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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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竜の牙

コーナスの仲間になったルビア達は、冒険の基本的な事を教えてもらっていた。


「なるほど、やはり野営する時は夜番しなきゃダメなんですね」


「そうね、寝ている時に魔獣や盗賊に襲われる事もあるし、荷物を盗られることもあるわ。基本的は2人で夜番をしてるの。片方に何かあっても、もう1人が大声を上げることができるでしょ?」

ミモザはお湯を飲みながら説明してくれた。


「さっき、シオンとも夜番どうしよう…って話してたところなんです。そこにコーナスさまが来られて…」

ルビアはさっきの出来事を思い出し、緊張していた事を笑って誤魔化す。


「おいおい、ルビア。もう仲間なんだから『さま』はやめてくれよ。コーナスでいいよ」

コーナスは器用に肩を竦めていた。


「呼び捨てはちょっと… では、コーナスさんって呼びますね」

ルビアの頬が少し紅くなって見えるのは、照れているのか、焚き火の灯りのせいかはわからない。


「コーナス、新しい仲間たちにパーティのこと説明しなくていいの?」

ミモザはルビアたちをチラッと見て、コーナスに話しかける。


「そうだな、簡単に説明するよ。オレ達のパーティは『竜の牙』って名乗っている。メンバーはここにいる3人で、一応リーダーはオレがやってる。」

コーナスは胸を張り、親指を立てて自分を指した。


「コーナスは竜人なの。だから『竜の牙』ってパーティ名にしたのよ。うちのリーダー自己主張が激しのよ」

うふふふふ と口元を隠して笑うミモザは本当に楽しそうだ。


「………」


「あそこで一言も喋らないヤツが居るからな、オレがその分頑張ってるんだよ」

コーナスはアキレアを指差して笑っている。


「………」

焚き火の火から目を離さないアキレア。


ルビアはあははは 自然と笑い声が出ていた。


「オレ達、竜の牙は商人の護衛任務をメインにしている。その方が確実にお金が貰えるし、オレは魔界をいろいろ見て回りたいんだ。だから、護衛任務は都合がいいのさ」


「なるほど… あたしも魔界を見て回らなきゃならないのです。一緒に連れて行って下さい!」

ルビアの目的とパーティ竜の牙の目的が合致した。


「そうなのか!これもドラセラの導きだなぁ」

コーナスは腕を組み、うんうんと頷いている。


「それじゃ、次はルビア達の事を聞いてもいいかな?まず、2人は得意な事ってある?」

コーナスはニコッ微笑み、ルビアとシオンを交互に見る。


あたしは少し困惑していた。正直に話してもいいのだろうか?もちろんスキルを話すことはしないが、どの程度話すか?隠してバレた時にどうなるのか?

しばらく困って黙っていると


「シオンは隠れるのが得意ですぅ」

うへへへ と両手で自分の体を抱きしめてクネクネしている。


シオンの答えを聞き、軽く答えるくらいでいいのかと理解する。

「あたしは、魔法が少しと、ケンカくらいかな… いつも、とおさまとケンカしてました」


「お!シオンはかくれんぼが得意か!ルビアは魔法が使えるのか!しかもケンカも!? こりゃすごい!竜の牙の秘密兵器だな!」

あははは とコーナスは豪快に笑う。

ミモザも うふふふと口元を隠して笑っていた。


たぶん、子供の言う事だからまともに信じてないだうな…

ルビアは、ははははと乾いた笑いで誤魔化していた。


「いつから2人で旅をしているの?」

ミモザはあたし達に、お湯のおかわりを入れつつ聞いてきた。


「今日の朝からです…」

あたしは素直に答えた。


「え?」

ミモザは驚き、大きな目が更に大きくなる。


「旅の初日だったのか!オレ達は運が良かったんだな!少しでも何かがズレていたら出会えていなかったのか…」

コーナスは感慨深く目を閉じて、うんうんと頷いている。


あたしはどうしても気になって聞いてしまった。

「コーナスさん、アキレアさんは焚き火が好きなんですか?」


「あはははは、アキレア!ご質問だぞ?」

コーナスがアキレアに話題を振る。


「……癒し」

アキレアはボソリと呟くだけだった。


「あぃー。火を見てると、なんか癒されますねぇ」

シオンがアキレアの隣に座り、一緒に焚き火を見つめる。


「……お前、いいやつ」

アキレアが細い目でシオンを見て、また焚き火を見つめる。


「あぃー」

不思議な雰囲気がアキレアとシオンを包み込む。


「……あの2人を一緒に夜番させたらダメだな」

コーナスは、苦笑いしていた。



「さて、明日もたくさん移動するし、そろそろ休むか。ルビアとシオンはゆっくり休むといい。今晩は疲れただろう?」

コーナスの提案にミモザも「そうね、それがいいわ」と同意していたが、あたしは断った。


「そ!それはダメです!あたし達も夜番します!」


「旅の初日だろ?無理するなよ?」

コーナスが諭すように話しかける。


「あたしたちは竜の牙の仲間になりました。だから、出来る事はさせて下さい」

ルビアは真剣な顔でコーナスとミモザを見つめる。


「…コーナス」

ミモザはコーナスを見る。


「んー。わかった。ルビアの言うことは正しい。オレが間違っていた。夜番を頼む」


「よかった」

ルビアはパァと表情を明るくし、安堵の息を吐いた。


夜番は、輪番制で

①コーナスとシオン

②ミモザとルビア

③アキレアとコーナス

の順番で行うことに決まった。


ルビアがペアの根拠を聞くと


「アキレアとシオンをペアにしたらダメだ。夜番にならん… オレは竜人だからあまり寝なくても大丈夫なのだ」


なるほど。アキレアさんとシオンが夜番したら、ずっと2人で焚き火見てるだけかも…


初めての野営の夜は、こうして平和に朝を迎えることができたのだった。

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