彼女に振られ借金も負った僕が美少女2人を助けたら人生が一変した件
「ごめんねゆうたくん、別れよっか」
……え?
耳を疑った。一瞬で何も考えられなくなった。
17年生きてきて初めての彼女のからの別れは唐突に告げられた。
「な、なんでそんな急に…そんな素振りなかったのに…!!」
「驚くのは分かってる、でもごめん…あなたのカステラはもう食べれない。」
そう言って彼女は泣きながら無理な笑顔で笑っていた。
そうして彼女に僕の人生の全てだったカステラを否定された。
僕、八色雄太は彼女、恋枝佳子と付き合っていた。
彼女は一緒に通っていた高校の学祭で行われたミスコンでグランプリを獲得するほどの人気だった。
僕が彼女と付き合うとなった噂が広まった際には「なんであいつが…?釣り合わねーだろ」などと陰口を叩かれた。
当時の僕は内気で似合わないメガネをかけていたためから彼女と付き合っていることが気に入らなかったらしい。
しかし僕はこの日のために親にお年玉を前借りし、眼科に行ってコンタクトを作り、完全予約制で3ヶ月待ちの美容室にいって髪も切ってきたしセットもしてもらった。さらには祖父母にお年玉を前借りして服も買った。
だと言うのに何だこの仕打ちは。
なんでも彼女が言うには新しく好きな人が出来たとからしいけど正直僕の頭は真っ白になってはっきりとは覚えていない。まぁでも、たまたま幼馴染だったから付き合えただけでこんな僕には不釣り合いだったのかなとも、今では思う。
その時、自暴自棄だったこともあって、お金には困ってないのに宝くじを買ってしまった。
その後我に返り、ちょうど駅前で見かけたチャリティーイベント的なものにプレゼント用のマフラーごと渡してしまった。まさかこの時の行動が今後人生を大きく左右するとは…
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「募金お願いします!!」
私達は寒空の元道行く人に声をかけていました。既に時間は深夜の23時に差し掛かっていて、もう帰ろうかと話していたところ、いかにも憔悴しきった容貌の若い学生と思わしき男性が近づいてきて、大きな紙袋と何故か宝くじを渡して去っていきました。
袋を覗いてみると中には大人っぽい柄のマフラーが入っていたのです。
私はその男性を追いかけてお礼を言いました。
「あの…こんな高そうなもの…良いんですか?」
「いいよ…もう使わないしね…(ボソッ)」
「あ、ありがとうございます…」
そう言うと男性は少し微笑んでまたとぼとぼと歩いていきました。
「ちと」
惚けたように貰ったそれを見ているとふと、後ろからちとを呼ぶ声がありました。
それは一番仲のいい友達のりくです。
りくは年下ながら孤児の中でも大人びていて年上と感じることもあるほどでした。
「それ……マフラーと宝くじ?」
「うん、さっきのお兄さんに貰ったんだ…」
私がお兄さんの歩いていった方向を眺めているとりくは言いました。
「なぁに?ボーッとしちゃって。もしかして惚れちゃったとか?」
「そ、そんなんじゃないよ!たしかに少しかっこよかったなとは思うけど!」
「あらあらそうですか〜。」
「もう!…でも、また会えるといいな…。」
そういってマフラーを見つめながらほんのり紅潮するちとをみて、りくはニヤニヤしながら思う。
(あらら…これは重症だわね…。)
「も、もういいからみんなのところに戻ろうよ!」
そんな緩んだ表情をしたりくをみて私は焦りつつ皆との合流を促しました。りくも顔は収まらないながらもそうね、と同意し声かけに戻るのでした。
みんなのがいるところに戻る途中、振り返ってももうとっくにお兄さんの姿は見えませんでしたが、なんでかその顔貌は鮮明に覚えています。孤児院に帰ると
「お風呂にする?ご飯にする?それと私?」
と冗談交じりにイザベラさんが私達に問いかけてきました。
「ちとと全部外で済ませたんで大丈夫」
「じゃあ早く休みなさい、明日からお正月に向けての準備で忙しくなるんだから」
「わかりました」「イザベラおやすみー」
こうして今後の私達の運命を変える一日は終わりました。
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「あーほんと何でこんな事…」
外は少し吹雪いていて、窓が風に叩かれている。
僕は1人、あまり暖房の効かない部屋で佇んでいた。
「24なら彼女作って2年後にはプロポーズして結婚する予定が…あの事件のせいで…」
今の自分はこの妄想とは全くと言っていいほどかけ離れた生活をおくっている。
事のあらましはこうだ。
日本では今カステラが神格化されている。どこのコンビニに行ってもカステラ、CM を見てもカステラ、学校祭でもカステラが流行っている。最近はカステラを利用した詐欺までも横行している。
うちの父親の仕事であるカステラ屋のおこした異物混入事件のおかげツイッターで炎上、大バッシングを受け経営が苦しくなっていき、そのまま再興の目処も立たず、会社は数年足らずで倒産、そして抱えた一億の借金、挙げ句の果てには家族一家で北海道に夜逃げ。
そしてこの頃は借金取りに見つからないか家族揃って気が気でない。正直生きた心地がしない。
この状況では結婚どころか彼女を作ることも夢のまた夢である。
「あーあ、いつになったらこの借金地獄から抜け出せるのか…」
その時家のインターホンが鳴った。
俺は遂に借金とりに居場所がばれこの生活も終わりを迎えたのかと思いつつ息を殺して隠れていると
「誰もいないじゃない」
「りく、勝手に入ったらだめだよ」
そう言って二人の女の子が入ってきた。
片方は黒髪ボブカットの女の子で、もう片方は赤みがかった茶髪のセミロングにブリーチがかかった女の子。
「…!?」
僕は驚いて息を呑み、耳を欹てた。
「まったく、こんなボロ屋にその男がいるのかしら。」
「ぼ、ボロ屋って…なんてこと言うのりく。」
酷い言い草だがその通りであってぐうの音も出なかった。
「あんたの探してた男ってすごくリッチっぽい男って話じゃなかったかしら?」
昔の僕を知ってる…?
