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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第3章 悪魔編
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リリウムの誤算

マモンがアニスから右手を抜くと、アニスはその場に人形のように倒れてしまった。


「あぁ、コレは返しますね」

マモンは右手にある心臓を、アニスの背中に無造作に放り投げた。鼓動を打たなくなった心臓はアニスの背中で跳ね、そのまま床に転がり落ちてしまった。


「ア…アニス総督…」

あたし達はアニスが殺されることを知っていた。知っていて、それを利用して悪魔マモンからシオンを奪うと決めていた。


しかし目の前で実際に殺されるのを目撃すると、頭では理解していても心が理解できず体が硬直してしまう。


「ふ… ふふふ ふはははは これでわたしは自由だ! わたしは自由を!体を!そして力を手に入れたのだ!!」

マモンは両手を広げて、天を仰ぐように笑うと自分の影からシオンを引きずり出した。



「シオン!!!」

シオンは意識が無いようでグッタリとしていた。


「あぁ、あなた達、いたのでしたね。わたしは今、とても気分がいい。特別にそこで見ていることを許してあげましょう」

マモンは左手でシオンを抱えたまま、右手を振るとその風圧だけであたし達は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。よく見るとマモンの体から黒い霧のようなモノが出始めていた。


「ぐっ… ふざけるな!シオンを返して!」

あたしは立ち上がりマモンを睨みつけると、リリウムさまがあたしの肩に手を置き、一歩前に出て静かに宣言した。


「マモン、わたしはリリウム。わたし達の仲間を返してもらうわ」

リリウムさまは歪な黒い翼を大きく羽ばたかせると翼から黒い霧が発生し、霧はひとつの塊となりか巨大な骸骨の上半身と姿を変えた。


「来いっ!」

リリウムさまが骸骨に命令すると骸骨はリリウムさまに覆いかぶさり、リリウムさまは黒い骸骨の鎧を着ているのような姿になった。


「ちっ  ヴァンパイアの始祖はめんどくさいですね…」

マモンはシオンを床に置き、右手を天井に向け「消えなさい」と言うと、右手から光の柱が発生した。


光の柱は部屋を覆うほど大きくなり、天に向かって勢いよく立ち昇っていく。

やがて光が収まると、地下室にいたあたし達の上に青空が広がっていた。


「んな! 建物が消えた!?」

コーナスさんが叫ぶ。


「ふふふ、ヴァンパイアの始祖とはいえ、ヴァンパイアには変わりませんよね? 日の光を浴びて消えなさい」

マモンは、ふはははと笑いながらリリウムさまを見ていると、


「うりゃ!」

リリウムさまの強烈なパンチがマモンの左頬にヒットした。


「えっ?」

マモンは左頬を手で押さえながら、目を見開いてリリウムさまを見ている。


「うりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

リリウムさまが見た目とギャップのある掛け声をあげながら、容赦のないラッシュでマモンを襲う。


「リリウムさま!加勢します!」

ティモルさんの両手の爪が伸びマモンを襲う。ティモルさんの爪は手刀ならショートソード、手を広げると5本のレイピアのようになり変幻自在な攻撃を繰り広げていた。

ティモルさんとリリウムさまの息のあった攻撃に、マモンも思わず後ろに飛び距離を取った。


「あなた、まさかディウォーカーですか!?」

マモンが叫ぶ。


「わたしの趣味は日光浴ですわ」

ニヤリとリリウムさまが笑い、ティモルさんと攻撃を再開した。



あたし達が全く手が出なかったマモンを、リリウムさまとティモルさんが翻弄している姿に呆けてしまっていると


「ルビア!! 今だ!」

コーナスさんは竜化し、シオンに向かって走り出した。


「はいっ!」

あたしも我に帰り走り出すと、アキレアさん、ミモザさん、アオイさんも走り出した。


コーナスさんがシオンとマモンの間に立ち、あたし達のルートを確保すると、アキレアさんがあたし達の逃走ルートを確保する。


あたしはシオンを抱き上げ、ミモザさんとアオイさんと共に少しでもマモンから離れようと全力で走る。



「ちっ 小賢しい真似を…」

マモンはあたし達に気付き、追いかけようとするがリリウムさま達に阻まれていた。


「マモン、あなたはこのまま消滅するのよ」

リリウムさまの攻撃は更に速度を上げ、マモンを追い込んでいく。


「リリウムさま! 御武運を!」

コーナスさんと、アキレアさんもあたし達を追って走りだした。



マモンの体からどんどん黒い霧が溢れてくる。マモンは一度リリウムさま達から距離を取り、ふぅと息を吐いた。

「時間がありませんね。ヴァンパイアの始祖よ、お前は不死者であり、ディウォーカーである事を優位に考えているようですが、それは間違いです。不死者にもそれなりに戦い方があるのですよ」


マモンはそう言うと右掌をリリウムさまに向ける。

掌の中央に光が集まりだし、小さな光の玉になるとリリウムさまに向かって射出された。


「え?」

あっという間に光の玉はリリウムさまの目の前に到着し、一気に広がるとリリウムさまを包み込んで消えてしまった。光の消えた後にはアメ玉くらいの赤い玉が転がっていた。


「…リリウムさま?」

ティモルさんは、ふるふると震えながら赤い玉を拾う…

赤い玉は水晶のような結晶で、中でリリウムさまが丸まって眠っているようだった。


「リリウムさま? リリウムさまーー!!」

ティモルさんは赤い玉を胸に抱きしめ叫んでいた。


「…マモン  貴様… 貴様だけは許さない!絶対に許しません!!」

マモンを睨むティモルさんの目が金色に変化し、髪が赤くなり始めていた。

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