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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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ヘレボルスのコロニーへの道

(深夜)

焚き火の前にはコーナスとミモザが居た。

「ねぇ、あの子たちどうして旅に出なきゃならないのかな?」

ミモザは焚き火に小枝をくべながら呟いた。


「何故だろうな。とても深い事情があるようだが…」

コーナスは黄色い目で、ルビア達が眠るテントを寂しげに見る。


「私があれくらいの歳の頃は、まだお母さんやお父さんに甘えていたわ… あの子たちがかわいそう…」

ミモザは悲しげにテントを見る。


「そうだな。だが、それをオレ達が無理矢理聞く事はできない。いつか、ルビア達が話してくれるだろう。それまで待とう」


「そうね… きっと話してくれる。それまで見守ってあげなきゃね」

ミモザは優しく笑っていた。




(翌朝)

あたしは体の痛みを覚えながら目を覚ました。

今まではベッドで寝ていたが、昨日はテントの中とはいえ、土の上で寝たのだ。体のあちこちが痛くなるのは仕方ない。


隣でシオンがまだネコのように丸まって眠っている。

あたしはシオンを起こさないように、そっとテントから出た。

外ではすでにみんな起きており、ミモザが朝食の用意をしていた。


「おはようございます…」

少しぼーっとする頭を起こしながら挨拶する。


「あら、ルビアちゃんおはよう。少しは眠れた?」

ミモザはルビアを見ると、朝食の準備の手を止めて話しかけた。


「ちょっと体が痛いですね…」

あはは と笑いながら体をさする。


「そりゃ、そうよね。私も初めは慣れなくて大変だったわ」

ふふふ と口元を隠して笑う。


「お!ルビア、起きたか。さぁ、顔を洗っておいで。向こうに水を置いているから」

コーナスが布で顔を拭きながらやって来て、来た方向を指差す。


「はい、シオンも起こしてきますね」

あたしはテントに戻り、まだ寝ているシオンを起こして顔を洗いに行く。


顔を洗って戻って来ると朝食の準備が終わっていた。


「あ、ごめんなさい。なにもお手伝いしなくて…」

ルビアは頭を下げる。


「ふふふ。いいのよ。これは私の趣味でもあるの」

ミモザは朝食を取り分けて、みんなに配っていた。


「ミモザのメシは美味いぞ!」

「コーナス、そんなにハードル上げないで」

あははは とコーナスは笑っている。朝から元気だ。


アキレアは相変わらず無口で、朝食を受け取ると

「……いただきます」

と、つぶやいて食べ始める。この人はこれが通常なんだ…

ルビアはそう理解した。



朝食の余韻を楽しみながら、お湯を飲んでいた。

あたしは、ふと気になったので聞いてみた。

「コーナスさん達は、若そうに見えますがおいくつなんですか?」


「ん?言ってなかったか?」

コーナスはお湯をすすりながらルビアを見る。


「はい…。若そうだなぁって思ってたけど、歳と見た目が一緒なのは人種くらいですから、よく分からなくて…」

魔界にはさまざまな種族が存在している。【かえで】の記憶から人種はほぼ見た目で年齢が判るが、その他の種族はさっぱり分からないのだ。


「あぁ、そうか。うっかりしてたな。オレは竜人で22歳。アキレアは人種で24歳。ミモザも人種で18歳だ」


「やっぱり、みなさんお若いのですね!」

つい、21歳の【かえで】に戻り同年代の感覚になる。


「いや、10歳の女の子に言われても…」

ミモザとコーナスは頭を掻いていた。


あははは とルビアは笑って誤魔化していた…



朝食も終わり、出発の準備を整える。


「コーナスさん、今からどこへ向かうのですか?」

あたしはバックパックを背負いながら、コーナスへ声をかけた。


「まずは、オレたちの拠点であるヘレボルスのコロニーに向かう。ここから東のコロニーで、元ドラセナのコロニーだ」


「ドラセナさまの…」


「あぁ、ドラセナのコロニーだった場所だ。今は少し治安が悪くなってしまったがオレの故郷であり、オレ達『竜の牙』の拠点となるコロニーだ。ここから、あと5日くらいで着く予定だ」


「はい!がんばって歩きます!」

ルビアは明るく返事をする。【かえで】の感覚だと元ドラセナのコロニーに戻るのは、コーナスにとって何か思うところがあるのでは?と、気にしてしまうが、コーナス本人からはそんな感じはない。

これが『魔界の普通』なのだろう…と、割り切って考えるようにした。



何事もなく草原を歩き3日が経った。

草原から北側にあった森は、草原を侵食するように広がりつつあり、あたし達が歩いている道は森の端を掠めるように続いていた。


「ここからは森が近い。森からモンスターが出てくる事も多くなる。みんな、気を引き締めろ」

コーナスがみんなに注意を促す。


しばらく歩くと、道と森の距離が500mくらいになった。


「…!」

あたしは魔力を感知する、と同時にシオンが反応した。


「…ルビアさま!」

「うん、わかってる! コーナスさん!」

ルビアは前を歩くコーナスに声をかける。


「ん?  ……!!」

コーナスはすぐに異変に気が付き臨戦態勢に入る。


「敵襲!」

コーナスが短く叫ぶと、アキレアはボウガン引き絞り、ミモザはルビアとシオンを背中に隠す。


あたしは、とおさまに貰った龍の装飾がされたナックルを両手に嵌め、ショートソードを腰から外してシオンに渡す。

「シオン、あたし剣使えないからコレ使って!」


「あぃー」

シオンはショートソードを受け取ると、鞘から剣を抜き両手で構える。ショートソードの刃は少し青白く見えた。


こちらの戦闘態勢が整う頃、森からゴブリンが8体とオークが2体、姿を現した。

ゴブリンは弓やボロボロのショートソードを装備し、オークは刃が欠けたバトルアックスを片手に持っていた。


「オークと、ゴブリンか… アキレア!行くぞ!」

コーナスが叫ぶと同時に、ゴブリン達も叫びこちらへ突撃を開始した。


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