表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
32/148

ランク試験ー5

観覧席には逃げた見学者の他に、さっきの爆発音を聞いた野次馬などが集まり満席となり、騒めきが起きていた。


「あれ?ゲンゲ試験官って、いつもは革鎧じゃなかったっけ?」

「おい、ゲンゲ試験官を見ろ。いつもの木剣じゃないぞ。それにシールドを装備してるぞ!」

「なんだ?あのバスターソード、本物か?」

などなど…



コーナスもゲンゲの装備に戸惑いを感じていた。

「おいおい、ゲンゲ試験官がまた出ててきたと思ったらフル装備かよ!こりゃ、ルビアのやつゲンゲ試験官に気に入られたな?」


「え?どう言うこと?」

ミモザはいつもの試験と違う事に、ハラハラしている。


「ゲンゲ試験官が本気になる時はフル装備をしてくるらしいんだ。オレの時は革鎧に木剣だったけどな…」

少し悔しそうなコーナス。


「ええ!?あんな小さな子相手に、本気で戦うつもりなの?」

ミモザは驚き立ち上がってゲンゲを見る。


「ああ、ルビアはそれだけ力を持っているって事だ…」

コーナスはどこか誇らしげに語った。





広場の中央には、チェインメイルの要所要所にプレートを取り付けた機動性を重視した簡易のプレートメイルを装備して、左手にラージシールド、右手にバスターソードを持ったゲンゲ試験官と、チェインメイルの上に布の服を装備して、両手には龍の装飾がされた『ただのアイアンナックル』を嵌めたルビアが向かい合っていた。


「今日はとても楽しい日だ。シオンに続き、お前のような者と戦えるんだからな…」

ゲンゲは獰猛に笑う。


「ありがとうございます。あたし、精一杯頑張ります」

ルビアはナックルを握りしめる。


「では、試験をはじめよう。思い切りかかってきなさい」

ゲンゲが試験開始を宣言した。


「はい!いきます!」

ルビアは「ふぅっ」と短く息を吐き、気合いを入れゲンゲを『ギンっ』と睨む。

ルビアを中心に圧迫感が広がり、空気がビリビリと震える。広場を囲む結界がビシ!ビシビシっ!と音を立て、ヒビが広がる。


観客席からはどよめきが起きていた。



「始まるぞっ」

コーナスは食い入るように広場の2人を見ている。


「……」

ミモザは両手を合わせ、少し震えていた。







ルビアは少し身をかがめると、大地を蹴り一瞬でゲンゲとの間合いを詰めた。

ゲンゲは腰を落としてシールドを構える。


ガギンっ!!!


ルビアの右ストレートがシールドに防がれると、鉄と鉄がぶつかる音が響く。


ルビアはそのまま左右の拳で高速のラッシュをかける。


ゴガガガガガガガ!!


シールドへの打撃が速過ぎて、打撃音が1つの音に聞こえる。


ゲンゲはシールドを構えたままジリジリと押され、足下には二本の線が描かれていた。


「ぬぉぉぉ!」

ゲンゲが短く叫び、ルビアが腕を引くタイミングに合わせてシールドを短く押し返す。

ルビアはパンチのタイミングがズレ、一瞬のスキができた。

ゲンゲはそのスキを見逃さない。シールドバッシュを繰り出しルビアを吹き飛ばした。


「きゃ!!」

ルビアは吹き飛ばされると、体を捻り足と片手をついて着地する。


「ぬぅぅんっ!!!」

ゲンゲは着地したルビアの頭上にバスターソードを振り落とす。


「っ!!」

ルビアは両手を頭上でクロスしてバスターソードを受ける。


ガギンッ!!


ルビアを中心に地面が円形に沈み、砂埃が波紋のように広がった。


ルビアはバスターソードを押し返し、立ち上がると同時にゲンゲの腹に蹴りを入れる。


「ぐっ!」

ゲンゲは体を吹き飛ばされるが、片手をつく事で体勢を保つことに成功した。


「ふははは、ルビアやはりお前は最高だな!」

ゲンゲは叫ぶと、シールドを構えたまま突進し、ルビアに体当たりをする。


ルビアはシールドに足を軽くかけて跳躍すると、ゲンゲの背面を取り腰を深く落とす。

ゲンゲが振り向いたところを、右手で強烈な一撃を放つ。

強烈な一撃はゲンゲのシールドに命中し、高速ラッシュで限界に達していたシールドが破壊された。


「ふぅ」

ルビアが一息つき、拳を構える。


ゲンゲはシールドを捨て、バスターソードを両手で構える。



観覧席の見学者達は息を飲んで戦いを見守っていた。



次の瞬間、ゲンゲとルビアは同時に動いた。


ゲンゲはバスターソードをルビアの頭上に振り下ろすが、ルビアはサイドステップで回避しゲンゲの懐に潜り込む。


「しまっ…!!」

ゲンゲの言葉は最後まで発せなかった。

ルビアは上体を屈め、右拳を地面スレスレからゲンゲの腹に打撃を打ち込む。


「ぐぁっ!!」

ゲンゲは短く声をあげると、ルビアの上に覆いかぶさるように倒れた。



「……… うぉぁぁあああああ!!!」

あまりの出来事に観覧席の見学者達はしばらく声が出なかったが、遅れて大歓声となる。


「やりやがった!ルビアのやつ!やりやがったぞ!!」

コーナスは立ち上がり叫んでいる。


「……はぁ」

ミモザは緊張がとけて、腰を抜かしていた。




ルビアがゲンゲの下から這い出てくると、ギルドの白魔導士が走り寄ってきていた。


ルビアは大歓声に呆気にとられ観覧席を見回し、足下に倒れているゲンゲを見ると、深くお辞儀をしていた。

「ゲンゲ試験官、ありがとうございました」



白魔導士たちが回復魔法をかけようとした時、ゲンゲは気が付きフラフラと立ち上がる。

「見事だ、これにて試験は終了する。ルビア、お前のランクはプラチナ級だ」


そう言うと、ゲンゲはルビアを肩に乗せルビアを称えた。


「あ!ありがとうございました!!」

ゲンゲの肩の上には、満面の笑みを浮かべるルビアがいた。



その時、聞き覚えのない声がした。

「あ〜ら、ずいぶんと楽しそうなことしてるじゃなぁい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