


「総督はこう言ったのです。『私達は殺したくて殺すのではない。欲しいなら力で奪え、それが魔界の唯一のルールだと教えられたのだ。私達はそのルールに従っているだけだ』と」


「インクローチャーがなぜ魔界のルールを知っているんだ!?」

ゲンゲ達は驚愕していた。


「わたしも驚きました。なぜそれを知っているのか?この襲撃の裏には何があったのか?そう聞かずにはいられませんでした」


「総督は答えました。『以前、魔石の取り引きをお願いしたいと、一番大きなコロニーへ使者を送った。しかし使者は殺され、返ってきた返事は先程のものだった。だから、私達は魔界のルールに従い奪う事にした。しかし、先程も言ったように殺したくて殺すのではない。降伏するのであれば、私達はあなた達を殺すことはしない』」


「そ…、そんな…」

あたし達は言葉に詰まっていた。


「そうです。これはヤツらの理不尽な襲撃では無かったのです。魔界という世界が産んだ災害だったのです」

リリウムは空中を睨むように見つめる。


リリウムはゲンゲを見て口を開く。

「今のままの魔界ではダメなのです。同じ悲劇が繰り返される事が目に見えています。力ではなく、全てのコロニーが協力し助け合う、そんな新しい魔界を作らなければならないのです。」


「あ…新しい魔界…」

あたしはつぶやき、『新しい魔界』という言葉を噛みしめる。


「わたしは考えました。魔界という大きなコロニーを作るのです。まずは各コロニー全体を代表する主を決め、各コロニーの主で話し合い政を行う。そうする事で魔界全体を統一し、ヤツらと対等に話し合い、取り引きを行うのです。そうすれば誰も殺されず、お互いが幸せになれるはずです…」


「魔界を1つのコロニーにですか…」

コーナスはアゴを撫でながら考えている。


「しかし、わたしには各コロニーの主達をまとめる力がありません。今の魔界はまだ力を持たない者は、意見すら言えないのだから…

そんな時、ルビアさんとシオンさんが現れたのです。

彼女達は強い、そしてなにより優しい。その彼女達の仲間なら今の魔界を統一できる存在だと確信したのです」

リリウムは全員の顔を見て微笑んだ。


「なるほど、『今の魔界』ならオレ達で1つにできるかもしれないな…」

ゲンゲは、ふむ…と納得している。


「はい、わたしと一緒に『新しい魔界』を作りましょう。そして、ヤツらと対等に話しができるようになりましょう」

リリウムはゲンゲの手を握り、血のような赤い目でゲンゲを見つめた。


「ひとつよろしいでしょうか?」

コーナスが、そう声をかけるとリリウムとゲンゲはコーナスを見る。


「なんでしょうか?」

リリウムはゲンゲの手を離しコーナスに向き合い、ニコっと微笑む。


「魔界を統一とは、どのように行うのでしょうか?」


「そら、主を殺してコロニーを奪えばええやん」

クレオメは、なにを当たり前なことを?と、言いたげな顔でコーナスをみる。


「クレオメさま、それは最後の手段としたいと思います。まずは各コロニーの主を集め話し合いを行い、みんなの協力を得ていくことが理想です」


「全コロニーの主を集めるやて?魔界にいくつコロニーがあるかもわからんのに?」

クレオメは目を丸くする。クレオメには非現実的にしか聞こえないようだった。


「はい、そのための計画をいまからご説明しますね」

リリウムは全員を見渡すと、ニコっと笑った。

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