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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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うまい酒と肉と、ルビアの話し

そこはマヴロのコロニーとよく似ていた。


コロニーの周りは壁に囲われ、出入口である門の横には小さな小屋があり門番が2〜3名常駐している。

コロニーの中心は高台になっており、リゾート地の一流ホテルのような大きな屋敷がたっている。

屋敷を中心にして円形に町が広がっていた。


コロニーに入る門では門番が通行人をチェックしていた。

「お、コーナスのぼっちやん。おかえりですか!」

恰幅の良い中年の門番が気さくに話しかけてきた。


「ぼっちゃんは勘弁してくれよ。オレも大人になったんだから…」

コーナスが照れ臭そうに挨拶している。


「へへへ、コロニーの主は変わっても、ぼっちゃんはぼっちゃんでさぁ」

門番はコーナスの背中をバンバン叩きながら笑っている。


「まいったなぁ」

コーナスは苦笑いしながら、なすがままだった。


「あれ?この子達は?ぼっちゃんのお知り合いですか?」

門番はあたし達を、上から下まで観察している。


「あぁ、オレの新しい仲間だ。よろしく頼むよ」


「ルビアです。この子はシオン。よろしくお願いします」

あたしは少し緊張しながらお辞儀をする。


「わしはセロシア。ここで門番をしている。かわいい子達だなぁ。ぼっちゃんの隠し子だったらどうしようかと思ったぞ」

がははははは と豪快に笑うセロシア。


「んなわけねーだろ。んじゃ、オレたちは行くぞ。早くメシ食いてぇんだよ」

コーナスに促されて、あたし達はコロニーの中に入って行った。



あたし達は、『竜の牙』がいつも利用しているという宿屋に向かった。

宿屋の1階は酒場となっており、お酒と料理が楽しめるようになっていた。

2階と3階が宿屋で、3階の部屋を女性用と男性用で2つ用意してもらった。


「私はお金がもったいないから一部屋でいいって、いつも言うんだけどね。コーナスはいつも二部屋とるのよ」

ミモザは女性用の部屋に荷物を運びながら教えてくれた。


「ミモザ、オレはギルドに報告してくる。あとを頼む」

コーナスは今回受けていた依頼の報告をしに、ギルドへ向かうようだった。


「はーい。お土産お願いね」

ミモザは、ふふふと口元を隠して笑う。


「なんのお土産だよ」

朗らかに笑いながらコーナスはギルドへ歩いて行った。


その頃、アキレアはすでに荷物を運び終わり、1階の酒場の隅でお酒を1人で飲んでいた。


「ルビアちゃん、シオンちゃん。あたし達も少し休憩しましょうか」

ミモザは荷物を運び終わると、あたし達を連れてアキレアに合流しテーブルに座る。


「ここのお茶は美味しいのよ」

ミモザはニコニコしながらお茶を3つ注文した。

しばらくして、店の女性がお茶を運びあたし達の前に並べてくれる。


出されたお茶は紅茶だった。

宿屋の女将さんの趣味で、茶葉と水にこだわった最高の紅茶だそうだ。

「このお茶を飲む時間が、私の一番の楽しみなのよ」

ミモザはゆっくりお茶の香りを楽しんでから、少し口に含み味と香りを楽しんでいた。


「いただきます」

カップから豊潤な紅茶の香りが漂う。


「いい香り…」

少し口に含むと、口の中から鼻の奥まで紅茶の香りがぶぁっと広がり、まるで紅茶の香りに全身包まれるような感じだ。それと同時に爽やかな味が舌の上で広がる。


「美味しい……」

今まで飲んできた紅茶とは別次元のものだった。


「でしょ?」

ミモザは幸せそうに紅茶を楽しんでいる。


お城では興味を示さなかったシオンも、この紅茶は気に入ったようで幸せそうな顔をしていた。


しばらくするとコーナスが帰ってきた。

「今回の報酬貰ってきたぞ。金貨5枚だ!今夜は美味い飯食いに行こう!」



日が暮れて、あたし達は町の中でも料理屋さんが並ぶ一角に来ていた。


「ここだ。ここの肉料理が最高なんだ」

コーナスは上機嫌で店に入って行く。

それに続いてアキレア、ミモザ、あたし達と入って行った。


コーナスは店員と少し話すと手招きし、奥の個室に通された。


コーナスは個室に入り、全員が座るとルビアを見て話し出す。

「さて、ルビア。そんな深刻な顔をするな。お前はまだ子供だから知らないだろうけど、今からお前がする話しはオレ達にとって、そんなに深刻な話しじゃない。オレ達はもっと深刻な経験をしてきたからな、お前たちとは深刻さの経験値が違うんだ」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべるコーナス。


「そうね、あたし達はきっとなにを聞いても驚かないわ」

ミモザは微笑みながらルビアとシオンを見ている。


「………」

アキレアはいつもと同じだ…


「アキレア、何か言えよ…」

頭を掻きながら苦笑いするコーナス。


「ま、そう言うことだ。ルビア。何も気にせず話してくれ。そもそも、腹が減ってるから深刻になるんだ。うまい酒を飲んで、うまい肉を食えばだいたいの事は笑えるのさ」

コーナスは満面の笑みを浮かべていた。


「ありがとうございます…」

あたしは、この人達と出会えて本当に良かったと心から思った。


部屋に料理とお酒、お茶が運び込まれ部屋中にいい匂いが充満する。


「さぁ、とりあえず食おう!話しはそれからだ!」

コーナスはお酒を一気に飲み干し、肉料理を食べだした。


みんながある程度食べ、少しお腹が満たされてきた頃、あたしは話しだした。

「実はあたし、マヴロとリアリナの娘なのです…」


「へー… マヴロとリアリナね。 え?あの魔王マヴロと、禁忌の魔女リアリナ!?」

コーナスは頬張っていた肉を吹き出した。


「えええ!?」

ミモザは飲んでいたお茶を落としそうになる。


『何を聞いても驚かない』と言っていた2人は、ルビアの第一声ですでに驚いてしまっていた…

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