ルビアとオオカミ
シオンが家族となり5年が過ぎた。
いつものように、あたしは町の子供たちと森に来ていたが、めんどくさいことに巻き込まれていた。
目の前には赤い目が4つあり、額からツノを生やしたオオカミの群れがいる。
町から少し離れた森の入り口であたし達はオオカミの群れに囲まれていた。
「ルビアさまぁ、子犬が集まってきましたねぇ…」
少し日焼けした肌で黒髪をショートカットにした、そら豆のような目をしたシオンが話しかける。
「もう、めんどくさい。シオンどうにかしてよ」
ルビアは金髪の髪を適当に後ろでまとめており、ため息をつきながらダルそうにしている。
「シオンもめんどくさいですよぉ。あなた達、追っ払ってきて」
シオンの後ろに隠れている12〜13歳くらいの男の子3人に言い放つ。
「え! ムリムリムリムリ!! 僕たちじゃ殺されますよ!」
男の子3人は青ざめた顔をすごい勢いで横に振り拒否している。
「ルビアさま、ムリだそうです。ちなみにシオンもムリですぅ。そんな気分ですぅ」
「えー!マジで? むー」
ルビアは頬を膨らませる。
ルビアはしぶしぶ一歩前に出る。
オオカミは体高が1メートルほどあり、要所要所の筋肉が盛り上がっている。
口には大きな牙が上下2本ずつと、たくさんの尖った歯が並び獲物を早く食べたいとヨダレが垂れている。
対するルビアは身長120㎝ほどで、見た目は華奢な身体をしている。色白で整った顔は目が大きく、まつげが長い。鼻の下には赤い唇が色っぽく付いている。
「もう、こいつら飽きたんだけどなー」
ぶつぶつ言いながらルビアはオオカミの群れの方向へ歩き出した。
「ぐるるるぁぁぁぁ!!」
4頭のオオカミ達が一斉にルビアへ飛びかかる。
飛びかかってきたオオカミがルビアに噛み付く瞬間、「ぎゃんっ!」と声をあげ、森の方へ吹っ飛んでいった。
側から見ればルビアはただ歩いているだけだ。
ルビアは何事もないように群れのリーダーと思われる一際大きなオオカミに向かって歩いている。
オオカミ達は次々とルビアに襲いかかるが、ルビアに牙が届く前に、先程のオオカミと同じく「ぎゃんっ!!」と声をあげて吹っ飛ばされる。
ルビアがリーダーらしきオオカミを『ギンッ』と睨む。
瞬間、森中の鳥たちが一斉に飛び出して逃げていった。
一瞬、リーダーらしきオオカミは後退りし
「ウォーーン!!」と遠吠えを上げるとオオカミの群れは森の奥へ逃げて行ってしまった。
「はい、終わったよー」
ルビアは振り向いてシオン達に声をかける。
「あー、怖かったですぅ」
シオンがわざとらしく両手で体を抱きしめてクネクネしている。
「ところでルビアさまぁ、あの吹き飛んだ子犬に何したんですかぁ?」
「え? えーと、裏拳?」
「さすがルビアさまですねぇ。全然見えませんでしたぁ」
うへへへとシオンは笑っていた。
男の子3人は腰を抜かしたのか、その場にへたり込んでいた。
「さぁ、この辺の薬草集めるんでしょ?早く集めて帰りましょう」
ルビアは男の子たちを立たせて、ほらっ!と急かしていた。
「ルビアさま、シオンをムシしないでぇ」
シオンはまだクネクネしていた。
「はいはい、シオンも早く薬草集める!」
「えー、めんどくさーい」
文句を言いながらシオンも薬草を集めだした。
「ルビアさまって、すごいですね! どうしてそんな強いのですか?」
2本の赤いツノを生やした男の子が話しかけてきた。
「それはね、わたしは、生まれる前は特別なエビだったのよ。特別なエビは最強になる運命なのよ!」
よく分からない理屈を言い出す。
「出た!ルビアさまのエビ話し!」
緑色の顔の男の子が囃立てる。
「ホントだって!ねぇ!シオン」
「えー、たぶんそんな感じかもぉ?」
シオンはやる気のない声で返事をする。
「あはは、ルビアさまは魔王さまの娘だから強いに決まってるんだよ」
緑色の顔の男の子が、赤いツノの男の子に説明する。
「もう、誰も信じてくれないんだから!」
ルビアは頬を膨らませて拗ねてしまった。
「まぁまぁ、ルビアさま。薬草も集まりましたし帰りましょう」
見た目は人間と変わらない男の子がニコニコしながらルビアを慰めて、子供たちは町へ帰って行った。