表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
52/148

コロニーでの情報収集 〜リリウム〜

リリウムは魔界でも珍しいヴァンパイアである。

ヴァンパイアは不死なため、積極的に数を増やす必要がないこともあり、魔界でも絶対数が少ない種族であった。


そんなヴァンパイアのリリウムは同族の中でも『変わり者』で有名で、ほとんどのヴァンパイアが同属だけて行動するのに対し、リリウムは『限りある命が美しい』と言い、さまざまな種族の人達と仲良くしていた。

そうやって何千年も生きてきたリリウムの周りには、いつしかリリウムを慕うもの達が集まり小さなコロニーが出来上がったのだ。


そんなリリウムだから、夜になると人が集まる酒場によく現れるのだった。


「リリウムさま、いらっしゃい。今日はルビアさんとシオンさんがきてますよ」

ステラリアは、リリウムに赤い飲み物を手渡しながら話しかける。


「ありがとう。ルビアさん、シオンさんこんばんは。お二人が来ている事は知っていたわ。だって魔石採掘から帰ってきたアオイが、ずーーーーっとソワソワして、早く帰りたそうにしてたもの」

ふふふとリリウムは笑うと、赤い飲み物を一口飲んで、ほぅと息を吐く。


「んなっ!」

アオイは真っ赤になって、バーラを一気に飲み干すとバーラのおかわりを取りに行ってしまった。


「お久しぶりです。リリウムさま。その飲み物お好きですね」

この赤い飲み物は、『バド』と言う赤い果物を発酵させたワインのようなお酒だった


あたしは初めて見た時、リリウムは『ヴァンパイア』で『赤い液体』を飲んでるから『血』だと思いビックリした。

しかし、ヴァンパイアが血を飲むのは、繁殖の為だけであり、普段は普通にパンや肉などの食事をしているのだ。そもそもヴァンパイアは不死であるため、めったに繁殖はせず血を飲むのは、よほどその人との子供が欲しいと願った時だけらしい。


「わたし、バドのお酒が大好きなのよねぇ」

リリウムは頬に手を当て、美味しそうにバドのお酒を飲んでいた。


「ところで、ルビアさん。魔界の旅は順調?」

リリウムはカウンターに座ると、頬杖をつきルビアを見る。


「まだ、行けてない場所もありますけど、結構あちこち見ることができました」


「そう、旅のお話しを聞かせてくれないかな?」

リリウムは少し色っぽい目でルビアとシオンを見ていた。


「はい」

ルビアは、あちこちのコロニーが破壊されている事、残っているコロニーは魔石採掘を強制されている事、生き残ったコロニーの住人は隠れるように生きている事などを話した。


「そう。もう前のような自由な魔界は無くなってしまったのね…。わたし達もアイツらに魔石を渡す事で、殺されずにいるけど。まるで奴隷のようだわ。わたしは死なないだけで、力は無いからみんなを守る事もできないし…」

リリウムは悲しそうに俯くと、ステラリアは優しく微笑みリリウムに語りかけた。


「リリウムさま。わたし達はリリウムさまのおかげで今日まで生きてこれたのです。リリウムさま1人ならあんな奴らに負ける事はないでしょう。でも、リリウムさまは奴らに降伏する事で、あたし達を守ってくださったことを、みんなわかっていますよ。ほら、見てください。リリウムさまのおかげで、みんなこんなに笑っています」


「ステラリアさん、ありがとう…」

リリウムは酒場のみんなの笑顔を見て微笑んでいた。


ルビアは小声でリリウムに話しかけた。

「リリウムさま、少しお時間頂けないでしょうか?」


「なぁに?」


「いえ、ここでは…」

ルビアは周りの人をチラッと見る。


「んー、ステラリアさん。奥の個室お借りしていいですか?」


「あ…、はい、どうぞ」

ステラリアはマスターに個室を使用する事を伝え、人払いをする。


あたしはシオンとリリウムと個室に入り、誰も居ない事を確認して話しだした。


「リリウムさま、実はあたし達はヤツらに反撃をしようと準備をしています」


リリウムはルビアの態度で察しはついていたようで、『やっぱり…』とつぶやいていた。


ルビアの旅はその為の下準備であり、ゲンゲや、竜の牙など仲間達とインクローチャーを倒すべく行動している事を説明した。


「ルビアさん達の事はよくわかりました。ですが、あのマヴロやヘレボルスでも勝てなかった奴ら相手にどう戦うのですか?」


「はい、その為にまずインクローチャーを調べるつもりです」


「つまり、まだ戦い方も決まっていないのね?」

リリウムは血のような赤い目でルビアを見る。


「…はい、その通りです」

ルビアは少し俯き答えた。


「では、インクローチャーをどうやって調べるのですか?そして、何を調べるのですか?」


「あたしとシオンが、インクローチャーの都市に潜入し、戦力や敵の数を調べるつもりです」

あたしはゲンゲの作戦を思い出しながら説明した。


「ルビアさん、それはあまりにも無謀です。勇敢と無謀は違うのですよ?命があるから戦えるのです。そして、戦い方は武力だけではないのです」

リリウムはルビアの両手を握り、静かに語りかける。


「でも、もうあたし達には戦うことしか…」

ルビアは少し涙目になりながらリリウムを見つめる。


「ルビアさん、この戦いの『勝利』は『生きること』です。『生かされること』でもなく、まして『戦って死ぬこと』ではありません。すでに、現状は『生かされている』ので敗北していますが…。しかし、わたし達はここらか『勝利』を掴み取らなければならないのです」

リリウムはルビアとシオンの手を握りしめる。


「ルビアさん、わたしに考えがあります。まずは、ルビアさんの仲間をこのコロニーに集めてください」

リリウムはニコッと微笑んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