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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第3章 悪魔編
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裏切り

―――(イノンド)―――



わたしは少女行方不明事件について捜査を始めた。

少女達は、親が目を離した隙や、ひとりで遊んでいた時に忽然と消えてしまうようにいなくなっていた。

捜査を進めていくが、共通点は幼い少女である事しかわからなかった。


わたしが捜査を終わり屋敷に帰ると、ニームが嬉しそうに出迎えてくれた。


「旦那さま、お帰りなさいませ」

ニームはいつもに増してニコニコしている。


「ただいま、何かいい事があったのか?」


「はい、今日アニスさまが来られ、魔界を案内してくれるとおっしゃってくださったのです。旦那さまにいつも助けて貰っているから、そのお礼だと。飛行船も用意しているから、3日後、旦那さまと一緒に来て欲しいとの事でした」

ニームは子供のように目をキラキラさせながら話してくれた。


(アニス総督。まだ、わたしは捜査の結果も出せていないのに… お礼を言いたいのはわたしの方だというのに…)


わたしは出発までの3日のうちに、少しでも手掛かりを見つけようと決意し、必死に捜査を進めていた。


そんなある日、また少女が行方不明になる事件が発生した。

わたしは急いで現場に向かい捜査を開始する。


今回は事件発生から時間が短かった事もあり、いくつかの手掛かりを見つける事ができた。


行方不明になった少女がいた付近で大人の足跡を見つけたのだ。足跡を調べていくと、その大人の動きがわかってきた。

その大人は迷いなく少女の側に行き、少しだけその場に留まると、少女と一緒に歩いて移動していた。

足跡の距離や動きを見ると、まるで2人は顔見知りのように手を繋いで歩いてるようだった。


今までに行方不明になった少女同士は接触した形跡がなく、お互いの顔さえ知らない他人であることは分かっていた。

この足跡の大人が少女達を連れ去った犯人だとすると、少なくとも犯人を通じて少女達は見知った仲であるはずだが…

いや、1人だけいる…

その人なら、ジギタリス帝国で知らない人はいない。その上、大人から子供まで無条件で信頼している。

もしその人が少女に声をかければ、少女は何の疑いもなくついて行くだろう…


(そうだ、あそこに行けば記録があるはず…)

わたしは、その人が犯人ではないと信じ、わたしの考えが間違っている事を確かめるため飛行船乗り場に向かった。


飛行船乗り場で、過去の搭乗記録を調べる。

あの人が、事件当日ここに居ないと証明できれば、わたしの間違いは確定できる。


わたしは祈るような気持ちで搭乗記録を調べた。

しかし、わたしの祈りは通じなかった…


(そんな、バカな… ありえない… わたしは何かを間違えているはず…)


わたしは搭乗記録をぼんやりと見ながら考えていた。

その時、背後から声が聞こえた。


「こんな短期間で、ここまでたどり着くとは。さすがだな…」


わたしは声がする方を振り向き叫んだ。

「ウソだと言って下さい。お前は間違えていると言って下さい… アニス総督!!」


そこには少女を小脇に抱えたアニス総督が立っていた。


「イノンド、お前の役目はあと1つだけだ」

アニス総督はそう言うと一瞬で数メートルあった間合いを詰め、右拳がわたしの腹に減り込んでいた。


「がはっ」

わたしの意識は、アニス総督の一撃で刈り取られてしまった…






「ぅ… ん? ゔゔ!! ゔゔゔ!!」

わたしは気がつくと見知らぬ部屋に転がされていた。

手足は縛られ、口には猿轡がされている。


ふと、横を見るとロベッジ皇子がわたしと同じ姿で転がされていた。


「ゔゔ!! ゔゔゔ!!」

ロベッジ皇子はわたしの声で気がついたようだった。


その部屋には窓がなく、入口がひとつあるだけだった。壁にある小さなランプの明かりだけを頼りに部屋を見渡す。


部屋にはわたしとロベッジ皇子以外に、4人の少女が同じように手足を縛られて床に横たわっている。

少女達は目が覚めているようで、涙を流していたが、猿轡をされているため声を出す事が出来ずにいた。


部屋の中心にはベットと同じくらいの大きさのテーブルが置いてあり、部屋の端には大きなバケツが2つと、祭壇のようなものが飾られていた。

天井には大きめのフックがあり、一本のロープが掛けてあった。


(この部屋はいったい?)

わたしが部屋を見ていると、部屋に1つしかないドアが開き、アニス総督が現れた。


「お、イノンド、ロベッジ皇子、目が覚めましたか」

アニス総督はニームを肩に担いでいた。

ニームはぐったりとしており、気を失っているようだった。


「ゔゔ!ゔゔゔゔ!!」

わたしとロベッジ皇子が叫ぶが、言葉にならない。


アニス総督はニームをテーブルに寝かせると、手足をテーブルに固定する。

「やっとだ… やっと、全てを揃える事ができた」


その時、ニームが目を覚ました。


「え? ここは?」


「これはこれはニーム皇女。目が覚めましたか」


「アニスさま?ここはどこですか? え?これはいったい?」

ニームは手足が固定されている事に気がつき、ジタバタともがきテーブルがギシギシと音を立てる。


ロベッジ皇子とわたしは叫び続けるが、アニス総督は振り向きもしなかった。


「ニーム皇女、あなたはこれから生まれ変わるのです。そして、ワシの為に働くのです」


「アニスさま?いったい何をおっしゃっているのですか? コレを外して下さい!!」


「ふふふ。やっと願いが叶うのです。ワシの願いは世界の願い。ニーム皇女は世界を救うのですよ! さぁ!儀式を始めよう!!」


アニス総督は両手を広げ、あーははははははと部屋を狂気の笑いで埋め尽くしていた。

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