2話 入学式〜自己紹介
「ここが学校ね」
しばらく歩いた後、城門に見えなくもない校門にさしかかった。
〈蒼城学園〉と、門の上部にそれが悠然と標されている。
クラスの発表板の周りには、裕翔達と同じ新入生がわらわらとたむろしている。
「あら、同じクラスよ。偶然ね、鷲沢君」
比較的元のテンションに戻ったのか、北御門の名前の呼び方が元に戻っている。
「見ればわかる」
「歓びは口にしたくなるものよ」
(歓びは口にしたくなる...か。よく判らないな)
「...そういうものなのか」
「ええ、そうよ。鷲沢君と一緒だったから、何か嬉しいってコト」
「以前クラスメイト以外の関わりはなかったがな」
「ふふっ、そこは言いっこなしでしょ」
(...やはり、今日の北御門のテンションはおかしいな)
そんなことを話しながら、教室へ行き、指示を受け、入学式の式場へと向かった。
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「―――――C組、入場」
その声と共に、式場へ入って行く。
式場となっている体育館は、よく見るような一般的なものだった。
式壇の上には、蒼城学園の校章が、煌びやかに掲げられている。
オーケストラ部の生徒達が奏でる音楽が、どことなく式場の雰囲気に似合っていた。
担任教師の指示を受け、着席する。
連合国なので、ヒューマン、エルフ、ドワーフと、様々な種族が新入生にいる。
(できるだけ静かなクラスがいいな)
と、人との友好をあまり好まない裕翔は思った。
「―――――学校長、挨拶」
...正直、どうでもいいし、興味はない。
(アンタのお世話になるのは恐らく無いからな)
その後の話は、「新入生」に関係ない事は聞き流すことにした。
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入学式が終わり、C組の教室へ戻る。
教室は、講堂のような設計で、生徒一人一人の席に、電子パネルが設置されている。
担任の声があがる。
「皆、席についていますね。私は担任の宝仙音葉です。これから、このC組の担任を務めさせてもらいます。どうぞよろしく」
そう言って、担任は軽く会釈した。
「とりあえず、〈パートナー〉について軽く話させてもらいます。
―――さて、本校のガイドブック等によく目を通した人は知っていると思いますが、ここ蒼城学園兵士養成科では課外授業を取り入れています。その際共に行動するのが、パートナーです。
組み方はいたって簡単です。パートナーとなる人を決めたら、書類にパートナー同士承諾のサインを記す。
もちろん、誰にも頼らず一人で鍛えるのも悪くないでしょう。が、パートナーと共に行動し、鍛えあうことで、協調性を養うことも大事だと思いますよ」
(協調性、か。普通に話すだかじゃ駄目なのか...?)
担任が一通り話し終えると、丁度チャイムが鳴った。
「それでは、しばし休み時間となります。この間に友達と話す、パートナーや友達を作る、電子パネルの内容に目を通す、などしてもいいかもしれませんね」
そう言って、担任は席を外した。
「パートナー、組みましょうか」
「...またか、北御門」
「登校中も言ったけど、人とあまり関わりを持たない鷲沢君を気遣っているんだけど」
「それは、北御門もそうだからじゃないのか?」
「...御名答。で、組むの?」
「...勝手にしてくれ」
「そう。じゃあパートナーとしてお互い頑張っていきましょ」
(本当に勝手だな。自分で言った事だが)
「―――ところで、支給される武器があるらしいけど、何にするつもり?」
「...剣だが、それがどうした」
「別に、暇だから聞いただけ」
そんな風に北御門と下らないやりとりをしている内、チャイムが鳴った。
「じゃ、また後程。と言っても席は割と近めだけど」
(...また無駄話に付き合わせるつもりか)
「皆、席についていますね」
担任が再び戻る。
「入学式で精神的に疲れたとは思いますが、もうひと踏ん張り。この時間は、自己紹介をしてもらいます」
(...興味無いな。関わりは最低限で十分だ)
「では、番号順にはじめますので、一番から前へ」
始めの生徒が教卓の前へ立つ。もちろん裕翔は興味ないが、何故か他人とあまり関わりを持たないのに北御門は興味津々だ。
はいどーも箱入り巴でスイマセンデシタ。
こないだ晴れて××歳になりました(伏せるほどではないと思う、思いたい
ではまた今度があれば。




