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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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コロニーでの情報収集 〜カムカム三姉妹〜

―――(暗闇の道化師)―――


オレ達は小高い丘の上から、拠点に一番近いコロニーを見ていた。


「さぁ、いつものように頼むで、カムカム三姉妹」

クレオメはチカム達に向かって親指を立てる。


「その呼び方やめぇってゆうてるやろ!」

黒髪、黒目、ショートカットのチカムはクレオメの胸を手の甲で『ビシッ!』と叩く。


「なはははは。オレらはココで待機しとるからな。なんかあったらいつもの合図してくれや。オレら、速攻で助けに行くで。なぁ!コリウスはん」

クレオメは今度はコリウスに向かって親指を立てる。


「………」


「いや!なんか言うてや!カムカム三姉妹が不安がるやん!」

クレオメはコリウスの胸を手の甲で『ビシッ!』と叩く。


「もう、ええから。ほな、あたいら行くで」

チカムは呆れた目でクレオメを見ると、キカムとヒカムを連れてコロニーに向かって行った。


「ほらぁ!コリウスはんがリアクションせーへんから、チカムはん、怒ってもたやん。コリウスはん恥ずかしがりやねん。堪忍やでー。情報収集、頼むわなー」

クレオメは両手をブンブンと振りチカム達を送り出す。


「あー、はいはい…」

チカムは面倒くさそうに右手をひらひらさせて応えていた。



◇◇◇◇



入口には門番が立っており、門は閉められいた。

チカム達は少しフラつきながらコロニーの入口に歩いて行った。


「はぁ、はぁ、やっと着いた…」

チカムは掠れた声でつぶやく。


「おい、お前達、大丈夫か?」

門番はチカム達に駆け寄ると、腰にぶら下げた水を手渡した。


「ありがとうございます…。ほら、ヒカムお水よ」

チカムはヒカムに手渡された水を渡す。


「あ…あり…が…と」

ヒカムは手渡された水を飲み、キカムへ渡していた。



「ありがとうございます。あたい達は森の向こうのコロニーからやって来ました。ここに入れて頂けないでしょうか?」

チカムは門番に擦り寄り、膝をついてお願いする。


「悪いがオレでは判断できないんだ。とりあえず、あっちに小屋があるから、そこで休みなさい」

門番はそう言うと、チカム達を門番の休憩場所である小屋に案内した。

小屋に入ると小さな部屋で休憩中の門番が2人、椅子に座っていた。


「おい、この子達はどうしたんだ?」

休憩中の門番が声を掛ける。


「あぁ、森の向こうのコロニーから来たらしい。門の前にフラフラしながら歩いて来たんだ」


「そうか、とりあえずこっちで休みなさい。お腹は空いてないか?水もあるぞ」

そう言うと休憩中の門番は、奥の部屋からパンと水を持って来た。


「あ、ありがとうございます」

チカム達は涙を流しながらパンを食べる。


「大変だったなぁ、辛かったなぁ…」

門番はうっすらと涙を浮かべてチカム達を見ていた。


「パンとお水ありがとうございました。あたいはチカム。この子はキカムで、こっちがヒカムです。あたい達がいたコロニーは破壊されてしまって… なんとか3人でここまで来ることが出来ました。あたい達をこのコロニーに入れてもらえないでしょうか?」

チカムは門番達に頭を下げて懇願する。


「チカムちゃん、悪いがオレ達だけの判断だけでコロニーに入れることが出来ないんだ。なんとか主にお願いしてくるから、少しだけ待っててくれないか?」

門番はそう言うと、休憩中の門番と門番の仕事を交代しコロニーの中へ走って行った。


「大丈夫。あいつが何とか説得してくれるよ」

部屋に残った休憩中の門番がチカム達を見て微笑む。


「ありがとうございます…」

チカムはうっすらと涙を浮かべ頭を下げていた。



しばらくして門番が息を切らして帰ってきた。

「チカムちゃん、主の許可が出た!よかったな!ここのコロニーもちょっと大変だけど、外よりはマシだよ。さぁ、安心して入っておくれ」


「ありがとうございます!みなさんのおかげです!」

チカムはパァと明るい表情をしてお礼を言う。キカムとヒカムも「ありがとうございます」と頭を下げる。


「今はみんな辛いから、お互いさまだよ。とにかく、チカムちゃん達が無事でなによりだよ…」

門番は満面の笑みで、よかったよかったと頷いている。


「門番さん、あたい達ここの事なにも分からなくて… よかったら教えて欲しいのですが… いいですか?」

チカムは上目使いで門番を見る。


「ああ、もちろんだとも!なんでも聞いておくれ。あ、そうだ。オレはもう少し仕事があるから、仕事が終わったら晩めしでも食いながら話そう。チカムちゃん達もまだ泊まる家もないだろ?オレが住んでる長屋に空き部屋もあったと思うし。家主に話してやるよ」


「本当ですか!ありがとうございます!何から何まで、お世話になってしまって…」

チカムは涙を浮かべながら、にっこりと微笑む。


「いいって!オレの娘も生きていたらチカムちゃん達くらいになってたんだ。なんだか娘と話してるみたいでさ… オレも嬉しいんだ。って、オレみたいなオッサンの娘と一緒にされたら困るよな」

あはははと門番は笑う。


「とんでもない!娘さん、残念だったんですね… あたい達でよかったら娘だと思って下さい」

チカムは門番の手を握り、ニコッと笑う。


「よーっし、今晩はごちそうしちゃうぞ!また、夕方、ここにおいで。それはまではコロニーを見て回るといい」

門番は上機嫌で仕事に戻って行った。



チカム達はお礼を言って、コロニーに入って行った。


メインの道をしばらく歩き、角をいくつか曲がったころ…


「チカム姉、相変わらず役者やなぁ」

キカムがニヤニヤしてチカムの顔を覗き込む。


「ふ、涙は女の武器よ」

チカムは口の端だけ上げて、悪女の笑みを浮かべていた。


「あの門番さんも楽勝だったね…。でも、チカム姉さん、門番さんがくれた水飲みたくないからって、うちに渡すのやめてれない?」

ヒカムは背中まで伸びた髪を指でクルクルしながら、チカムに抗議する。


「えー、あのおっさんの水筒だよ?あたい、ムリやわー」

「だよねー」

「うちもー」

コロニーにカムカム三姉妹の笑い声が響いていた…

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