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100万人目の異世界転生者  作者: わたぼうし
第3章 悪魔編
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別れ

「とおさま、かあさま、あたしそろそろ戻ります。本当はずっと一緒に居たいけど… あたし、しなきゃいけない事があるの」

本当はもっと一緒に居たい…

でも、シオンやアオイさん、町のみんなが待ってる。



「そうね。ルビアちゃん、しっかり生きなさい。しっかりと生きて、しっかりと歳をとって、そして最後は笑って人生を終えるのよ。とおさまも、かあさまもずっと見守っているからね」

かあさまはキュッと抱きしめてくれる。


「ルビア、お前は生きろ。そしてたくさん子供を産み、その子供がまた子供を産んだら、その子供達に囲まれて死ね。それがお前のやるべき事だ」

とおさまはニカっと笑い、頭を撫でてくれる。


「うん。とおさま、かあさま、あたしを生んでくれて、育ててくれてありがとう。あたし、とおさまとかあさまの娘に生まれてよかった。次会うときは、とおさまとかあさまより歳を取ったお婆ちゃんになってくるね」

ふふふと笑って、とおさまとかあさまに抱きついた。

この香り、柔らかさ、気持ち、全てを忘れないように…

ううん。絶対に忘れない… 忘れるはずがない…




「ルリア、ありがと。あたしを元の魔界に戻して」

あたしは振り向き、女神ルリアに声をかけた。


「わかりました。ただ、少しだけお話ししておきます。この死後の世界は時間の流れ方が特殊なのです。だから、ルビアさんのいた世界と、ここで過ごした時間は一致しません」


「え?どう言うこと?」

あたしは理解が追いつかない…


「つまり、今ここで数時間を過ごしましたが、現実世界ではどれくらいの時間が流れているのか分からないのです」


「はぁ?そんな大事な事、早く言ってよ!」

思わず声が大きくなってしまった。


「え?だってルビアさん、ずっと泣いてるし…」

女神ルリアは、ニヤニヤしながらあたしをみている。


「ぐっ…」

だって、仕方ないじゃない…


「まぁ、とりあえず現実世界でどれだけの時間か流れのか、今から決めましょう!」

ポンっと女神ルリアは手を叩き微笑む。


「え?今から決める?」

意味がわからない。

すでに流れた時間を、今から()()()って、どう言う意味?


「はい!では!お約束のルーレットターーーイム!」

女神ルリアは嬉しそうに、()()ルーレットを出した。


「ええ!?また、ルーレット?うそでしょ?」


「いえいえ、今からこのルーレットで現実世界で流れた時間を決めます。だって、わたしは『運命の女神』なのですよ?運命はルーレットで決めるものなのです」

女神ルリアは胸を張り、得意気にルーレットを紹介していた。


「まさか、またルーレットなんて…」

あたしはあの悪夢を思い出して凹む。

ルーレットは等分に区切られており、現実世界で流れる時間が書かれていた。

ルーレットには一番短いので0.3秒、次が3秒、3分、30分、3時間…と書かれていた。


「ルリア、これなんでみんな3なの?」

ルーレットに書かれている時間はすべて3で、単位が秒、分、時間、日、週…と変化していたのだ。


「3と言う数字には特別な力があるのです…」

女神ルリアは、ふふふと怪しい笑みを浮かべる。


「特別な力…」

思わずツバを飲み込み、喉を鳴らしてしまった。


「と、言うのはウソですけどね。わたしが好きな数字なのです」

あはははと、楽しそうに笑う女神ルリア。


「これか!この口か!そんな事言うのは!」

あたしは女神ルリアの口に指入れ、無理矢理広げる。


「あぅ!ご、ごめんない!ごめんなさい!」



その時、あたしの目に一つの数字が飛び込んできた。


「ちょ、ルリア。ルーレットのココに書いている数字は?」

そこには、『300年』と書かれていた。


「え?300年ですよ?現実世界に戻ったら、300年の時間が流れていた事になります」

何を当たり前な?みたいな顔で返答する女神ルリア。


「はぁ?300年?そんなに時間が流れていたら、みんな居なくなってるじゃない!そもそもあたしの体も朽ちてしまってるわ!」


「大丈夫ですよ。現実世界のルビアさんは今は仮死状態で、女神ルリアの力で維持するようにしていますから」

ふんっと威張る女神ルリア。


「あ、あたしの体は無事でも、みんなが無事じゃないわ!」

あたしはバンっと机を叩く。

(あれ?机?いつの間に机が?)


そこには小さな机がいつの間にか現れおり、赤いボタンが1つ付いていた。


ピリリリリリ……


乾いた電子音が部屋に響く。


「ふふ、スタートとストップのボタンを1つにしてみました」

女神ルリアは自慢気にボタンを紹介する。


「んぎゃーー!ルーレット回ってるじゃん!!」


「ルビアさん!それではルーレットをストップして下さい! はい!ストーーーーーップ!!」

女神ルリアが叫ぶ。


「う!とにかく300年だけは引かないように!」

あたしは祈りを込めてボタンを押す。


ピリリリリ…リリ…リ……リ………リ


ルーレットが止まると嬉しそうに女神ルリアは結果を見に行く。


「ちっ」

ルーレットを見た女神ルリアから聞こえたような気がした…


「はい!ルビアさん!現実世界で流れた時間は3日でーーす!」

女神ルリアが振り向いて、笑顔で叫ぶ。



「おい、今、『ちっ』って言わなかったか?」

あたしの声が低くなる。


「え?言いませんよ?さぁ、ルビアさん、現実世界にお帰りください!またのお越しをお待ちしておりまーーす!」

女神ルリアが両手を広げると、あの時と同じようにあたしを光が包み体が浮かび上がる。


「ルリア!あんたに感謝したあたしがバカだったわー!覚えてなさいよーーー!!」

あたしは光の中で浮かび上がりながら叫び、現実世界に送り返されてしまった。

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