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第二話 彼女の新たな居場所


「………城…?」


「最初はそう見えるわな。ここが俺らが通うトコ」



城門に見えなくも無いのが校門らしい。

鉄格子を荒くした様な門の上部には、学園の名前が掲げてある。



(蒼城学園……)



巨大な門の下でなんとなく後ろを振り返る。

桜の木がのんびりと風に揺られていた。


思わず軽く笑ってしまう。

まるで桜が入学を祝ってくれているかの様に。


ゆっくりと歩き出し、城門、もとい校門をくぐる。

四陰に手を引かれ、連れていかれた場所に行くとそこにはクラス表が掲示してあった。


見たところ、C組の様だ。



「……なぁフロウ。兵士養成科で良かったのか?」


「何で?喧嘩っ早い私には丁度いいでしょ?」


「エルフのお前が?魔術士養成科もあるのに?」



エルフ。

人間より魔術を極めた種族で、できる魔術はエルフ一人一人異なる。


フロウリスに関しては、イマイチ自分の魔術のスタイルがわからないという現状なのだが。



「お、いー女はっけーん」


「新入生かな〜?おっ、しかもエルフじゃん」


「レアモノGET〜」



軽く揉めている中、後ろから大柄な男が四陰を突き飛ばしながら話しかけてきた。


彼らは蒼城の新二年の連中で、どうやらナンパ目的にきたらしい。



「名前なんてーの?」


「気安く近づかないでくれる?私は汚染された空気を吐く男は嫌いなの」



四陰は直ぐ様起き上がり、手に持っていた鞄をそこいらに放る。

そして力強く大地を蹴った。


一歩でかなりの距離を縮め、今にもフロウリスに殴りかかろうとする男の軸足を右足で払う。


と、フロウリスは手を胸の前に掲げる様に構えると、彼女の爪が急速に青白く染まる。

と、彼女の両手が氷に包まれる。



横に回る様に回転し、足払いを喰らって転んでいる男以外の奴らの顎を的確に捉え、両腕を振るいぶつける。


ガンゴンッ!!と鈍い音が響く。

一瞬にして不良三人を沈めると、教員が来ると厄介なのと、入学式が始まる様なので走ってその場を去った。



「自分が何の魔術が使えるかわからないけど、このデタラメに使う魔術のおかげで戦えるの。私には、コソコソ詠唱するよりもこっちのほうがいい」


「お前がそれでいいなら、俺ももう何も言わないけどよ……」



フロウリスは手首を回しゴキゴキと鳴らす。

彼女は魔術を使った遠距離は上手くコントロールできないが、体の一部に魔術の流れを通す事で身の回りに魔術の塊を纏う事ができる。


彼女はゆっくりと握る手の力をゆるめると、爪の色がみるみる内に元に戻る。

彼女の魔術は不完全故に魔術を使おうと意識を集中すると、体の一部に変化が出てしまう。


変化、とは、体の一部の色が変わってしまうというもの。

今回の冷気の魔術は、爪を青白く染める事により発動している。


金色の背中まである髪を手で直しつつ、校内へと足を進める。


まだ上履きみたいなのが無いので土足で歩ける範囲を進む。


校内は廊下の端に槍が立て掛けてあったり、甲冑が飾ってあったりなど、学園の見た感じのイメージを崩さない内装をしてあった。



「フロウ、大丈夫か?」


「え、なんでよ?」


「だってよ……」



わざわざ溜める言い方をする四陰に小首を傾げる。


フロウリスが様子のおかしい四陰を見つめていると、目線を反らされる。



「ちょっと、なんでよって聞いてんだけど?」


「お前………目が真っ赤だぞ?」


「え、」



思わず両手で顔を隠してしまう。

魔術の媒体に目を使った覚えは無い。寝不足な筈は無い、4日も眠っていたのだ。


だとすると何故?

