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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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ランク試験ー3

あたしは広場の中央に立っていた。

周りには観覧席があり、何人かの見学者かいる。

目の前には狼の獣人『ゲンゲ』が立っており、腕を組んであたしを見ている。


あの日と同じように緊張はしているが、今はまったく違う感情があった。


(殺さなくていい…)


あたしはそれが嬉しかった…




「ルビア、準備はいいか?」

ゲンゲは低い声で聞いてきた。


「はい、よろしくお願いします」

あたしは両手のナックルを握りしめ、頭を下げる。


「うむ。では、試験を開始する。力いっぱいかかってきなさい」

ゲンゲはそう言うと木剣を正中に構え、ルビアの攻撃を待つ。


「ふぅ…」

あたしは短く息を吐き、気合いを入れゲンゲを『ギンッ』と睨む。

ルビアを中心に強烈な圧迫感が広がり空気がビリビリと震え、広場を囲む結界がビシっビシビシっと音を立ててヒビが入る。


観覧席からはどよめきが起きていた。


(あ、やっぱりここも結界張ってるんだ…)



「ほう。ルビア少し待て」

ゲンゲは木剣を下ろし、ルビアを制止した。


「え? あ、はい…」

ルビアを中心に広がっていた圧迫感が霧散する。


「ルビア、おまえを試験するには少し準備が必要なようだ。オレは準備をしてくるから、先に魔導の試験を受けてくれ」


「…はい。わかりました」


「ちなみにルビア、いまは何を装備している?」


「え?今はチェインメイルですが…」

鑑定の店を出る時、チェインメイルを荷物として持つには嵩張るため、布の服の下にチェインメイルを着用していたのだ。


「うむ。わかった。では、オレは準備をしてくる」

そう言うとゲンゲは広場の端にいる、魔導の試験官『ローダンセ』の近くに行き、なにか話しをした後、あたし達が入って来た方向と逆にある出入口に行ってしまった。



「ふぉふぉふぉ、ルビア殿。では先に魔導の試験をしようかの」

魔導の試験官『ローダンセ』がルビアの後ろから杖をつきながら歩いてやって来た。


「はい、よろしくお願いします」

ルビアは振り返りお辞儀をする。


ローダンセは身長が160cmくらいで少し腰が曲がっていた。白く長いヒゲは胸辺りまで伸びており、ローダンセの人生の長さを表していた。


「ふむ。ルビア殿、魔導は何が使えるのかの?」

ローダンセは白いヒゲを撫でながら、細い目を更に細くして聞いてきた。


「あたしは、四大魔法も二大魔法も使えますが、四大魔法の方が得意です」


「ほぉ!!そんな歳で全魔法を使えるとは!」

ローダンセは細い目を見開いて驚く。


(細い目って見開いて、やっと普通サイズなんだな…)

新たな発見をしても、口に出さないルビア…



「最近のヤツらは火の魔導しか使えないヤツとか、やっと四大魔法使えても、土はなんとか使えるが他はてんでダメなヤツとか… よくそれで『魔導士』だって言えるな!って内心腹立たしかったんじゃ」

ローダンセの変なスイッチが入ってしまった…


「は、はぁ…」

とりあえず、黙って聞いていようと思うルビア。


「あぁ、スマンスマン。つい興奮してしまったわい」

ローダンセはふぉふぉふぉと笑い、また細い目に戻った。


「では、今から魔導の試験を開始する。向こうに的を立てるから得意な魔導で攻撃しなさい」

そう言うと、ローダンセは杖を振る。


ルビア達から200mほど離れた所に、巨大な土の壁が現れた。土の壁は縦5m、横8mで奥行きは3mほどある。


「あの土の壁へ魔導を撃ち込むのじゃ。あれだけ大きければ破壊されることもあるまい」

ふぉ、ふぉ、ふぉと少し自慢気なローダンセ。


「はい、わかりました。まずは火の魔導を撃ち込みたいと思います」

ルビアは土の壁に右手を向け呪文を唱える。


「ファイヤーボール!」

ルビアの右手辺りに炎が複数現れ、1つに纏まりだす。

やがて炎はルビアの右手の前で直径2m程にまで成長し、『ボール』と言うには大きすぎる炎の塊となった。


「んな!! なんじゃと!?」

ローダンセがあまりの炎の大きさに一歩下がる。


観覧席からはどよめきが溢れていた。


ルビアの右手からファイヤーボール(巨大な炎の塊)が土の壁に凄いスピードで飛んで行く。


ズッ… ズガーーーン!!!


ファイヤーボール(巨大な炎の塊)は土の壁にぶつかると、土を赤く溶かし、ゆっくりと土の壁の体積を増やしたあと大爆発を起こした。


広場にいたルビア達に爆風が襲いかかる。


「ドーーム!」

ルビアが呪文を唱えると、ルビア達の前に巨大な土の壁が現れ、広場にいた者達を包み込んで爆風から守る。


広場の中では爆風が吹き荒れ、広場を囲っていた結界に無数のヒビが入っていた。


しばらくして爆風が収まり、ルビアが『ドーム』の魔道を解除すると、広場の中は巨大なモンスターが暴れた跡かと思うような惨状だった。

なんとか結界が爆風を抑えていたので、観客席には被害が出ていなかったが、多数の見学者が逃げだしてしまっていた。


「あ… ご… ごめんなさい…」

ルビアはやり過ぎてしまったと凹んでいた。



「は、ははは…」

ローダンセは腰を抜かして座り込んでいた…



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