ランク試験ー1
ギルドのお姉さんに付いて扉を潜ると、長い廊下が続いていた。
「どこかで見た事あるような…」
あたしはそんな感覚を覚えていた。
しばらく歩くと扉があり、中に入ると会議室のような部屋になっていた。
「ここでギルドとこれから行う試験について説明しますね」
お姉さんは振り向いて微笑んでいる。
「よろしくお願いします」
あたしとシオンは、部屋にある椅子に座る。
あたし達の前にお姉さんが立ち、軽く咳払いしてから話しだした。
「今回はギルド登録ありがとうございます。私はギルドて受付けをしているネリと申します。よろしくお願いします。」
ネリは相手が子供にも関わらず、丁寧に挨拶をする。
プロの仕事だ…
「まず初めにギルドについてご説明しますね。ギルドではさまざまな依頼を受けており、冒険者の方々へ紹介をしています。主に商人の方からの護衛依頼が多いですね。他にはダンジョンからアイテムの回収や、人探しなど多岐にわたる依頼があるのです。つまり、ギルドは依頼主さまと、冒険者さんの橋渡しをしているわけです」
ネリはルビア達が話しについてきているか、チラッと確認して続ける。
「依頼主さまは、どの程度の力を持つ冒険者さんに依頼したいのか要望されます。もちろん、冒険者さんの力が強ければ強いほど依頼金額が上がります。例えば、ゴールド級の冒険者に依頼したければ、簡単な護衛任務でも依頼金額は高額なものになります。逆に、困難な任務にブロンズ級の冒険者をつければ依頼金額は安くなりますが、成功率は低くなります。
ギルドは依頼主さまに助言はしますが、決めるのは依頼主さまとなります」
ネリは一息つき、話しを続けた。
「先程の話しにあった、ゴールド級など力のランクについて説明しますね。
ギルドでは、冒険者さまの力にランク付けをさせて頂きます。このランクによって依頼主さまのご希望に合った冒険者さまを紹介する目安にしています。ランクはこのようになります」
ネリは壁に貼っているランクリスト表を指した。
そこには
ブロンズ級 初心者
アイアン級 中級者
シルバー級 上級者
ゴールド級 達人
プラチナ級 天性の達人
ミスリル級 伝説クラス
アダマンタイト級 神話クラス
と書かれいる。
「ほとんどの冒険者さまはアイアン級かシルバー級です。稀にゴールド級の方がいますが、この辺ではニゲラさまか、マルバさまくらいでしょうか…」
ネリは人差し指をほっぺに当てて、登録している冒険者のランクを思い出していた。
思わぬ名前が出てきて、ピクッと反応するルビアにネリは気が付かない。
「ここまでで何かご質問はありますか?」
ネリは営業スマイルで聞いてきた。
「いえ、特にありません…」
ルビアはシオンをチラッと見て答える。
「はい、それでは今から行う試験についてご説明しますね。ルビアさまとシオンさまにはこれからランク付けの試験を受けて頂きます。試験は4種類あり、希望のもの選択できます。試験内容はこちらをご覧下さい」
ランクリストの横に、試験リストが貼ってありそこには次のように書かれていた。
近接戦 近接戦闘のランク試験
遠距離戦 ボウガンなど遠距離攻撃のランク試験
黒魔道 魔道による攻撃ランク試験
白魔道 魔道による回復、サポートのランク試験
「ルビアさまと、シオンさまはどの試験を受けますか?」
ネリは営業スマイルを崩さない。
「あたしは、近接戦と黒魔道にしようかな…」
ルビアは試験リストを見ながら答える。
「まぁ!近接戦と黒魔道ですか!」
ネリは目を大きく開き驚いている。
「あれ?ダメですか?」
あたしは不安になり、おどおどしていると
「いえいえ、問題ありませんよ。ただ、通常は近接戦を選ぶ方は魔道は苦手なので…」
あ、そう言えばニゲラさんも『黒魔道士か!なら近接戦は苦手だろ!』って言ってたなぁ
「シオンは近接戦だけにしますぅ」
シオンは説明が長かったのか、少しダレていた。
「はい、シオンさまは近接戦のみですね。それでは試験はお1人ずつとなりますので、シオンさまからでよろしいですか?」
「はい、お願いします」
あたし達は頭を下げて試験を申し込んだ。
「それでは、試験会場へご案内します。あ、試験は他の冒険者さんにも公開されていますので、見学者が居るかもしれませんが、気にせず全力を出しきって下さいね」
ネリはそう言いながら、試験会場へ案内を始めた。
え?
見学者?
ちょっと恥ずかしいんだけど…
などと思うが、言える訳もなく黙って付いていく。
会議室を出て、廊下を更に進むと『試験会場』が見えてきた。
そこは、とおさまが招待者と戦った闘技場と同じ広場で、広場を囲むように観覧席が設置されていた。
「やっぱり、あの廊下の感じは闘技場だったのね…」
ルビアは広場に入り、周りを見渡す。
観覧席には数名の見学者がいた。その中にコーナス達の姿を見つけて、軽く手を振る。
「ルビアー!シオーン!がんばれよー!」
観覧席に居るコーナスの声援が聞こえる。
やはり、この『試験会場』もあの闘技場と同じように『悪趣味な配慮』がされているようだった。
「ま、やるしかないか!」
あたしとシオンはお互いに見て、覚悟を決めた。




