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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第3章 悪魔編
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強すぎる力

あたしの体調を心配して、2日後に首都リリウムへ出発する事になった。

あたしは平気だと言ったが、その間にコロニーの住人達も旅の準備ができるし、その方が都合がいいとのことだった。


不意に2日間の時間ができたので、あたしはツノに慣れるのと、ツノが出現している時の体の状態を確認する事にした。


ツノを出現させるのは簡単だった。まぁ、自分の体の一部だから手を使うようにツノも出現させたり、消したりするのはなんとなく感覚でできた。

ツノを出しっぱなしにしていると、マナとオドをどんどん体に取り込むので最初は皮膚が裂けて、すぐに治るを繰り返していたが、半日もすると慣れてきたのか皮膚が裂けることもなくなっていた。


(とりあえず魔導や武力の威力や、使い勝手の変化を確認しておこかな…)


いきなり実戦になり予想もしない事が起きてはダメなので自分の力を確認しておく事にした。


自分の部屋を出て、みんながよくたむろしている礼拝用の部屋に向う。

礼拝用の部屋は教会の中で一番大きな部屋で、建物の一番奥にあるため襲撃の被害が比較的少なかったのだ。部屋の一番奥には神様が祀られており、神様の上には大きなステンドグラスが飾られていた。部屋には5人くらい座れるベンチが並べられていることもあり、住人達は憩いの間として利用していた。


礼拝用の部屋に入ると何人かの住人達がおしゃべりをしている。

それをダラダラしながら、ぼんやりと見ているシオンがいた。


「シオン、やっぱりここに居た。ちょっと手伝って欲しいんだけど…」

ダラダラしているシオンをつつきながら話しかけ、シオンがあたしを見た瞬間「ぷっ」と吹き出す。


「もう!笑わないでよ!」

あたしが動くとツノがピンっと跳ねる。


「ぷぷぷ。ルビアさまが小さい頃、自分はエビだったってよく言ってましたけど、アレ本当だったんですね」


「だからずっと言ってたじゃない!誰も信じてくれなかったけど…」

あたしはちょっと凹んだフリをしてみる。


「シオンは信じてましたよ」

くくくと笑いを堪えてながら慰ようとしてくる。


「絶対ウソだ」


「ホントですってぇ」

シオンは笑いのツボにハマったようで、ずっと肩が震えている。


「もう!そんな事より、シオン手伝ってよ」


「あぃー、なんですか?」


「このツノであたしの力がどう変わったかを知りたいの。コロニーの外で試してみたいから、ちょっと付き合って」

あたしはツノを指で弾きながら説明する。


「あぃー。わかりましたぁ」

シオンはダルそうに立ち上がると、横に置いていたショートソードを腰に装備する。


「ありがと」

あたしはお礼を言ってから教会を出て、コロニーの外の草原に向かった。

シオンは猫背で両手をプラプラしながら付いてくる。


コロニーを出て、草原に着くとシオンはその辺にあった手頃な石を持ってきて座る。


「それじゃ、シオンそこで見ててね」


あたしは1つ息を吐き、まわりに誰も居ないことを確認する。


(まずは体の変化は…)

軽く準備運動してみる。


(軽い… 体が羽のように軽い)


手をグーパーして感覚を確かめてから、腰を落とし正拳突きを打つ。


『ボッ』

拳が空気を切り裂く音がした。


(スピードと威力が上がってる……のかな?)


この前の一際大きなオークがいる事をイメージして、パンチやキックを繰り出してみる。

まるで昔見たカンフー映画のようだ…


「よし…。次は魔導ね…」


辺りを見渡すと、少し離れた所に大きめの岩があった。


「あれでいいかな。シオン、次は魔導使うから念のため気をつけててね」


「あぃー」

シオンに注意を促してから魔導を使う。


「まずは…… 『マジックミサイル』」

呪文を唱えて右手を広げると、対戦車ミサイルのようなマジックミサイルが10本現れた。


「あ、増えてる…」

10本のマジックミサイルは岩に向かって射出され、岩の中心に正確に着弾した。


「うぁ、命中精度も上がった?」

岩に着弾したマジックミサイルは爆発し、爆風で砂塵を巻き上げる。やがて砂塵が収まると、そこにあった岩は小さな石ころに姿を変えていた。


的が無くなったので、辺りをキョロキョロして次の的を探すが適当な的がない…


「んー、あ!そうだ! 『ウォール』!」

確か魔導のランク試験のとき、ローダンセ教官が土属性の魔導で的を作っていたのを思い出した。

粉々になった岩の場所の土が盛り上がり壁ができた。


「よし、次は… 『ファイヤーボール』!」

右手を上げ、手の平をさらに向けて呪文を唱えると、手の平の上に炎が集まりだす。

いつもなら直径2メートルくらいの炎の塊ができるが、今回は直径50センチくらいの火球が現れた。

ただ、その火球の色は美しい青色だった。


青い炎… 確かガスバーナーの炎が青かったけど、よく見る赤い炎と何が違うんだっけ?


「んー」

青い炎の火球を見ながら考える。思い出せそうで、思い出せない…


「ルビアさまぁ、そろそろ投げたほうがいいんじゃないですかぁ?」

シオンが声をかけてきた。


「あ、そうだね。えーい!」

青い火球を土の壁に射出した瞬間思い出した。


青い炎は確か温度が1万度以上あるんだった!

赤い炎は1500度くらいだったはずだから…

炎の温度だけで以前のファイヤーボールより6.6倍!


「あ、ヤバいかも…」

青い火球は以前よりも速いスピードで土の壁に向けて飛んでいくと、壁に吸い込まれてしまった。


「ドーム!!!」

岩のドームをあたしとシオンを囲うように出現させた瞬間、土の壁は溶岩のように溶け、徐々に体積を増やしたかと思ったら凄まじい爆発を起こした。


あたし達はドームの中で、外の爆音と暴風が収まるのを待ち静かになってからドームを解除した。


「……なにこれ?」

「ルビアさまぁ、何をしたんですか?」

「え?いや、普通にファイヤーボールだけど…」

「これで普通ですか…」

「………」


まるで隕石が激突したかのようなクレーターの真ん中に、あたし達は立っていた。

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