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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第2章 反撃編
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旅の仲間達

作戦会議から3日後、ゲンゲが指示したように薄暗い地下室には、ゲンゲを中心にコーナス率いる竜の牙5名、アナナス率いる鋼鉄の盾4名、クレオメ率いる暗闇の道化師5名、合計15名が集結していた。


地下室では久しぶりに会った事もあり、お互いに近況を話し合っていた。


あたしはそれを眺めていると、クレオメが仲間を連れてやって来た。

「ルビアはん、俺の仲間達を紹介するわ。こいつはコリウス。見た通り狼獣人の戦士や」


そこには身長が200㎝くらいある狼の獣人で、町で見かける狼獣人より一回り大きかった。体格は筋骨隆々で、革鎧を装備し腰にはバスターソードをぶら下げていた。

「コリウスだ。よろしく頼む」

それだけ言うとコリウスは壁際に行ってしまった。


「あはは、堪忍やで。あいつ人見知りやねん」

クレオメが微妙なフォローをしていると、横から黒髪、黒目で身長は150cmくらいの女の子が3人、お揃いの革鎧を着て、腰にはショートソードを下げて出てきた。

3人ともそっくりな顔立ちで、髪の長さくらいしか違いが無かった。


「あたいはチカム、長女よ!この子が次女のキカムで、こっちが末っ子のヒカム。三姉妹やの、よろしくね!」

ショートカットのチカムはニコニコしてルビアの手を取り、ぶんぶん振る。


「よ、よろしくお願いします」

ルビアは距離感に戸惑いつつ挨拶する。


「ルビアさん、すごい魔導士なんだってね!あたい達のコロニーにもマルバってすごい魔導士がおったんよ。次期リアリナだぁってコロニーでは有名やってんけど、マヴロってヤツに招待状送って負けちゃったのよねぇ。ざんねーん」

あはははと、全然、残念そうにしていないチカム。


「チカム姉!マルバなんかどうでもええやん。まぁ、ルビアさんとどっちがすごい魔導士やったかぁってのは気になるけどな…」

黒髪をポニーテールにまとめている次女のキカムは、腕を組んでチカムの横に立っている。


「よ…よろしくお願いします…」

チカムとキカムの後ろに隠れるように、ヒカムは背中まで伸ばした黒髪をクルクルと指で弄りながら、聞こえるかどうかギリギリの声で挨拶している。


「もう!ヒカムはもっと大きな声出し!」

チカムはヒカムを前に押し出して挨拶させる。


「ひっ、ご…ごめんなさい…」

ヒカムの声は、ますます小さくなる…


(こ、こんな所でマルバさんの名前が出るなんて…。世間狭すぎじゃない?)


