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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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ヘレボルスと指輪

屋敷の横には真新しい建物がたっていた。建物は2階建ての造りではあるが、高さは4階建くらい高く、横は屋敷と同じくらいの建物だ。

この高台には、巨大な建物が2つ並んで建っている状態だった。

新しい建物の入口のドアは通常の3倍ほど大きく、窓も大きい。

巨大なドアの横には通常の大きさのドアがあり、そこから建物の中に入る。


玄関も巨大な造りとなっており、まるで自分が小人になったような錯覚を覚える。


玄関から左右に廊下が続いており、正面には巨大な階段と、その横に通常サイズの階段がある。


全ての設備が巨大なサイズと通常サイズを並べて作っている不思議な建物だった。


「不思議な建物でしょう?」

ジルバが笑いながら振り向く。


「ここはヘスさまの住居なのです。全てヘスさまのお体に合わせたサイズになっています。ですが、このサイズですとメイド達が仕事をできませんので、通常サイズのドアや階段なども設けておるのです」


「なるほど。確かにメイド達には大き過ぎて部屋に入ることも出来ないな…」

コーナスはアゴを撫でながら納得していた。


「では、こちらへどうぞ」

ジルバに案内され、一際巨大なドアの前に立つとジルバが声をかける。

「ヘスさま、ご案内致しました」


「どうぞ。待ってたわん」

部屋の中から声が聞こえ、ゆっくりとドアが開く。



「こちらでヘスさまがお待ちです。くれぐれもヘスさまのお名前を呼び間違いませんよう。ご注意下さい」

ジルバは丁寧にお辞儀をしてさがっていった。


ドアの内側には2mくらいの巨人の男が2人立っており、ドアの開閉をしてくれていた。

部屋に入ると、巨大な椅子に座ったヘレボルスがいた。

部屋にある家具は材質やデザインにこだわった高級家具だが、全てが巨大であたし達には使えそうもなかった。


部屋の中央にお客さま用に準備された通常サイズのテーブルとソファーが置いてある。


「ルビアちゃん待ってたわ。みなさんもどうぞ座って」


「ヘスちゃんさん、こんにちは。呼んでくれてありがとう」

あたしはニコっと笑い挨拶する。


「んまー、相変わらずルビアちゃんは可愛いわねぇ」

ヘレボルスはニコニコして、ふとルビアの後ろに立つ人物に目が止まる。


「あ、やっぱりコーナスちゃんだったのね」


「お久しぶりです。コーナスです。ヘスさま」

コーナスは丁寧にお辞儀をする。


「ルビアちゃんのお友達だったんだねぇ。どう?そろそろここに帰って来ない?」


「申し訳ありません。私はまだ魔界を見て周りたい。それに、今はルビア達と旅をしたいと思っています」


「あらぁ、残念ね。まぁ、コーナスちゃんならそう言うと思ってたけどね」


「はっ、申し訳ありません」


「いいのよー。あたしもルビアちゃんとなら旅に行きたいと思うもの」

ヘレボルスは、ふふふと笑う。



「さて、今日あなた達に来てもらったのは、この前のお礼をしようと思ったのよ」

レベバルスは両手をパンっと叩いて話しだした。


「…お礼? ですか?」

ルビアは心当たりがなく首を傾げる。


「そうよ、ルビアちゃん。この前の闘い、すごく楽しかったからね」

ヘレボルスが『バチコーーーン!』とウインクする。


「あぁ!あたしも楽しかったです。闘って楽しいって思ったのは初めてでした」


「そう!よかったわ。で、あなた達は魔界を周る旅をするのでしょ?だから、あたしからお餞別を贈ることにしたの」


「持ってきてー」

ヘレボルスが手を叩くと、ドアが開きメイドが箱を1つ持って来た。


「あなた達へ、ヘスちゃんからのプレゼントよ♪」

ヘレボルスはそう言うと、ゆっくりと箱を開けた。


箱の中には指輪が5つ入っていた。


「ほぁー」

指輪はシンプルなデザインで、小さな魔石が埋め込まれている。


「この前ね、悪いけどルビアちゃんのパーティを調べさせて貰ったの。それで贈るなら何がいいかなー?って考えてみましたっ♪」

ヘレボルスはニコニコして、竜の牙メンバーを一人一人見る。


「コーナスちゃんにはコレ」

ヘレボルスは小さな赤い魔石が埋め込まれた指輪をコーナスに渡した。


「コレは、攻撃力を上げる魔法の指輪よ。あなたは近接戦専門の竜人でドラセナちゃん孫だから、いつも突撃しちゃうでしょ?」

ふふふと、ヘレボルスは笑う。


「いやぁ、見られてるみたいだな…」

コーナスは頭を掻いていた。


「次に、ミモザちゃんとアキレアちゃんはコレ」

ミモザとアキレアには青い魔石が埋め込まれた指輪を渡す。


「2人とも近接戦は苦手でしょ?防御力が上がる指輪にしたわ」


「あ!ありがとうごさいます!」

ミモザとアキレアは指輪を受け取り、頭を下げる。


「シオンちゃんはコレね」

シオンには黒い魔石が埋め込まれた指輪をわたした。


「シオンちゃん、まだまだ弱いでしょ?この指輪は姿を消す事ができるインビジブル・リングよ。1日3回しか使えないけどね。いざとなったら姿を消して逃げるのよ」


「あぃー」

シオンは指輪を貰うとすぐに指に嵌めて、姿を消した。


「おおお!!消えた!」

コーナスたちが驚いていると、すぐに姿を現わし「うへへへ」と怪しく笑うシオン。


(アサシンにインビジブル・リングって最凶じゃ…?)

ルビアは1人冷や汗をかいていた…


「最後に、ルビアちゃんね。ルビアちゃんはコレ」

ヘレボルスは虹色に輝く魔石が埋め込まれた指輪を優しく持つ。


「この指輪はね、虹色に輝く希少な魔石が埋め込まれているの。言い伝えでは運命の女神ルリアが作ったとも言われているわ。この指輪を付けていたら運命の女神ルリアの加護により護られるそうよ」

ヘレボルスは神妙な表情で説明すると、ルビアに指輪を手渡した。


「あ、ありがとう! すごく嬉しい!」

ルビアは大切に指輪を受け取り胸に抱く。


(ま…まさか、こんな所でルリアの名前を聞くなんて…)


ふと、ルビアは考えた。

(運命の女神ルリアの加護って、またルーレットで適当に決めるんじゃないでしょうね? いや、あいつならあり得るわ…)


イヤな過去を思い出しイラっとする…


「ん?ルビアちゃんどうしたの?」

ヘレボルスは首を傾げてルビアを見ている。


「え?あ、ううん。キレイな指輪だなーって… ヘスちゃんさん、ありがとう!大切にするね!」

ルビアは満面の笑みで応えると、指輪を指に嵌めた。


「うふふ。喜んでくれてよかった。魔界を見て回ったら、また遊びにおいでね。待ってるわん」


「うん!絶対にまた来るね」

2人の間には()()()()が生まれていた。



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