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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第3章 悪魔編
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エピローグ かえで

わたしが目を覚ますと、そこは見慣れた部屋だった。


「ここは… ()()()()()の部屋…」


周りを見ると、姉様が過ごしていた時と何も変わっていなかった。

わたしは部屋を歩きながらルビア姉様の日常を思い出していた。


ここで姉様は着替え…

ここで姉様は身嗜みを整えていた…

そうそう、ここで姉様はいつも頭をぶつけてうずくまるの

「ふふふ」と思い出し笑いをしながらベットに戻り部屋を見渡す。


(ルビア姉様… 本当にいなくなってしまったのね…)


ふと、部屋の端にある姿見を見ると、ベットにはルビアが座りこちらを見ていた。

(こうして見ると、まだルビア姉様がそこにいるみたいなのに…)


わたしは姿見に映る自分の姿を見て、涙を浮かべていた。


コンコン

ドアをノックする音がして、ゆっくりとドアが開くとミモザさんが花を花瓶に生けて持っていた。

ミモザさんは俯いたまま、部屋に入り数歩歩いた所でわたしと目があった。


「あ、ミモザさん…」


「ルビアちゃん…」

ミモザさんは花瓶を落とし固まったまま、わたしを見ていた。


わたしは、ふるふると首を横に振り

「ごめんなさい。 わたしは『かえで』。ルビア姉様の双子の妹です…」


「あ… ごめんなさい。 わたしったら…」

ミモザさんは、もたもたと落とした花瓶を拾い後片付けをする。


「いいえ、わたしの方こそごめんなさい…」

わたしは花瓶の片付けを手伝い、ミモザさんに謝るとミモザさんがわたしに抱きつき、声を殺して泣いていた。


「かえでさん、ごめんなさい。でも… 少しだけ… 少しだけ…」

わたしはミモザさんを抱きしめて、背中を撫でながらミモザさんが落ち着くのを待った。

ミモザさんが落ち着き、わたしはルドベキア王国のみんなと会い話をする事になった。


わたしはミモザさんに連れられて、リリウムさまの執務室に入る。

執務室にはすでにリリウムさまをはじめ、竜の牙メンバー、鋼鉄の盾メンバー、闇夜の道化師メンバーが集まっていた。

みんな、わたしにどう接していいのか分からない… そんな顔をしていた。


「みなさま。はじめまして… と、言うのも変なんですが。わたしはルビア姉様の双子の妹『かえで』です。 わたしはかあさまのお腹の中にいた時に、ルビア姉様に取り込まれ、ずっと姉様の中からみなさまを見ていました」

わたしはみんなの顔を見ると、ニコッと笑い頭を下げた。


「わたしと姉様につけられた名前は()()()だけですので、わたしは姉様の前の名前『かえで』を名乗ることにしました。姉様はいつもわたしに罪悪感を持っていたようですが… わたしにとって姉様の中にいた時間は、とても幸せでした」

わたしは胸に手を当て、姉様と過ごした時間を思い出していた。


「わたしはただの人間です。姉様のような力も、知恵もありません。まして魔導なんて使えません。 そんなわたしは、姉様の活躍を誰よりも一番近い場所から見てきました。 それは、とてもスリリングで、エキサイティングな素晴らしい時間でした」

わたしは、ふふふと笑いながら話していると


「スリリング? エキサイティング?」

みんながキョトンとしていた。


「あ、そうか。これはルビア姉様の知識か… えーっと、とても刺激的で楽しかったって事です」

てへへ と笑って誤魔化す。


「…ルビアちゃん」

ミモザさんは、わたしのちょっとした仕草にルビア姉様を見ているみたいだった。



「みなさん、わたしは姉様のように戦う事はできません。 見た目は姉様と同じわたしと過ごす事に抵抗があると思いますが… 精一杯働きますので… どうか、わたしをここに置いてください。お願いします!」

わたしはオデコがヒザに付くくらい頭を下げてお願いをした。


みんなにとって、わたしは微妙な存在だと思う…

でも、わたしにとって、みんなは仲間であり、家族なのだ…

姉様が培ってきたこの世界は、もうわたしの世界でもあるのだ…


「かえで。 何を言っている? お前はオレ達の家族じゃないか。オレ達と一緒にいるのが当たり前なんだぞ?」

コーナスさんは、ニカッと笑い手を伸ばして握手を求めてきた。


「ありがとうございます…」

わたしはコーナスさんの手を握ると、そこにミモザさん、アキレアさん、アオイさんと手を乗せてきた。


「かえでちゃんがイヤだと言っても、わたし達は家族だし、ルビアちゃんの妹ならわたしの妹なのよ」

ミモザさんが笑っていた。


「……家族」

アキレアさんは、ぼそっと呟き笑う。


「かえでちゃん、たくさんルビアちゃんの話しを聞かせて! まぁ、少しくらいシオンの話しも聞くけどさ」

アオイさんは涙をいっぱい浮かべながら笑っていた。


「かえでさん、あなたはルドベキア王国の一員なのですよ。ずっとここにいて下さいね」

リリウムさまがニコニコしながら、わたしを見つめてくれていた。


「みなさん… ありがとうございます!」

やはり姉様の仲間達だ。とても優しく、強い。わたしはなぜか誇らしく思っていた。



◇◇◇◇


数ヶ月後



わたしはステラリアさんと一緒に、あの酒場で働いている。

お客さんや町の人たちは、いまだにわたしを『ルビアちゃん』と呼び、その度にステラリアさんが怒り訂正させていた。


わたしは、ここに姉様が生きていた証であると思い、『ルビアちゃん』と呼ばれる事も嬉しかった。



「あ、そろそろいつもの時間ですね」

わたしはステラリアさんに耳打ちされた。


「え? あ、ホントですね」

わたしは、少しだけこの時間が好きになっていた。


その時、勢いよくお店の扉が開くと

「かえでちゃん!! 今日はゴブリンを倒してきたよ! ぼく、もっともっと強くなるよ!」

と、叫びながらアオイさんが飛び込んできた。


「アオイさん、いらっしゃい。バーラでいい?」


「うん!バーラと、()()()()()()()()()! あとは、かえでちゃんが飲みたい物と… ついでにステラリアさんの分」


「ちょっと! わたしはついでなの?」

ステラリアさんは、プリプリと怒ったフリをすると笑いながら飲み物を取りに行った。


「アオイさん、いつもありがとうね」


「ううん。ぼくさ、ずっとルビアちゃんに守られていたんだ。 だから、ぼくはもっともっと強くなって、ルビアちゃんが守りたかったものを全部守ると決めたんだ!」


「ふふ、アオイさんならできるよ。姉様もシオンさんもきっと同じ事を言うわ」


「かえでちゃん、ありがとう。 かえでちゃんもぼくが守るからね! いや、ぼくに守らせてくれ!」

アオイさんは真っ赤な顔になりながら、真剣な目で真っ直ぐにわたしを見ていた。



「……お願いします」

(姉様、わたし、これからも幸せに生きていけそうです…)

わたしは、溢れた涙を指で拭いながら笑っていた…

これで100万人目の異世界転生者は終わりです。

みなさま、お付き合いいただきありがとうございました。

もし、他のキャラ目線のエピローグをご希望の方がいればご連絡下さい。

精一杯書かせて頂きます!

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