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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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ルビアのお願い

ゲンゲはバスターソードで一度、床を突いて注目を集めると、全員の顔をみて話しだした。

「竜の牙、鋼鉄の盾、暗闇の道化師、みな集まってくれた事に感謝する。オレはギルドでたくさんの冒険者達を見てきたが、ここに集まった精鋭達は魔界で最も優れた冒険者達である事を知っている」


ゲンゲは一度頭を下げ、話しをつづけた。


「5年前、やつらは突然現れた。たった5年で魔界は侵略され多くの強者達が倒れていった。やつらに単独で挑んだ名だたる強者達は、数の暴力の前に倒れたのだ。オレ達も一人一人は強く、やつらに負けるとは思わない!しかし、数の暴力には勝てないのだ。」

ゲンゲの声は静かに、しかし激情を燃やしていた。


「魔界の男として、そして強者として単独で戦いを挑みたいだろうが、いまは堪えてくれ。魔界の未来のため。やつらに殺された仲間達のため。いまは手を取り互いに協力し、やつらを殲滅するのだ!いま、オレ達はひとつの個となり戦うのだ!」

ゲンゲは強入り意思を目に宿し全員を見る。


「おお!」


「では、出発する!目指すはインクローチャーの都市。まずは都市付近に拠点を張り、反撃の準備を整えるのだ!そして、やつらを殲滅する!」


こうして、ゲンゲを中心にした15名の冒険者と言う名の『個』がコロニーを出発した。




◇◇◇◇



「ところでルビアさん!」

コロニーを出発してしばらく歩き、森の手前に着いたとき黒髪、黒目でショートカットのチカムが話しかけてきた。


「はい?え…と、チカムさん、なんですか?」

あたしはこの三姉妹を髪型でしか覚えられていない。と、言うか髪型以外に違いが分からない…


「おお!正解!チカムだよ。初めての人で最初から名前正解した人、久しぶりやわぁ」

チカムはルビアの背中をバンバン叩きながら笑う。


「あははは。それでチカムさん、なんですか?」

どうもこの人との距離感が掴めない…

ルビアは苦笑いしながら質問する。


「そうそう、これから森を抜けるわけやけど、減ったとは言え森の奥には魔獣がいっぱいやん?ルビアさんとシオンさんの2人の時は、どうやって森を抜けてたん?」

インクローチャーがやって来て、コロニーと同じように魔獣達もたくさん殺された。魔獣達はすぐに逃げ出し森の奥に隠れ、現在の森の奥は魔獣の巣窟になっているのだ。

そんな森をルビアやシオンはどうやって森を抜けていたのか、チカムは不思議でならなかった。同じように思っているキカムとヒカムもチカムの後ろで興味深そうに聞いている。


「え?えーと、森に入る時に魔獣さん達にお願いしてから森に入ってました。そうしたらあまり魔獣に出会わなかったので…」

あたしはいつもしていた『森に入る前のお願い』を説明する。後ろでシオンがくっくっと笑いを堪えているのが気になるが…


「お願い??」

チカム、キカム、ヒカムはきょとんとしている。


「ええ、普通にお願いするだけなんですけど… 。今から森に入りますし、やってみますね」

ルビアはそう言うと森の入口で立ち止まる。

それを見たコーナスやミモザ、アナナスなど全員が立ち止まりルビアを見守る。



ルビアは森の入口に向かい、目を閉じて両手の指を組み合わせて祈る。

「これから森に入ります… 魔獣さんたち、あたし達に近づかないで下さいね… もし、近づいてきたら…」


ルビアは、スッと目を開いて

「だから、お願いっ」

と、呟くと同時に森の鳥達が一斉にパニックを起こしたように逃げ出し、森の中からは複数の魔獣の悲鳴のような鳴き声が響き渡る。

しばらく森が騒然とし、静かになるとルビアは振り向き

「魔獣さん達にお願いしました。たぶんあまり出て来ないと思います」

和やかな笑顔で笑っていた。




コーナス達はポカーンと口を開けて固まり、シオンだけが笑っていた。



「………やっぱり、ルビアさん怖いわ……」

チカム、キカム、ヒカムはヒソヒソと話し合っていた…




コーナス達はルビアの『森に入る前のお願い』の後、付近を警戒しながら森に入っていた。


森の入口は明るかったが、奥に進むにつれ薄暗くなっていく。

周りには魔獣の気配はなく、鳥や虫の鳴き声すら聞こえなかった。


「あ!ルビアさま!()()落ちてましたよ!」

シオンは嬉しそうに走りだし、木の下に()()()()()鳥や、草むらの影に()()()()()ウサギ等を拾ってくる。


「今日の晩ごはんは焼き鳥と、ウサギのスープですね」

シオンは他にも()()()()()()()とキョロキョロしていた。


「そうだね!この森は()()()()()鳥やウサギが落ちてるからごはんに困らないよねぇ」

ルビアもキョロキョロしながら歩いている。



「え?ルビアさん達、気がついてないんかな?」

キカムはチカムに耳打ちする。


「たぶんシオンさんは分かってると思うけど、ルビアさんは分かってないな…」

チカムは小声で返す。


「うち、まだ手が震えてる…」

ヒカムは手を押さえながらチカムに引っ付いている。


「まぁ、仕方ないよ。あんな殺気当てられたら誰でもそうなるって。それを直接受けた鳥やウサギならショック死もするわ…」

チカムはヒカムの頭を撫でながら小声で話す。


「とりあえず、ずっと仲良くしとこな」

キカムが提案すると


「そやね」

チカム、ヒカムはコクコクと頷いていた。

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