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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第1章 旅立ち編
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冒険者との遭遇ー2

最初に口を開いたのはミモザだった。赤い髪が印象的な女性は、頬にそばかすがあり目が大きく可愛い感じで白いローブを着ていた。


「いらっしゃい。うちのリーダーがあなた達を気にして挙動不審だったのよ」

うふふふ と口元を隠して笑う。


「ミモザ、挙動不審はないだろ…」

コーナスは頭を掻きながら焚き火近くにある石に腰掛けた。


「こっちにいらっしゃい」

ミモザば微笑んで、ルビアたちをミモザの横に置いた石に座るように促した。


「ありがとうございます…」

あたし達は、ミモザの横にある石に2人並んで座る。

あたしは焚き火の灯りと暖かさを感じ、コーナス達の優しい目に見つめられて緊張が解けてしまった。

気がつくと、あたしの目から涙が溢れていた。


「あ…あれ?」


「不安だったよね…」

ミモザは少し涙目になり、あたしを抱きしめ頭をなでてくれた。


「2人は何か深い事情があるようだ。しばらく…せめて2人が落ち着くところに着くまで一緒に行動しようと思うのだが、いいか?」

コーナスはアキレアとミモザを交互に見て提案した。


「……リーダーがそう思うなら、そうすればいい」

アキレアは細い目を更に細くして、焚き火の火を見ながらボソリと賛成する。


「もちろんよ。こんな小さな子ほっとけないわ」

ミモザはルビアとシオンを両脇に抱いて賛成した。


「ありがとう… さて、お嬢さんたち、自己紹介をお願いしてもいいかな?」

コーナスはあたし達を見て微笑んでいた。


「はい、あたしはルビア。10歳です。ちょっと事情があってコロニーに居られなくなり旅に出ました。この子はシオン。あたしの親友です。」


「あぃー。シオンはルビアさまのお供なので離れません」

シオンはいつもクネクネしている。


「ルビアちゃんとシオンちゃんね…」

ミモザは2人の頬を撫でながら名前を確認する。


「……」

アキレアは細い目でチラリと2人を見て、また焚き火の火に視線を戻した。


「あぁ、気にしないでくれ。アキレアはいつもこんな感じだ。ところでルビア、君たちはどこへ行くんだい?何かあてがあるのか?」

コーナスは仲間の態度を詫びつつ話を戻す。


「はい、あたし達は東に向かってます。竜人のドラセナさまを訪ねるつもりです」


「ドラセナ!?」

コーナスは一瞬腰を浮かせ、また石に座る。


「???」

ルビアは何かまずい事を言ってしまったのか?と不安になりながらコーナスを見ていた。


「あぁ、すまない。思わぬ名前が出たものでね… ドラセナに会ってどうするつもりなんだい?」


「えと、コロニーを出るとき、かあさまからドラセナさまを訪ねなさいって。力になってくれるハズだからって…」


「なるほど… すまない、ドラセナに会うことはできない」

コーナスは少し俯き、焚き火の火を見つめる。


「なぜですか?」

ルビアは困惑した表情でコーナスを見ていた。


「実は、ドラセナは数年前に亡くなったのだ。ここらか東にあるコロニーの主だったのだが、招待状が届いてね。ドラセナはもうずいぶんと老いていた。オレたちは招待状を受ける必要はないと言ったのだが、ドラセナのプライドがそれを許さなかったんだ…」


「え?亡くなった…?」

驚愕の事実だった。旅が始まってすぐに目的地がなくなったのだ。


「あぁ、オレはドラセナの孫だ。オレはドラセナの死後、コロニーを出て冒険者をしている。この2人は元々はドラセナの元で働いていたが、オレが冒険者になる時について来てくれたんだ…」

コーナスは2人を優しい目で見ると、すぐに目を逸らした。


「コーナスさま、私たちはずっとお側に付いてますよ」

ミモザは微笑んでいる。その目は主従のそれとは違うものだった。

アキレアは相変わらず焚き火の火を見ている。


「そうなんですか…。コーナスさまは、ドラセナさまの仇を討とうと考えているのですか?」

ルビアは【かえで】の感覚から、仇討ちのために修行の旅に出たのかと思ったのだ。


「え?なぜ仇討ちを?」

コーナスはキョトンとしている。


「え?…あ、あのお爺さんが殺されたから…」

ルビアは自信がなくなり、言葉の最後は消えそうになる。


「ルビアは変わった考えをしてるんだね。もちろんお爺さまが、亡くなることは悲しい。でも、お爺さまはプライドを持ち、招待状を受けた。結果的には負けて亡くなったが、それは名誉あることだ。オレ達はそれを誇りに思っているよ」

コーナスの表情は、凛々しく、自信に満ち溢れていた。


「そうなんですね」

ルビアはこの考え方を理解出来ないと思ったが、反面、羨ましいとも思った。


「ところで、ルビア。君たちの目的が無くなってしまったのだが、これからどうするつもりだい?」

コーナスの問いに、あたしは戸惑っていた。

かあさまの言う通りドラセナさまに会えばなんとかなると考えおり、その先の事など考えもしなかったからだ。


「………」


全員がルビアの答えを待つが、答えなんて出てくる訳がない。ただ、沈黙が続いていた。


「もしよかったら、オレたちと冒険しないか?とは言っても基本的には商人の護衛くらいしかしていないけどな。ドラセナの孫として、ドラセナを頼る者を放ってはおけないしな…」


「いいのですか?」


「あぁ、構わないとも!これもドラセナが導いた縁だ」

コーナスはニコリと微笑む。


ルビアはシオンをチラッと見る。

シオンは黙って頷いていた。


「ありがとうございます!よろしくお願いします!」

ルビアは立ち上がり、額が太ももに付くのではないかと言う勢いで頭を下げていた。


「あはははは。ルビア、シオン。今から君たちはオレ達の仲間だ」

コーナスは朗らかに笑っていたが、急にハッとした顔になり

「あー、と言うことでアキレア、ミモザよろしく頼むよ」

ははは と乾いた笑いを浮かべ頭を掻いていた。


「リーダー、私たちはドラセナさまの話しが出た時から、こうなると思ってましたよ」

ふふふ とミモザは口元を隠して笑っている。


「………わかってた」

アキレアは焚き火の火を見つめ続けている。


「あはは、ありがとう。さすがオレの仲間だ!」


新しい仲間を得たあたし達は、焚き火を囲んで穏やかに過ごしていた。

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