でも僕はあんな子達知らない。父親の知り合いか?
とりあえず借金取りの雰囲気ではなさそうなので僕は声をかけにいくことにした。
「あの、君たち…」
「「きゃっ!」」
驚かれてしまった。僕の人間不信度に磨きがかかったが、ここで諦めていては何も進まないので折れずに話を続ける。
「もしかしてうちの父になにか用「ごめんなさいいきなり入って!!」
(えっ?)
「あ、あの私はやめようって言ったんですけど、そ、そのりくが勝手に!」
「ちょっ、ちょっと落ち着いてっ。」
「そーよちと、あんた焦りすぎ。」
黒髪の方の女の子は顔を真っ赤にして言う。
「私達、あなたに会いにきました!」
「え、僕、君達の事全く知らないんだけど…」
「ごめんなさい…私達、数年前のクリスマスに募金活動を行っていた時にマフラーと宝くじを寄附してくれた男性を探していて」
「その時の宝くじが当たっちゃったのよね。」
「そうなんです。その時の宝くじが一億円当たったので私達孤児だから高校進学までしかできないと言われてたいたんですけど大学も行くことができてほんとにあの日のあの寄付のお陰で私達の人生が変わったんです。だからその寄附してくれた方を探してどうしてもお礼が言いたくて。」
よく見ると黒い髪の女の子はベージュのニットのトップスに青灰色のスカートを、もう片方の女の子は白いTシャツにデニムのジャケットを羽織り、赤茶色のパンツを履いている。
確かにどちらもお洒落でお金のない孤児のようには見えなかった。
宝くじ買ったことあったっけ?あああれだフラやれたときだ。は??あれ当たってたの?あれを持ち帰ってたら借金地獄にもならなかったってこと?いやでもここ北海道だよ?
「それっていつどこで?」
「えっと、東京で7年前のクリスマスです。」
あ~多分僕だ。
忘れもしないあの7年前のクリスマス、確かに僕は最愛の彼女に振られ、そのあと宝くじを何故か買ってしまったんだっけ…
そしてそれをこの子達の孤児院に寄付したと。
そこまでは覚えてないがあの時はそんなもの持っててもしょうがなかったしあげてしまったこともあるかも知れない。
「はぁ…マァ話は分かったよ。とりあえずお茶でも飲んでくかい?」
「え、いいんですか!?」
「あ、だったらお茶菓子も持ってきてるの」
「『王国』のカステラです!」
『王国の菓子』、通称王国とは僕の彼女の実家のカステラ屋さん。
全日本カステラコンテストでは毎年僕の実家の黎明堂が1位で、元カノのが2位だった。
うっ…フラれた古傷が…
「あ、ありがとう…」
とりあえず2人を家に上がらせた。
スーパーで安売りの麦茶(50パック100円)をだしつつ話を聞く。
「そういえば…なんでここが分かったの?」
「大学のカステラの研究で倒産し北海道に逃げたという記事を見つけて」
「この場所そんな有名になってたの!?」
「顔写真をみてピピンときたんです、あの時の人だ!って」
「そんな交番のポスターみたいな…」
すると茶髪の方の子が言う。
「だから私たちの手でなんとかできないかって、ちとが。」
「なんとか…って?」
黒髪の子が返す。
「私たちが、借金返済のお手伝いをするんです!」
「へ?」
「大学で商法とカステラについては人一倍研究してきました!」
「…一つ聞くけど、2人の出身大学は?」
「東京カステラ大学よ」
東テラ大!?名門も名門、日本最高峰のカステラ大学じゃないか!
僕の動揺をよそに、2人は話を続ける。
「どうでしょう。私たちに協力させて頂けませんか?」
「きっと成功させると約束するわ。」
「……」
僕は逡巡する。突然の話の展開にもともと出来の良くない頭をフル回転させてもついていけず、しっちゃかめっちゃかになる。
この話に乗っていいものか。もはや両親はカステラを引退し、現在のカステラに関する我が家の決定権は僕にある。
けど…
『あなたのカステラはもう食べれない』
彼女を見返したい。そんな想いが心を染めた。
「やってみる価値は、あるのかな」
それを前向きな発言と受け取った彼女らは笑みを浮かべる。
「っじゃあ…!!」
「ああ…やるよ。僕はカステラをもう一度造る。」
こうして僕は再びカステラの道へ足を踏み入れるのであった。
続きません。




