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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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コーナスの願い

夕方、南側の門にはすでにゲンゲとローダンセと、白魔導士が3人いた。

ゲンゲはこちらに気がつくと、手を振ってくれた。


「遅れてすいません!!」

あたしはゲンゲ達の元に走って行き、開口一番にお詫びした。


「いやいや、遅れてなどないとも。我々が少し早く着いただけだ」

ゲンゲは朗らかに笑う。


「お?そこにいるのはコーナスでは?」

あたしの後ろにいた竜の牙メンバーに気が付き、ゲンゲが昔の教え子を見るような目で見ている。


「ゲンゲ試験官、お久しぶりです!コーナスです!」

コーナスは挨拶をするとゲンゲと握手を交わす。


「コーナス、ルビアと知り合いだったのか」


「はい。ルビアは私たち竜の牙の仲間です」

コーナスはどこか自慢気だった。


「ルビア、よい仲間たちだな。コーナスはなかなか見所があるぞ」

ゲンゲはルビアの頭を撫で、豪快に笑っている。


「は…はい!」

ルビアは自分の宝物を褒められてような気持ちになり喜んでいた。


「コーナス、ヘスさまの件すまない。どうもアレはわがままが過ぎるところがあって…」

ゲンゲが頭を下げる。


「ゲンゲ試験官!頭を上げて下さい!ヘレボルスの事はよく知っております…」

コーナスはドラセラとの件を思い出し、少しだけ目線を伏せるが、すぐに胸を張りゲンゲを正面から見る。


「ゲンゲ試験官!お願いがあります」


「うむ。なんだ?」


「ルビアは私たちの大切な仲間です。それにまだ子供です。ルビアはこれからどんどん強くなり、いつかは魔界一の強者になる可能性もあります。このような願いをするのは恥知らずとお思いでしょうが、何卒、ルビアの命だけはお守りください!」

コーナスはゲンゲに片膝をつき、頭を下げて願い出た。


それを見たミモザとアキレア、シオンさえもコーナスに倣い頭を下げる。

「どうか!お願いします!!」



突然の事でルビアはオロオロしている。


ゲンゲはコーナス達を立たせ

「もちろんだとも。オレもローダンセも同じ気持ちだ。何があってもルビアを死なせはしない。約束する」


「あ!ありがとうございます!」


「ルビア、本当に良い仲間たちだな…」

ゲンゲはルビアを慈しむように見ていた。



「では、そろそろいこうか」

ゲンゲはそう言うと、ルビアたちを案内してコロニーの南門を出る。

南門を出ると、草原が広がっており、整地はされていないがたくさんの人達に踏み締められた街道が伸びている。


街道を10分ほど歩いたところで、東へ街道を逸れる。

そのまま5分ほど歩くとゲンゲが振り向いて到着を知らせる。

「ここだ」


そこはただの広い草原だった。目印もなにもない、ただの草原。遠くに山が見えるくらいだった。


「ここですか… なにもないですね…」

ルビアは率直な感想をつぶやく。


「そうだな、何もない。だからアレがなんの気兼ねもなく動けるんだ。アレでも一応はコロニーの主だからな。少しは考えているのだろう」


「なるほど…」

ルビアが納得していると、たくさんのコロニーの住人が集まってきた。


「まぁ、あれだけ派手に宣伝すればこうなるか…」

ゲンゲは頭を掻きながら、住民たちの所へ行き、戦いの邪魔にならないように離れた所で見学するように指示していた。



(え?なんでみんなここが分かるの?目印もなにもないのに?マーキングでもしてるとか?)

ルビアが失礼な事を考えていると、住人たちが歓声を上げだした。


「来たか…」

ゲンゲがつぶやく。


あたしはゲンゲの視線の先を見ると、ピンク色の髪をツインテールにして黄色いワンピースを着た巨人が、手にはルビアの身長ほどありそうな巨大なバトルアックスを持って歩いて来た。


ヘレボルスはルビアの前に立つと猫撫で声で話し出す。

「あ〜ら、ルビアちゃん。ちゃんと来てくれてのね。ヘスちゃん嬉しい♪」

ヘレボルスは昼間に見た時と同じように、濃いアイメイクと真っ赤なルージュを付けていた。


「ヘスちゃんさん、よろしくお願いします」

ルビアはお辞儀をして、顔を上げるとニコっと笑う。


「んまっ!なんて可愛いのかしら!」


「え? えへへ、ありがとうございます」


「ねぇ、ルビアちゃん、このワンピース可愛いでしょ?草原に咲く可憐な黄色い花をイメージしてきたのよ」

ヘレボルスは『バチコーーーン!』とウインクする。


「はい!ヘスちゃんさんにとてもお似合いですね!」

ルビアは『かえで』の頃に培った、『女の話し方スキル』を発揮してスムーズな会話を試みる。


「んふふ。ありがと。あたしの周り、みんなその辺の感覚がズレてるから、誰も理解してくれないのよねぇ。ルビアちゃんだけよ♪」

ヘレボルスはご機嫌になり、鼻歌をうたいだす。


「………」

ゲンゲをはじめ、ローダンセ、コーナスたちはポカンとしている。


「あいつが強いのは戦いだけじゃなのか…」

コーナスたちは、ヒソヒソと話していた。



「さぁ、ルビアちゃん。あたしを楽しませてね♪」

ヘレボルスはバトルアックスを肩に乗せる。


「ヘスさま!!!」

ゲンゲが叫んだ。


「ゲンゲちゃん、わかってるわよ。ちゃんと刃が付いてないバトルアックスだし、ルビアちゃんを殺したりしないわ」

ヘレボルスはゲンゲに『バチコーーーン!』とウインクする。


「はっ、ありがとうございます」

ゲンゲは片膝をつき、頭を下げていた。


「いいのよん♪ ゲンゲちゃんのお願いだもん。惚れたあたしの弱みかしら?」

ヘレボルスは空いている左手を頬に当て、照れている。


(うぁぁ………)


ここに居るヘレボルス以外全員の声が聞こえたような気がした…



「さぁ!ルビアちゃん、はじめるわよ!」

ヘレボルスはバトルアックスを構える。


「はいっ!よろしくお願いします!」

ルビアは両手のナックルを握りしめ、気合いを入れた。

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