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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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古い魔界の男と、新しい魔界の男

「なるほど… ルビアが強いわけだ…」

コーナスは吹き出した肉を拾い、口に戻した。


「……きたない」

アキレアがボソッとつぶやく。


「もったいないだろ!?」

コーナスはもぐもぐしながら反論していた。


「もう!ちゃんとルビアちゃんの話しを聞いてあげて!」

ミモザが2人を叱り、ルビアに話しの続きを促す。


あたしは苦笑いしながら、話しを続けた。

「先日、とおさまの所に招待状が届きした。とおさまはずっと招待状を放置してたのですが、放置していた5人をまとめて受ける事にしたのです…」


「ご! 五人まとめて!? さすが魔王だな…」

コーナスはアゴをさすりながら話を聞いている。


「はい、とおさまは3人をあっという間に殺してしまいました。それがあまりにも一方的過ぎて、残り2人が戦意を無くしたのです」


ごくり…

コーナスとアキレア、ミモザが息を飲む音が聞こえたような気がした。


「とおさまは急にやる気を無くされて、あたしに残り2人の相手をさせると言い出したのです」


「無茶苦茶だな…」

コーナスはつぶやく。


「あたしは、仕方なく2人と戦いました。そこであたしは手を抜いてしまったのです。2人を殺したくなくて…」

ルビアは俯き、両手で服の裾を握りしめていた。


「その2人って?」

コーナスはお酒を一口飲んで質問する。


「たしか、武闘家のニゲラさんと、黒魔道士のマルバさん……だったような?」

クルクマが話していたことを思い出して答える。


「ニゲラとマルバ!?」

コーナスは思わず立ち上がる。


「コーナス、知ってるの?」

ミモザはコーナスの反応に驚く。


「あぁ、有名な2人だ。恐らくこの辺でニゲラやマルバに勝てる奴はいない…」


「そんな2人と戦わされたの!?」

ミモザが目を丸くして驚き、それと一緒に憤りを感じていた。


「そんな2人を相手に、手を抜いてって…」

コーナスは席に座り直し、お酒を飲む。


「ん?まさか2人同時に?」

コーナスはルビアを見る。


「え? はい、同時ですが?」


「な!なんだって!!!」

コーナスはまた立ち上がる。


「いや、いい。とにかく続きを…」

コーナスは座り直し、話しが進まないことを詫びる。


「あたしが2人との戦いに本気を出さなかったことに、とおさまがお怒りになって…。魔界をまわってマシになるまで帰ってくるなと言われたのです。それでシオンと旅に出ることになったのです」

あたしはシオンをチラッと見る。

シオンは肉料理を美味しそうに食べており、ルビアの話しは全く聞いてなかった。


「なるほど。それで『魔界を回る必要がある』と言っていたのか…。ところでシオンはなぜルビアと旅に出る事にしたのだ?」

コーナスはシオンを見る。


「シオンはルビアさまのお供ですからぁ」

うへへへ とシオンは笑っている。


「ルビアちゃんと、シオンちゃんて姉妹じゃないのよね?」

ミモザがルビアを見る。

実はあたしは100万人目の転生者で、シオンはあたしのサポートの為に召喚された…なんて言えるわけもなく困っていると


「シオンは、ルビアさまに一生ついて行くと決められてますぅ。だから、ルビアさまがどこに行っても付いて行くのですぅ」

シオンがクネクネしながら答えた。


「なるほど、そういう家系なんだな…」

コーナスが、なんかうまいこと納得してくれたので、


「そ… そうなんです。あたしとシオンはいつまでも一緒なんです」

あははは と、笑って誤魔化す。


あたしは俯き、少し躊躇しながら聞いた。

「みなさんは、あたしを軽蔑しないのですか?真剣な戦いで手を抜いてしまったあたしを…」

あたしは涙ぐんでいた。


コーナスは腕を組み、少し考えてから口を開いた。

「んー、確かに、オレの親世代はそんな考えをしている人が多いと思う。確かにその考え方は正しいと思う。オレの爺さんも誇り高く戦って死んだ。それはオレも誇りに思っているし、それが魔界の男だ。」


コーナスは一息つき、続けた。

「でもな、そんな強いヤツと戦えるのに、一回で終わりだなんてもったいないと思わないか?オレは何度も戦いたい。そして、お互いが強くなれたら、もっともっと戦いたい。オレはそう考えるぞ」

コーナスはニコッと笑った。


「そうよね!話しを聞いて思ったけど、ルビアちゃん全然悪くないじゃない!それより、お父さま、ちょっと無茶苦茶過ぎない? あ、悪口言ってゴメンなさい…」

ミモザが興奮気味に話し、自分の失言に気付いて詫びる。


「いえ、あたしも無茶苦茶だと思います。と、言うかずっと無茶苦茶なんです!なにかとあたしとケンカしようとするし!ケンカしたら手加減しないし!あたし、まだ子供って言っても聞かないし!!」

急にとおさまに腹が立ってきて、まくし立てる。

はぁはぁと、肩で息をするルビアを見て、コーナス達は大笑いしていた。


「ルビア、お前は何も悪くない。ここに居るみんながそう思っている。だから、安心してここに居てくれ。オレ達はずっと仲間なんだから!」

コーナスがルビアの頭を撫で、アキレアとミモザに「そうだろ?」と声をかけた。


「もちろんよ!ルビアちゃんも、シオンちゃんも私の妹みたいなものよ」

ミモザは微笑んで、あたし達を抱きしめてくれた。


「……あたりまえ」

アキレアがボソリとつぶやく。


「そうと決まれば、新しい仲間達に乾杯だ!新生『竜の牙』に、オレ達の最強伝説の始まりに!」


「「乾杯!!」」


一気にお酒を飲み干したコーナスは続けた。

「ところでルビア、今朝の戦いを聞かせてくれないか?オレはおまえ達の戦いを聞きたい」

コーナスは目を子供のように輝かせていた。


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