隠す様に、ごまかす様に目を擦る。

しかし痛み等はでない。



「あれ、治ってる」


「ホント?」


「おっかしいな〜…。充血が一瞬で治るとは思わないし…」


「おーい、そこのエルフとヒューマン!!入学式が始まるから早く行きなさーい!!」



遠くから教員が声をかけてきた。

慌てて方向を変え、二人は入学式会場へと足を向けた。










入学式が終わり、各々の教室に行く事になった


兵士養成科の1年C組には、机が各自ありその机にはディスプレイが付いている。

フロウリスはヒューマン文化に弱いので頭の上にひたすら、?を浮かべていたが。



「………?」


「……フロウ、お前なーんも知らないのな」



四陰に馬鹿にされてもわからないものはわからないので、もう気にしない事にする。


とりあえず、これから連合で暮らすにあたって色々勉強する必要があるようだ、とフロウリスは溜め息混じりに確信する。


恐る恐るディスプレイをつついてみたり、少しだけ操作してみたり等、未知の文化技術に振れてみる。


ピッピッ、と彼女の指が触れる度に反応する機械を見て、かなりの感動を感じたりする。

後ろでは、四陰がその姿を見て快活に笑っていたが。


と、教員の声が上がる。



「皆、席についていますね。私は担任の宝仙 音葉です。これから、このC組の担任を務めさせてもらいます。どうぞよろしく」



丁寧語で自己紹介をされた事に少し違和感が出る。

違和感の意味はイマイチわからない。


窓の外には相変わらず桜が見える。

うんうんと悩むフロウリスを笑っているかの様に小さく揺れ動き、花びらを撒き散らす。


フロウリスはゆっくりと辺りを見回す。

色々な種族がこの教室に集っている。

ユミル出身の彼女からみると有り得ない事だ。

エルフ至上主義のユミルからの亡命をした彼女は、まだまだ違和感だらけに感じる。


「とりあえず、〈パートナー〉について軽く話させてもらいます。

 ―――さて、本校のガイドブック等によく目を通した人は知っていると思いますが、ここ蒼城学園兵士養成科では課外授業を取り入れています。その際共に行動するのが、パートナーです。

 組み方はいたって簡単です。パートナーとなる人を決めたら、書類にパートナー同士承諾のサインを記す。

 もちろん、誰にも頼らず一人で鍛えるのも悪くないでしょう。が、パートナーと共に行動し、鍛えあうことで、協調性を養うことも大事だと思いますよ」


(きょうちょうせい………?)



教員の台詞に頭が真っ白になる。


きょうちょうせい。


どんな文字を書くのだろう。

強調?だったらなんでそんな事を教員が今言ったのだろう?


頭の中がだんだん黒く染まってくる。

そして、何故か体が重くなってきた。

それから、教員が話した言葉は何一つ理解できなかった。

四陰が説明し直してくれなかったら、もはや武器すら手にできなかっただろう。



「フロウ、パートナーは俺とでいいよな?」


「え、あ、うん…。慣れてる奴が一番やりやすいし、四陰でいいや」


「いいやってな……。まぁいいや。武器どーすんだ?」



四陰は近くにあった配給武器のリストを拡げる。

大きな棍棒から小さな針まで、数多くの種類の武器が用意されているみたいだ。


四陰は躊躇い無く殴る事に特化した武器、メイスを選ぶ。



「……あんた、これドワーフ用じゃないの?」


「関係ないな、振れればいいのさ。フロウは?」


「うーん………騎士槍がいいかな」


「うわ、エルフらしくも無いし女らしくもねぇ」



別にいいでしょっ!!と怒号が飛ぶ。

担任は今教室内におらず、休み時間になっている。


騎士槍は、持ち手が凄い短いポールランスの部類で、全長175cmの突くことに特化した槍だ。斬る事にはかなり向いていないので、扱いが難しくそれでいて片手用。さらに重い。


欠点だらけに見えるが、そのぶん丈夫で折れにくいし破壊力が高い。



「なぁ、25kgだってよ。振れるのか?」


「うるさいな。あんたのなんて35kgじゃないの」


「それくらいなら問題無いわな」



しばらくお互いに話し合う。

パートナー同士なのだが、互いに長く小回りの効かない武器なので、実は心の中では心配していた四陰なのだが。


フロウリスは手を天井に投げ出し、大きく伸びをした。

それと同時に教師が教室に戻ってくる。


入ってきたと同時に話し出した教師は、自己紹介をしろとのこと。

フロウリスは、今までエルフの知り合いしか居なかった(四陰は例外)ので、少しでも友達を増やしたいと、必死に聞いて、話しやすくしようと思った。



どうも。ラプタでございます。こうも人数が多いと、更新が結構早くていいですね。ただ、つじつまを合わせるのが大変ですが…。自分としては、長く続けていきたいと思っています。では、ここで筆を置かせていただきます。

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