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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第3章 悪魔編
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悪魔の理想

リリウムさまは机に置かれた古い本に手を置き、全員の顔を見る。


「まずは悪魔について、わたしの知見と今回調べた結果をもとにお話しします」

リリウムさまは椅子に座り、古い本をめくりながら話した。


―――(リリウムの話し)―――


悪魔とは私たちが生きているこの世界より上の領域に住む者で、肉体を持たず魂だけで生きている者である。


悪魔にはランクがあり、グールやガーゴイル、ケルベロスなどは下位悪魔と呼ばれおり、上位悪魔の使い魔であることが多い。

上位悪魔は知性が高く人間と契約する事で、この世に現れ契約内容を履行する。


下位悪魔の見た目は異形であるが、上位悪魔は美しい人の外見をしていると言われている。



上位悪魔を召喚し契約する事ができれば、悪魔を使役する事ができる。


上位悪魔を召喚する為に必要なものは

・強い恨みや呪い

・受肉させる肉体(高貴な身分の肉体であること)

・処女の血


悪魔と契約をすれば、悪魔は契約内容をあらゆる手段を持ちいて履行するが、それは必ず召喚者(契約者)の思い通りになるとは限らない。

悪魔は契約内容を曲解し、都合のいいように読み替える事が多いため、契約内容は単純な方がよいとされている。

契約が履行された後、召喚者(契約者)は死後、悪魔の下僕となる。


――――――


「つまり悪魔と契約し願いを叶えた後は、永遠に悪魔の下僕となるのですね…」

リリウムさまの話しを聞き、グニーさまが感想を述べる。


「そうですね。確かに願いは叶うかもしれまれんが、永遠に下僕となる事と見合うほどの願いがあるとは思えません…」

リリウムさまも悪魔召喚する人が理解できないと考えているようだった。


「召喚する者は、よほど破滅願望があるようじゃの」

クレアさんが、ふんっと鼻から息を吐き出す。


「しかし悪魔マモンが現れたという事は、その破滅願望を持った者がいた…という事ですね」

ゴデチアさまは、常に流れる汗を拭きながら喋る。


「その召喚者の『願い』とはなんでしょう?もし、それが分かれば召喚者の特定や、シオンが連れて行かれた理由と場所が分かるかもしれないのだが…」

グニーさまは腕を組み考える。


「そうですね… あと、悪魔マモンはシオンさんをなぜ『天使』と呼んでいたのか…?」

リリウムさまも考える。



あたしは、シオンが天使と呼ばれる理由を知っている。しかし、それを言うべきかずっと悩んでいた。

あたしは転生者で、シオンは運命の女神ルリアが授けてくれた子。

今までも隠す理由はなかった…

ただ、誰も信じないだろうから言わなかっただけ…


でも、今回は状況が違う。シオンを助ける為には少しでも情報は多い方がいい……はず。


「あ…あの…」

あたしは決心した。


「どうしましたか?」

リリウムさまがこちらを見ると、貴族のみなさまも、そしてコーナスさん達もあたしを見る。


「あの… シオンが『天使』と呼ばれる理由は、あたし知ってます…」

少し俯きながら話す。


「え?それはいったい?」

リリウムさまは、少し驚いてあたしに話しの続きを催促していた。


「はい、実はあたしは違う世界、『異世界』から転生してきました。そして、シオンは運命の女神ルリアから授けて頂いたのです」

あたしは、みんながどんな反応するのか怖かった。怖くて震えながら、みんなの反応を上目で見ると ………固まっていた。


(あぁ… やっぱり言うんじゃなかったかも…)

少し後悔する。


「あ…あの。シオンは運命の女神ルリアから生まれた子なのです。だから、シオンは『天使』なのです。悪魔マモンがシオンを連れ去るとき、そう言ってました」

あたしが悪魔マモンと対峙した時、あいつはそう言っていた。そういえば、あたしにも興味を持っていたようだったけど…

まぁ、いまは関係ない話しだ。


「えーと、ルビア?」

コーナスさんが少し困った顔で話しかけてくる。


「やっぱり信じてもらえませんよね…」

あたしは俯き、指を組んでモジモジしていた。

大広間は水を打ったように静かになっていた。


「ルビアさん、詳しく教えて下さい」

そんな中リリウムさまだけは、あたしを真剣に見ていた。


「え?あ、はい。…あたしはこの世界とは違う日本という国で生まれ… 死にました。その時、あたしの魂は運命の女神ルリアの下に行き、この魔界に転生したのです。その際、女神ルリアは『魔界に着いたら、シオンを呼び出しなさい』と言っていたのです。あたしは、言われた通りシオンを呼び出しました。そうして、あたしは今までシオンと一緒に生きてきたのです」

まぁ、いろいろ端折ったけど、大筋はこんな感じだ。


「そうだったんですか…」

リリウムさまは口に手を当て、驚いていた。

貴族さまやコーナスさん達も、言葉を失っていた。


「でも、悪魔マモンが天使であるシオンを連れて行く理由は分かりません…」

あたしは、それが分からなかった。

なぜマモンは『天使』を見つけて喜んでいたのか?

わざわざ殺さずに連れて行く理由は?

悪魔にとって『天使』の価値とは?

マモンの目的はいったい…?


「ルビアさん、教えてくれてありがとう。とても勇気のいる事だったと思います」

リリウムさまがあたしの手を取り、優しく微笑んでくれた。


「あ… はい…」

あたしは俯いたまま、リリウムさまの手を見ていた。


「みなさん、悪魔と天使の違いをご存知ですか?」

リリウムさまは突然、みんなに質問する。

しかし、誰も答えることは出来なかった。


「実は同じなのです。天使が堕落し、神さまの加護を受けることができなくなった天使が、悪魔だと言われています」


「それじゃ、悪魔マモンも元は天使だったんですか?」

あたしはリリウムさまを見つめる。


「はい、そう本に書かれています。そして、神の加護を受けれなくなった悪魔は肉体を持つことが出来なくなったのです」


「え?それじゃ、天使は肉体を持っているという事ですか?」


「現に、シオンさんは肉体を持ち、ルビアさんと一緒に成長してきたのでしょう?」


「あ… はい、そうです。一緒に成長してきました」

そうだ。シオンはあたしと一緒に大人になったんだ…


「悪魔は肉体を持ちません。だからこの世に来る時は受肉する必要があります。ただ、その肉体は高貴な者でないと悪魔は本来の力を出す事もできず、また、平民だと受肉すらできないのです」

リリウムさまは受肉の話しを始めたが、話しの続きをする事を躊躇っていた。


「どうしたんですか?」

あたしは不思議に思い、声をかける。


「…ルビアさん。少し辛い話しをします」

あたしは嫌な予感がした…

できれば聞きたくない…

そんな気がした。





リリウムさまは、少し躊躇いながらもハッキリとわかる声で話した。

「悪魔にとってもっとも理想的な肉体は、『天使』の肉体なのです…」

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