あたしは背中に冷や汗を感じながら、少しぎこちない笑みを浮かべ挨拶する。

「チカムさん、キカムさん、ヒカムさん、よろしくお願いします。あたしはルビア。この子はシオンです」


あたしはシオンの背中を押して紹介する。

「あぃー、シオンですぅ。あと、マル…」

「はいー!!シオンさーん!」

いつもより大きな声でシオンを止める。


「シオンさん?ちょっと向こうでお話ししましょうか…?」

「ぁ…ぁぃー…」

「ゴメンなさい、ちょっと失礼しますね」

あたしは笑顔でチカム、キカム、ヒカムに謝り、シオンを連れて壁際へ移動する。



「……ルビアさんて、めっちゃ怖い人かも…」

チカム、キカム、ヒカムはヒソヒソと話し合っていた。



「ちょっと、シオン!余計な事言わないでよ?話しがややこしくなるでしょ。あの子達がマルバさんとどんな関係かもわからないのに…」

【かえで】の処世術、『なるべく目立たない』をルビアになっても継続していた。すでに目立っていることに気がついていないのだが…


「あぃー」


壁際でシオンと話していると、こんどはアナナスがやって来た。


「ルビア殿、ワシの仲間も紹介させてもらってもええかの?」

アナナスはルビア達がクレオメのパーティから離れるのを待っていたようだった。


「アナナスさま!もちろんです、こちらからお願いします」

ルビアはニコっと笑い、アナナスの正面に立つと、アナナスは仲間を手招きした。


少し離れた所から白いローブを着た身長160cmくらいの赤い髪、青い目をした女性が近づいてきた。

「貴方がルビアさんね。(わたくし)はクレア。白魔導士よ。貴方ものすごく強いそうね。(わたくし)の身を守る栄誉を与えるわ。そのかわり(わたくし)の治療を受けさせてあげる」

クレアはルビアの顔を見るなり、上から目線で話してくる。


「え…っと」


ルビアは言葉が出ず戸惑っていると、身長は180cmくらいで銀髪、青い目をしており、スケールメイルを装備し腰にバスターソードを下げた男がやって来た。男は細めだがよく鍛えられている事がスケールメイルの上からでも分かった。男はクレアの横に立つと一度お辞儀をして話しだした。


「失礼ながら、クレアお嬢さま。ルビア嬢とシオン嬢は特別な任務があります。それに竜の牙メンバーでもありますので、クレアお嬢さまのお側に付くことは難しいかと思われます」


「む?そうなのか?まぁ、デニアが言うのならそうなんでしょう。仕方がないわね。貴方達、ケガをしたら(わたくし)の所へ来なさい。特別に治療してあげるわ、ありがたく思いなさい」

クレアは腕を組み、ふんっと鼻から息を吐く。


「あ…ありがとうごさいます」

あたしはとりあえず逆らわないでおこうと、素直にお礼を言うことにした。



「ルビア嬢、シオン嬢、先日はご挨拶も出来ず大変失礼しました」

デニアはルビアの前に片膝を付き、右手を取ると手の甲にキスをする。


「え? あ!アナナスさまと居た! いえ、こちらこそご挨拶もせず申し訳ありませんでした」

ルビアは顔を真っ赤にして右手を引っ込めた。あたしはデニアが作戦会議の日、アナナスのそばに立っていたことを思い出した。あの時は緊張していてあまり周りを見る余裕が無かったが、改めて見るとかなりのイケメンだ。


ルビアがデニアに見惚れていると、デニアの背後から金髪の男が現れた。金髪の男は革鎧を着ており、腰にはショートソード、手にはボウガンを持っていた。

金髪の男も青い目をしており、鋼鉄の盾メンバーはアナナス以外、青い目をしてるんだなぁとあたしは思っていた。


「君がルビアちゃん? で、こっちのかわい子ちゃんがシオンちゃん? 2人とも超可愛いねぇ!オレ、セロシア。仲良くしようねぇ」

へらへら笑いながらセロシアはルビアとシオンの手を握る。


「え?あ、こ、こちらこそよろしくお願いします」

(あー、苦手なタイプだー)

ルビアは少し引きつった笑顔で対応する。


「こら!セロシア!いい加減にせんか!」

アナナスはセロシアの頭をゲンコツで殴ると、背後に下がらせた。


「ルビア殿、シオン殿、お恥ずかしいところをお見せした。セロシアはあんなじゃがレンジャーとしては有能なのじゃ。何かあれば使ってやってくれ」

アナナスはペコリと頭を下げる。



「あ、いえ!少し驚いただけですから!こちらこそいろいろと助けて頂くと思います。よろしくお願いします」

ルビアは慌てて頭を下げる。



その時、地下室内を『カツンっ!』と乾いた音が響いた。音の方を見ると、ゲンゲはバスターソードで一度床を叩き、乾いた音を地下室に響かせて注目をあつめていた。


さっきまで和やかな雰囲気だった地下室は、ピリピリとした緊張感に包まれ、ここに居る全員が真剣な表情でゲンゲに注目した。

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