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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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ルビアの実験

ヘレボルスとの対談が終わった。


「ルビア、オレ達は少しジルバ達と話してから帰るよ」

ここの屋敷は、元々コーナス達が住んでいた屋敷だ。

今も屋敷で働いているジルバやメイド達とは久しぶりの再会なのだ。


「はい、あたし達は先に宿に帰りますね」


宿に着いて、あたしはシオンとあの美味しい紅茶を飲んでいた。


「ねぇ、シオン。お願いがあるんだけど」


「なんですかぁ?」


「この前のヘスちゃんさんと闘ってた時に思いついた魔導と格闘を合わせるやつ。いろいろと試したいの。ちょっと手伝ってくれないかな?」


「あぃー、いいですよぉ」


シオンの承諾を得たあたし達は部屋で装備を整えると、宿屋の女将さんに言伝してからコロニーの塀の外にある草原に来ていた。



「ここなら人が居ないから、少しくらい失敗しても大丈夫よね」

あたしは周りに人が居ない事を確認して、体をほぐし準備体操をする。


「ルビアさま、何するんですかぁ?」

シオンはルビアの準備体操をぼんやりと見ながら、その辺にあった石を持って来て座っている。


「この前の技?魔導?を復習するのと、新しい事が出来ないかな?って思ってね。シオンはそこで見てて。もしあたしが失敗して倒れたら宿に運んで欲しいの」


「あぃー。でも失敗して倒れないでくださいぃ。ルビアさま担いで走るなんでめんどくさいですぅ」

うへへへ とシオンは笑っているが、万が一ルビアが倒れた場合、シオンは必死に助けてくれるんだろうなとあたしは思った。



「ふぅ…」

ルビアは一息吐き出すと、目を閉じて集中する。


(まずはおさらいから…)


体の中の魔力の流れをイメージする。


(ヘスちゃんさんと闘ってた時より、ハッキリとわかる…。よし、まずは右腕に炎を纏わせる…)

ルビアが右腕に集中すると、小さな炎が無数に発生し右腕に纏わりついてきた。


ルビアはそのまま腰を落とし、誰もいない方向に正拳突きを放つ。


「ふっ!」

放たれた右腕の正拳突きから拳大のファイヤーボールが飛び出し、10mほど飛ぶと消滅した。


「よしっ、いける。それじゃ、いろいろ試してみようかな」

あたしは手応えを掴んだので、あの闘いの後にイメージした事を試すことにした。


まずはファイヤーボールの氷版、アイシクルボール。

右腕に集中すると、右腕にキラキラと氷の破片が纏わりついてきた。まるで右腕の周りにダイヤモンドダストが発生しているような幻想的な状況だ。


「ふっ!」

先程と同じように正拳突きを放すと、拳大の氷の塊が飛び出し、10m位先で消滅する。


「これ、どの属性でも出来そう!」

試してみると風属性だと雷が発生し、土属性だとシールドが出来た。光属性だと腕が光るだけ、闇属性なら深い影を纏うだけだった。


(光属性と闇属性は意味わからないけど、四大属性なら意外と便利かも…)


次は体全体を纏う事ができるか試してみる。


(イメージだと風属性なら、なんか空気の層みたいなので防御できると思うんだけどなぁ)


ルビアは体全体に纏わせるイメージをすると、思った通り体の周りに数㎝の空気の層を作り出すことができた。

空気の層は対流があり、風を纏っているような感覚だった。あとは、防御力の確認ね…


「できた!シオン!あたしに石を投げてみて」


「あぃー」

シオンは手頃な石を見つけ、ルビアに思いっきり投げつける。


「んな!そんなに思いっきり投げなくても!!」

ルビアはびっくりして体を捻り、石を背中で受ける。


シュイン…


石はルビアの背中を滑るように逸れた。


「え?」


「あぁ、なんか逸れましたねぇ。では…」

シオンはその辺の石を片っ端から投げつける。


シュイン、シュイン…


全ての石ははルビアに当たることなく、ルビアの体を滑るように逸れていった。


「すごい…」


「ルビアさま、すごいですねぇ。これじゃ、飛び道具で攻撃されても当たりませんねぇ」


「うん!これすごいよ!これなら突撃するとき相手の弓とか気にしなくていいね!」


「あぃー。でもルビアさまの近くには居れませんね…。ルビアさまを狙った弓は、みんな周りに当たりますよ」

シオンはルビアの足元を指差す。


「え?」

ルビアの足元には、投げつけられた石がたくさん転がっていた。


「あちゃー、あたしだけが無事なのね。みんなと居たら、まわりを巻き込んじゃうなぁ…」

なかなか使い所が難しいのかも…?


「次は他の属性も試してみるね!」


(まずは火属性…)

ルビアは体に炎を纏うイメージをする。

体全体に小さな炎が発生し、全身に纏わり付くと全身を炎が包み込んだ。


「にぎゃーーーー!!!!」

ルビアは慌てて炎を消す。


「ど、どうしんですかぁ?」

シオンがビックリしてルビアを見ている。


「ダメだこれ、前にコーナスさんに焼かれた時と同じになる…」

ルビアの全身は煤まみれになっていた。


「あちゃー、ルビアさまの丸焼きですねぇ」

シオンはくくくと笑う。


「どんどんいくわよ!」

次は水属性を試す。


ルビアの全身を水が包み込む。

「…!!!」

ルビアは全身の水を消すと、両膝をつき肩で息をする。


「はぁ、はぁ… 溺れるかと思った… 次!」


土属性を試すと、全身を土が纏い動けない。

光属性だと全身が光り輝き、ただの目立ちたがりになる。

闇属性では全身に深い影を纏い、どこかの心霊現象みたいになる…


「つ…使えねぇ…」


「ルビアさまぁ、全身のヤツはダメですねぇ」

くくくとシオンは笑いを堪えて切れずにいる。


「なかなか上手くはいかないね」

あたしは頭を掻きながら笑っていた。


「あとは、この技?魔導?なやつに名前つけようと思うの。いつまでも、技?魔導?とか言えないしね…」


「あぃー、そうですねぇ。闘ってる最中に、あの技?魔導的な?アレやってください!とか言えませんしねぇ」

状況を想像してあたしとシオンは2人して笑う。


「どんな名前にしようかな…」

「そうですねぇ、魔導と武術だから魔武術?」

「んー、なんかしっくりこないなぁ。バトルマジック?」

「なんかイマイチですねぇ」

「あ、マジカルアーツは?」

「あぃー、なんかいいかも」

「よし!今からマジカルアーツね!あぁ、なんかテンション上がるわぁ」

「ルビアさま、オリジナルですしねぇ。誰もマネできませんよ。殴りながら魔導を放つなんて…」

「ねー!あたしってスゴくない?」

「あぃー、スゴいと思いますぅ」

うへへへ とあたしが照れ笑いしていた時だった。



空に『黒い穴』が開いた。

「あれ?シオン、アレなんだろ?」

あたしは『黒い穴』を指差してシオンを見る。


「なんでしょう…?」

シオンも不思議そうに『黒い穴』を見ていた。



しばらくすると『黒い穴』から、次々と飛行船が出てきた。


飛行船はそのままコロニーの中心へ向かうと、突然、爆弾を投下しヘレボルスの屋敷を中心に爆発と火災が発生した。


「な!!! ヘスちゃんさんの屋敷が!!!」

あたし達は急いでコロニーに向かって走りだした。


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